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C-Raft(クラフト) ~女神に放り込まれたおっさん、筏一つで沈みゆく世界を巡る~  作者: nico
第六章 波上の楼閣(はじょうのろうかく)
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避難訓練

youtubeでゲーム実況をおこなっております!

https://www.youtube.com/@nico_channel_

エイル君の中身はこちらのオッサンのコピーで、

女神クララベル様はこのチャンネルのマスコットキャラクターの見た目を使った。という設定にしています。

挿絵(By みてみん)

AIは日本語としておかしくないか、誤字脱字がないかの校正作業で使用しております。



 おれはバルガスさんの紹介で、王泊《おうはく》の仕事をいろいろ手伝うことになった。



 まずは畑仕事。


 マリナの実家でもやっていたし、これならおれにも出来そうや。



 ここ王泊《おうはく》では、島の陸地は畑や放牧地で占められている。



 建物といえば学校や家畜小屋、市場などで、人々の家はほとんど海の上にある。


 島の土地には限りがあるから、土の上でしか出来ないことを優先してるんやろか?


 王宮ですら杭上《こうじょう》に建ってるもんな。徹底してるわ……



 別の日は桟橋などの修理をする大工を手伝った。


 木材を運んだり、組むのを手伝ったり。



「違う違う! 海じゃそんな組み方したらすぐ壊れるぞ!」


「え、そうなん?」


「ここはな……よいしょ、これぐらい遊ばせるんだ」


「はえ~……」



 さすが海の上で暮らしているだけあって、こういう知恵はおれとは段違いやな。





「しかしエイルよ。お前さんの筏、どうなってるんだ?」


「へ、なにが?」


 大工の親方が、不思議そうな顔をして話しかけてきた。




「バランスが悪すぎるだろ。あの植物がおいてあるバルコニーだって、後ろに寄りすぎてる。」


「よくあんなので、まともに浮いてられるな……」



「なんかこの辺《いかだ》にぃ〜、クララベル様の加護、来てるらしいっすよ。」


 つい、よくわからないネットスラングの構文で返してしまった。



「この辺……? どこなんだ……」ボソリ





 学校がない日のマリナは、リエラと一緒に配達の手伝いをしている。


 リエラはマリナに曳航《えいこう》のやり方を教え、貨物筏を引っ張って運ぶ手伝いだ。



 マリンにはリミッターみたいなものを掛けてあるので、速度はそんなにも出ない。


 それでも小回りが利いて馬力もあるので、リエラもめっちゃ助かってるみたい。




 そういやこの前、マリナと一緒にいたリエラを呼ぶとき、ついうっかり「リエラ」と呼び捨てにしてしまった。


 それをきっかけに、いつの間にか『リエラ』『エイル』と呼び合う仲になっている。



 おじさん的には、呼び捨てで呼び合うぐらい仲良くなれてちょっと嬉しい♪





「エイルよ。今日はお前の筏に活躍してもらうぞ。」



 なんでも、大型船がドワーフ国から帰ってくるらしく、通り道を広げるため、並んでいる筏住宅を一列分移動させるそうだ。




「いいぞー! ゆーっくり引っ張り始めてくれ!」


 筏住宅を固定している『ブイ付きロープ』を外したバルガスが指示を出してきた。



 おれとバルガスは、筏住宅を王宮裏の『避難区域』まで運ぶ作業を何度か繰り返した。




『避難区域』というのは、嵐が来た時に筏住宅を移動させるための場所だ。


 ここは入り江になっており、嵐のときでも波の影響が比較的マシらしい。



「帰ったら家がなくなっとる!? とかならんのやろか」


 おれは、なにもない所で呆然とする子供の姿を想像して、クスッと笑った。





「エイルよ。今日は住民一斉の避難訓練だ。」


「嬢ちゃんも学校に逃げるよう、指示しといてくれ。」



 この世界でも避難訓練があるんか……どんなんかちょっと興味があるわ。





 ウゥゥゥゥ――――……



 島中に、低く唸るような音が響き渡った。


 サイレンと同時に、指揮所《しきしょ》に置かれた大砂時計がひっくり返された。




