第24話
基本設計が終わり稼働実験も順調な中、戦闘能力に関しては期待した数値が出せません。反応速度が高くてもパワーがない状態です。魔獣の森に広がる弁天さんからのエネルギーを、受け止められるだけの素材が必要ですが、これは素材の問題も有るため、すぐに改善することは出来ません。なので接近戦でのパワー勝負が主体のここの獣たちには、勝負にならないことがわかりました。
ではと思い、マスターの記憶にある遠距離武器の使用を検討しました。
まず検討したのは『銃』でした。
本体のパワーが不足しても、これなら近づかれる前に倒すことも可能かと思いましたが、マスターの記憶にある火薬の生成では、全く威力が足りません。
基本構造と生産方法がわかっている黒色火薬程度では、たとえ大砲にした所で大したダメージにはならず、そもそも大砲では当たらないという計算結果が出ました。
それ以外に計算してみたのが、対物ライフル・グレネード・アサルトライフル等、そもそも黒色火薬とは言え大砲クラスで駄目なレベルだと、なんの意味もありません。
単純な運動エネルギー弾では駄目なので気分を変えて、化学エネルギー弾を考えましたが、そもそも作り方もわからない、微妙な調整が必要なものは、現状生産できない為却下です。
色々想定した所単純な構造にも関わらず、威力の有るものをいくつか見つけました。
サーメート手榴弾。内部の構造は至って単純。テルミット反応を起こさせるためのアルミニウム粉と酸化金属粉、それに着火剤となる物質があれば作れる物ですが、うまく反応させれば2000度程にもなる。
威力は有るけど耐熱性能の高い獣には効かないし、加害半径が狭くそもそも当てられない可能性が高い。
燃料気化爆弾。可燃性の燃料を加圧してタンクに詰めて高温にして、その圧力で燃料を撒き散らして起爆すると、広範囲に衝撃を与えられる。金属片などを混ぜて加害力を上げられる。範囲が広い割に個体に対する威力が低く。獣達クラスに使うには、はっきり言って微妙。
核爆弾。安定度の低い原子を爆縮レンズを用いて原子崩壊させ、そのエネルギーで破壊をもたらす。獣も一撃で倒せる気がするけど、こんなの使っちゃ駄目。絶対駄目。そもそも作れない気がするしね。
そんな中見つけたのが、
戦車の主砲に用いられるAPFSDS。
そもそも秒速1500m/sなんて速度に加速させられないと思ったのだが、ここで弁天さんがひらめいた。
火薬以外で加速させればよいのではと。
今までの前提を全て覆す発想。正直負けたと思ったのは内緒だ。
そうとなれば話は単純。弁天さんの有り余るエネルギーで押し出すことにしたのだが、そうなるとわざわざ速度を落とすより、上げたほうが命中精度も上がる。
結果出来上がったのが、連射性を考慮して魔法弾をバレル内で形成する、APFSDSだった。
そのまま使うのも芸がないと、2段式の弾体を構築させ発射時に外側が伸びる形で、バレルの倍位まで弾体を伸ばすことに成功。
単純に弾体の2倍まで貫通するわけではないが、そのままよりも貫通距離を稼げるようになった。
その後試作して獣達相手に試した所、大体の獣は頭部に当たれば倒せるけど、経験を積んだ個体はそもそも体の正面に立たないため、当てられなかった。とは言え一応の完成を見たのだが、少し問題も残った。
まず射程については魔法弾を採用したため、距離による減衰が激しく、加害距離は1km程度まで。届くだけなら1.5kmと言った所。
威力もそこまで高くはなく、胴体部分でもダメージを与えられる程度でしか無く、連射間隔も10秒位かかるため、2発打ったら10秒リロードという感じだ。
弁天さんいわく、8本脚と隠し腕を使えば木に登れるし、1km先どころか魔獣の森内なら死角はないから、これで十分だろうとのこと。
弁天さん的には腕から打ちたかったようだが、腕の関節が邪魔でバレルを維持できないから、胸にするしか無く。そこ以外の場所は同じく可動部が有るから、バレル長が稼げないから仕方ない。
どうしても必要なら、外部パーツを作って打っても良いし、何より純粋戦闘型ならそんな事を気にする必要も無いしね。
防御に関しては本当に取り敢えずでしか無いけど、弁天さんにシールドの魔法を覚えてもらった。獣たちにはすぐに突破されちゃうし、今の所一時しのぎでしか無いのが残念。
獣たちの皮とかでも良いけど、そのへんうまく加工できないのが悩みだ。
サブコアが来てからその辺すごく進歩したけど、流石に魔獣の森の獣までは難しい。
サブコアは言わないけど私の得意分野ですら、同等か上の性能を持っているはず。おそらく卒業した時は主席とは行かないまでも、かなり上位で卒業したのでは?それでもまだ届かないレベルの素材なので、どうしようもなかった。
いつかは戦闘データを積み重ねて素材の問題もクリアして、接近戦もこなせる弁天さんを作って見せるし、今はここまでかな?
マスター気に入ってくれるかな?




