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アーシュタワー 3

カマキリの主は愉快そうに眼を光らせながら


「そうだ。そして、この男はアークの聖人だ」と嗤った。


「ほう。その聖人になぜ猛毒の血が流れているのです?」


「この男は、幼い頃に人さらいにコロセウムに売り飛ばされた。

たいそう強く無敵と言ってもよいほどだったが、冷酷で非情な剣は

死神と呼ばれて、やつを嫌う者も多かった。だが、ある日、慢心からか左目と左足を負傷し、

コロセウムを逃げ出した。通常、負傷した剣闘士は、と殺される運命にある。

それがルールだ。だが、この男は神隠しに合ったかのように忽然と消えてしまった。

噂ではグアヤキルに逃げたと言われていたが、知っての通り、あの町で二年も

生きれた人間を見たことはない。死ぬか逃げ出すかだ。おそらく、どこかで

野垂れ死んだのだろうと話していたら、10年もたって、やつは突然現れた。

猛毒の血を持つ男となってな」


ドクター・アーシュは興味深そうに幾度もうなずいた。


「なるほど。グアヤキルはこの世の穢れという穢れがすべて流れ込む土地。

そこの食べ物を食べ、飲み物を飲むうちにこうなったと……。

面白い。実にユニークだ。普通は毒にまみれた物を体内に取り込めば、

身体がもたず亡き者となるが、彼はそれを超えるポテンシャルが

あったということですね」


ドクターは、手を伸ばしてカゲの血に触れた。


「痛い」あわてて指を離すと、すぐに水甕に手を突っ込んだ。

「なんだ、これは?」指が赤く腫れあがっている。ひどい火傷の跡のようだ。


地底の王は、ドクターの前にひざまずくと


「ドクター。頼む。この地で、地上と地上に生きる人間どもを

滅ぼす最終兵器を作ってくれ。それこそ我らの悲願なのだ」と深々と頭を下げた。


ドクター・アーシュは目を細めながら


「この血を細かい霧のようにして、空気中にまき散らせば凄惨なこととなるだろう」

とつぶやいた。





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