雛鳥の旅立ち
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女神クララベル様はこちらのマスコットキャラクターの見た目を使ったという設定にしています。
AIは日本語としておかしくないか、誤字脱字がないかの校正作業で使用しております。
マリナは岬から海を眺めていた……
家のすぐそばにある、月見草がきれいに咲いている岬。
ドワーフの国から帰ってきてから、気づいたら足をはこんで海を眺めている……
――…………
クララベル様は何も言わずマリナのそばにいた。
「最近、海……よく見にきているね……」
後ろから母のマリエが話しかけてきた。
「お母さん……」
「あたしも嫁に来た頃から、この岬でよく海を眺めてたよ……」
「とうちゃん……かあちゃん……元気にしてるかな……って。」
「マリナがおなかにいるときは、産婆さんに歩け歩けって言われて……よく散歩で来てた。」
「マリナが産まれてからもよく来てたんだよ?」
「抱っこして……よちよち歩けるようになってからも散歩で来てた。」
「ここに来る意味が……マリナが大きくなるにつれて、だんだんと変わっていったんだ……」
「行きたいんだろう?エイル君に付いてさ……」
「知ってたの……?」
「そりゃ気づくさ……ずっとマリナを見てきたんだからね……」
「グランさんの城でね……初めてこの世界の地図を見たんだ……」
マリエは微笑みながら聴いていた。
「地図では近くに見えた隣の島が、城の窓からみたらとても遠くて……」
「じゃあ、うちの島よりも遠い島はどれだけ遠くにあるんだろう……」
「ドワーフの人たち、みんな優しかった……もっと遠くの島には、どんな人たちが住んでいるんだろう、って……」
「ずっと頭の中をぐるぐるしてる……」
「昔はこの村しか映ってなかったマリナの目は……」
「今ではもう、この海のずうっと先を見てたんだね……」
「お母さん……帰って来られて本当に嬉しかったのに……でも海の向こうが気になっちