避難訓練
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エイル君の中身はこちらのオッサンのコピーで、
女神クララベル様はこのチャンネルのマスコットキャラクターの見た目を使った。という設定にしています。
AIは日本語としておかしくないか、誤字脱字がないかの校正作業で使用しております。
おれはバルガスさんの紹介で、王泊の仕事をいろいろ手伝うことになった。
まずは畑仕事。
マリナの実家でもやっていたし、これならおれにも出来そうや。
ここ王泊では、島の陸地は畑や放牧地で占められている。
建物といえば学校や家畜小屋、市場などで、人々の家はほとんど海の上にある。
島の土地には限りがあるから、土の上でしか出来ないことを優先してるんやろか?
王宮ですら杭上に建ってるもんな。徹底してるわ……
別の日は桟橋などの修理をする大工を手伝った。
木材を運んだり、組むのを手伝ったり。
「違う違う! 海じゃそんな組み方したらすぐ壊れるぞ!」
「え、そうなん?」
「ここはな……よいしょ、これぐらい遊ばせるんだ」
「はえ~……」
さすが海の上で暮らしているだけあって、こういう知恵はおれとは段違いやな。
「しかしエイルよ。お前さんの筏、どうなってるんだ?」
「へ、なにが?」
大工の親方が、不思議そうな顔をして話しかけてきた。
「バランスが悪すぎるだろ。あの植物がおいてあるバルコニーだって、後ろに寄りすぎてる。」
「よくあんなので、まともに浮いてられるな……」
「なんかこの辺にぃ〜、クララベル様の加護、来てるらしいっすよ。」
つい、よくわからないネットスラングの構文で返してしまった。
「この辺……? どこなんだ……」ボソリ
学校がない日のマリナは、リエラと一緒に配達の手伝いをしている。
リエラはマリナに曳航のやり方を教え、貨物筏を引っ張って運ぶ手伝いだ。
マリンにはリミッターみたいなものを掛けてあるので、速度はそんなにも出ない。
それでも小回りが利いて馬力もあるので、リエラもめっちゃ助かってるみたい。
そういやこの前、マリナと一緒にいたリエラを呼ぶとき、ついうっかり「リエラ」と呼び捨てにしてしまった。
それをきっかけに、いつの間にか『リエラ』『エイル』と呼び合う仲になっている。
おじさん的には、呼び捨てで呼び合うぐらい仲良くなれてちょっと嬉しい♪
「エイルよ。今日はお前の筏に活躍してもらうぞ。」
なんでも、大型船がドワーフ国から帰ってくるらしく、通り道を広げるため、並んでいる筏住宅を一列分移動させるそうだ。
「いいぞー! ゆーっくり引っ張り始めてくれ!」
筏住宅を固定している『ブイ付きロープ』を外したバルガスが指示を出してきた。
おれとバルガスは、筏住宅を王宮裏の『避難区域』まで運ぶ作業を何度か繰り返した。
『避難区域』というのは、嵐が来た時に筏住宅を移動させるための場所だ。
ここは入り江になっており、嵐のときでも波の影響が比較的マシらしい。
「帰ったら家がなくなっとる!? とかならんのやろか」
おれは、なにもない所で呆然とする子供の姿を想像して、クスッと笑った。
「エイルよ。今日は住民一斉の避難訓練だ。」
「嬢ちゃんも学校に逃げるよう、指示しといてくれ。」
この世界でも避難訓練があるんか……どんなんかちょっと興味があるわ。
ウゥゥゥゥ――――……
島中に、低く唸るような音が響き渡った。
サイレンと同時に、指揮所に置かれた大砂時計がひっくり返された。
サイレンの音を聞き、おれは事前の打ち合わせどおり、マリナに学校へ向かうよう指示を出した。おれの筏は王宮に係留したままでいいらしい。
筏住宅の子供たちも、一斉に学校へと向かった。
