小話~みんなお酒大好き~
ちょっとした余興。
「………………………強烈だったな」
「だろう?午前のうちに戦闘場面ですさまじいものを見せられたが、特に中身が、な」
夜。王都レナードの象徴と言える王城の中でも、王族の居住区たる上層部分。そこに現在住まう王族はただ二人。ウィリアムとガロールだけである。
橙のランプをたった一つの光源にしたサロンの一つにて。二人は今日の出来事を肴に、寝酒を味わっていた。
他の王族はいない。城と隣接し西地区の大部分を敷地とする後宮に、ウィリアムの六人の妃とその子供たちは生活している。
つい最近二人ほど王族から名を消したため、今は後片付けで大変になっているようだが。ウィリアムはそうなってからの後宮を訪れたことは、ない。
「………ガロール、お前が今使っている部屋って確か」
「言うなよ……俺も今すぐ部屋替えたいんだ……」
黒騎士の部屋だったという一画を使用しているガロードは、力任せにクルミを割った。王の寝室と直通なのがまたひどい。年若い娘たちの想像が逞しいなと鼻で笑っていたかつての自分を殴り飛ばしてやりたい程には。
「……見目はいいな」
「国父もな……」
「やめろ…そっちに至っては俺たちの先祖だ……」
「そうだった……」
暗雲が立ち込めていた。
そこに、用事を済ませたラスカーが宙を泳ぐように飛んできて、合流した。
『……何を傷付けあっているのですか、二人して』
「ああ、ラスカーか……ユグラスト教と何を連絡していたんだ?」
『色々ですね。温泉街復興について、温泉の効能について、ユグラスト神の創られた異空間に収納されていたガルガンの亡骸……そして魔法陣』
ユグラストの現在の大司祭は、この短期間の間に発見されたガレイゼル帝国の神話時代の多くの遺産に、とても興味を持っていた。
当然、配下であるはずの者たちもである。
『キイチは極秘任務が与えられたようです』
「お前に筒抜けな極秘任務か」
『ええ、リオレイズ様を極秘に連れて来いという、六色司祭の要請です』
「なんだ、あそこまだ権力争いでギスギスしているのか」
『だから私も今のユグラスト教は煩わしいのですよ……全く……リンレイも組織のいざこざで嫌気がさして昇進を嫌がっていたというのに……』
「……あのキイチという男も、いずれは離れるだろうな」
『ええ、既にガルガストの唾付きです』
「「………………………」」
その言い方は、今の二人には苦悶以外の何物でもなかった。
気付いたラスカーも修正した。
『…ああ、失礼。正しくは…………………………………はい』
キイチは、ガルガストと契約しております。
「んぐぅ!?」
元帥となって長いガロードが動揺し、ブランデーが変な所に入って咳き込む程度にはとんでもない事実である。
技術第二部門が作ったワインセラーからラスカーの好むワインを取り出したウィリアムも、驚いた顔のまま元のソファに戻った。
「…………あの国父と同じ契約者か……それさえ離反しては、ユグラスト教も終わりだろう」
『あなたたちもここに戻る時に色々な人材を引っこ抜いていったではありませんか。あの時既に、こんな未来が確定しましたよ』
にやりと笑む国王陛下と元帥は、それ以上の言葉は不要とばかりに手の中の酒を味わった。
正直、あの闇オークションにもユグラスト教会が関与しているのではないかと期待していた。否定された時には二人揃って落胆したが、これはこれで非常においしい。
「あそこは一度完全に崩壊した方がいい」
『同意します。魔法陣の絶対的な優位性を失い、弱体化は必須。いい気味です』
「ユラ大司祭は今も?」
『ええ、自分で歩くことさえ出来ません』
「そうか………………………憐れだな」
ウィリアムの一言は、重くその場に響き渡った。
「………………………で、お前はむしろイコール大司祭をこっちに連れてきたいと?」
「残したフレア隊を護衛に専念させていた。シアン司祭とイェロ司祭がキナ臭い」
「俺の後任を選抜した奴らか……………」
酒を嗜んでいるのは王族だけではなかった。港にある診療所でも、三升目の日本酒をスルメやホッケと共に楽しむリンレイとキイチがいた。今日もシャラは薪ストーブの中に置いてきたのでここにはいない。カウンターでウルドラ神とガルガストが馬鹿やってストーダン神が沈めたという報告をもらってからは沙汰もない。今頃夢の中だろう。
「で、俺も会わずに終わったが、どんなのが後任になったんだ?」
「お前の部下たちが、任命されたその日のうちに辞表だした程度の人材だ」
「は!?あの我慢強いリュゼもかよ!?スゲーな後任!!」
棘を抜けた彼らの動向は、ユグラの眼やストーム隊の同志が逐一報告してくれていた。気ままに冒険者として名を上げていると聞き、リンレイも安堵した。
「ストーム隊も増加する厄神の出現報告で手一杯だ。ライトニング隊も殉職した隊長の後任が決まらず停止状態。ルーツ隊とファントム隊はあちらで何か仕掛けるらしいが………いい予感はしないな」
たこわさをつまんだキイチはしばしそれを見つめ、そして言った。
「これみたいな混ざり具合だからな。あそこは」
「相変わらず一口だけで酔っぱらうよな」
「酔ってない」
酔っていた。
『だからおっぱいは二つが理想だっつってんだろ!?』
『八個もあった方がお得!』
『バッカお前相変わらずウサギとか結婚相手の対象かよ!?』
『ラビラット!子だくさん!俺もする!!』
『馬鹿じゃない』
『だから人間だよ人・間!!胸!腰!尻!!完璧な生命体のプロポーション!!』
『馬鹿じゃない』
『人間もうやった!うまくいかなかった!!』
『ざっけんな馬鹿野郎!!どんな子だった!?』
『ぼいんぼいん!』
『うおおおおおおおお!!!!!』
『馬鹿じゃない』
「ストーダンはもうお酒飲んじゃダメー♡」
「………………………………………………うるさいなぁ……」
階下の騒音に、リオルはなかなか寝付けなかった。
翌朝。
寝不足で階下に降り立ったリオルは、見た。
全裸で転がるガルガストとウルドラ神が店の床にいた。
「あ、リオルおはよー」
「店長、神々が」
「神話でもよくある話じゃん。酔っぱらった神サマなんてこんなもんだよ。気にしない気にしない」
「お酒こわ……っ!」
しばらくして、二柱は自分のくしゃみで目が覚めた。
飲めない:リオル/エルシー/リーゼ ←未成年
嗜む :ウィリアム国王/ガロール元帥/ラスカー ←かっこよく飲む
バカ騒ぎ:神々 ←神話時代から安定/ルーガス ←ガオー/リンレイ ←完全に出来上がると笑い続ける
下戸 :キイチ/国父レナード ←一口でアウト




