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アーシュタワー 2

「カイト、そっちはダメだ。見張りがいる」


ダストシュートの入り口から抜け出たカイトとルキアは

息をひそめながら、上の階を目指した。


「以前、ここにいた頃は、ドクター・アーシュはいつも32階のラボで

仕事をしていたんだ。それは今でも変わらないと思う。

そこには奴の娘のルキアが仮死状態のまま保存されているからね」


「えっ?ルキア?」カイトが目を見開いた。


「そうさ。私たちは奴が作り上げた娘の幻影。もっとも本物のルキアは

私より上品でおしとやかな良いお嬢さんだったんだけどね」


ルキアがいくつもの曲がり角を迷いなく進んでゆく。

アーシュタワーは入り組んだ迷路のような構造をしていた。


一枚の鏡の前で足を止めるとルキアは鏡面に指で古代文字をなぞった。


同時に音もなく鏡面が動き、裏に通路が見えた。


「ここがラボへの入り口。ほかの道はすべてダミー。歩けど歩けど

どうどうめぐりになる」


ルキアは深呼吸すると


「この向こうへ行けば、もう引き返せない。アーシュと対決するしかない。

それでもいい?少年」


ルキアがカイトの目を見て念をおす。緑青色に輝く美しいまなざしを見返すと

カイトは力強くうなずいた。


                   ※


寝台にくくりつけられたまま微動だにせぬカゲを眺め、主はクククッと低く嗤った。

銀色のカマで、そうっとカゲの身体をなでる。


胸のあたりでカマを止めると、軽く横にすべらせて傷をつけた。


うっすらとにじみ出る血を見て、満足げにほほ笑むと


「これだ。この血がほしかった」


そのとき、灰色の扉がシュッと開き、部屋に靴音がカツカツと響いて

ドクターの姿が見えた。


両腕をくくりつけられ、動きを封じられ、よこたわるカゲの姿を無表情のまま

チラッと横目で見ると


「これが地底の王が喉から手が出るほど欲しがっていた毒の血が流れる男ですか」

と涼しい声で尋ねた。



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