 サイレンの音を聞き、おれは事前の打ち合わせどおり、マリナに学校へ向かうよう指示を出した。おれの筏は王宮に係留したままでいいらしい。





 筏住宅の子供たちも、一斉に学校へと向かった。


 筏住宅はブイ付きの固定ロープを外され、父親らしき人が操る漁船に引っ張られて『避難区域』へと向かっていた。



 杭上《こうじょう》住宅や浜辺の人たちは歩いて学校へ向かう人と、浜で待機する人に分かれていた。


「なんで逃げんのやろ?」




 と思っていたら、どこからか現れた、赤いライフジャケットを着た救助隊の集団が、筏住宅の集まる一画へ向かっていく。


 救助隊員は住宅からお年寄りを背負って、中型の救助船へ次々と乗せていく。



 一方、ほかの隊員たちは筏住宅の固定ロープを外し、何軒かを一列に繋いでいた。


 それを大型船がまとめて曳航《えいこう》し、『避難区域』へと運んでいく。



 お年寄りを乗せた救助船は浜へ向かい、待機していた住人へと引き渡す。


 そして再び筏住宅の間を巡り、取り残された人がいないか確認していた。



「はぇ~、消防団みたいなもんか……」


「浜に残ってた人は、お年寄りを連れて行く役目やったんか……」



 おれは住民たちの異様な手際の良さに驚いていた。





 王宮の指揮所では大きな声で報告が行われていた。



「第一区! 避難完了しましたッ! 以上報告終わりッ!」


「第六区! 避難完了しましたッ! 以上報告終わりッ!」




「全! 住民! 避難完了、しましたッ! 以上報告! 終わりッ!」


 元の世界と似たような報告のしかたやな。なついわ……



 災害訓練指揮所の指揮官サフィリア王妃のもとへ、住民区域・避難所・農業区域・家畜区域からの避難状況報告が次々とされていた。


 全報告が終わると、指揮所に設置された大砂時計が横倒しにされた。




「訓練終了!」


「今回は、目盛り二つ分早かった!」



 サフィリア王妃から終了合図が出ると、皆《みな》は拍手して喜んでいた。




 指揮所の窓からは、チカチカと訓練終了の発光信号が送られ、各区画からの返信信号が返ってきていた。




「なるほどね、これで報告のやりとりをしとったんか。」ボソリ


 おれのいた世界では無線でやりとりしていたけど、ここはこんなやり方してるんやな。





「みんな、めちゃくちゃ手際よく動いてましたね」


 おれはバルガスさんに話しかけた。



「そりゃそうだろ。命と直結してるんだから、そりゃ手際もよくなる」



「でも嵐やったら、多少は余裕がないですか?」


 天気予報があるのかは知らんけど、台風ならある程度は事前に準備ができる。


 おれは皆《みんな》の異様な真剣さに違和感を持っていた。




「そりゃ嵐ならな。」



「火山噴火の津波を想定してるんだよ」


「……火山?」




「ヴァルネシアは火山が多いからな。」


 バルガスさんは、島の向こうへ目を向けた。



「昔の王都も、噴火で溶岩に飲み込まれた」


「王都が……?」



「ああ。それだけじゃない。その後も別の島で噴火が起きてな。いくつもの街を失った」


「…………」



 なんとヴァルネシア王都は昔、溶岩に飲み込まれ、王族はじめ住民はここに避難してきたらしい。




「土のある場所も、随分少なくなっちまった」


「……だから、海の上に?」




「畑は海じゃ作れんだろ?」



「家なら海の上にも建てられる」




 だから皆は海の上に住んでいるのか……


 だから島には畑や放牧地ばかりだったのか……



「学校も最初から避難所として建ててある。普段遊んでるあの広場だって、いざって時は住民を収容する場所だ」



 学校が避難所になったのではない。


 避難所を、普段は学校として活用していたのか……





 おれは南国リゾートみたいだな。なんて第一印象を持ってしまっていたけど……


 この人たちは、そうせざるを得なかったから、筏住宅や杭上《こうじょう》住宅に住んでいたのか……




 王族はじめ、国民全員が被災者。


 それでもこの人たちは、海の上に家を建て、畑を耕し、学校を作って暮らしている。



 おれが南国リゾートみたいだと思ったこの景色は――


 この人たちが、生きていくために作り上げた景色やったんか……。

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