筏住宅はブイ付きの固定ロープを外され、父親らしき人が操る漁船に引っ張られて『避難区域』へと向かっていた。
杭上住宅や浜辺の人たちは歩いて学校へ向かう人と、浜で待機する人に分かれていた。
「なんで逃げんのやろ?」
と思っていたら、どこからか現れた、赤いライフジャケットを着た救助隊の集団が、筏住宅の集まる一画へ向かっていく。
救助隊員は住宅からお年寄りを背負って、中型の救助船へ次々と乗せていく。
一方、ほかの隊員たちは筏住宅の固定ロープを外し、何軒かを一列に繋いでいた。
それを大型船がまとめて曳航し、『避難区域』へと運んでいく。
お年寄りを乗せた救助船は浜へ向かい、待機していた住人へと引き渡す。
そして再び筏住宅の間を巡り、取り残された人がいないか確認していた。
「はぇ~、消防団みたいなもんか……」
「浜に残ってた人は、お年寄りを連れて行く役目やったんか……」
おれは住民たちの異様な手際の良さに驚いていた。
王宮の指揮所では大きな声で報告が行われていた。
「第一区! 避難完了しましたッ! 以上報告終わりッ!」
「第六区! 避難完了しましたッ! 以上報告終わりッ!」
「全! 住民! 避難完了、しましたッ! 以上報告! 終わりッ!」
元の世界と似たような報告のしかたやな。なついわ……
災害訓練指揮所の指揮官サフィリア王妃のもとへ、住民区域・避難所・農業区域・家畜区域からの避難状況報告が次々とされていた。
全報告が終わると、指揮所に設置された大砂時計が横倒しにされた。
「訓練終了!」
「今回は、目盛り二つ分早かった!」
サフィリア王妃から終了合図が出ると、皆は拍手して喜んでいた。
指揮所の窓からは、チカチカと訓練終了の発光信号が送られ、各区画からの返信信号が返ってきていた。
「なるほどね、これで報告のやりとりをしとったんか。」ボソリ
おれのいた世界では無線でやりとりしていたけど、ここはこんなやり方してるんやな。
「みんな、めちゃくちゃ手際よく動いてましたね」
おれはバルガスさんに話しかけた。
「そりゃそうだろ。命と直結してるんだから、そりゃ手際もよくなる」
「でも嵐やったら、多少は余裕がないですか?」
天気予報があるのかは知らんけど、台風ならある程度は事前に準備ができる。
おれは皆の異様な真剣さに違和感を持っていた。
「そりゃ嵐ならな。」
「火山噴火の津波を想定してるんだよ」
「……火山?」
「ヴァルネシアは火山が多いからな。」
バルガスさんは、島の向こうへ目を向けた。
「昔の王都も、噴火で溶岩に飲み込まれた」
「王都が……?」
「ああ。それだけじゃない。その後も別の島で噴火が起きてな。いくつもの街を失った」
「…………」
なんとヴァルネシア王都は昔、溶岩に飲み込まれ、王族はじめ住民はここに避難してきたらしい。
「土のある場所も、随分少なくなっちまった」
「……だから、海の上に?」
「畑は海じゃ作れんだろ?」
「家なら海の上にも建てられる」
だから皆は海の上に住んでいるのか……
だから島には畑や放牧地ばかりだったのか……
「学校も最初から避難所として建ててある。普段遊んでるあの広場だって、いざって時は住民を収容する場所だ」
学校が避難所になったのではない。
避難所を、普段は学校として活用していたのか……
おれは南国リゾートみたいだな。なんて第一印象を持ってしまっていたけど……
この人たちは、そうせざるを得なかったから、筏住宅や杭上住宅に住んでいたのか……
王族はじめ、国民全員が被災者。
それでもこの人たちは、海の上に家を建て、畑を耕し、学校を作って暮らしている。
おれが南国リゾートみたいだと思ったこの景色は――
この人たちが、生きていくために作り上げた景色やったんか……。




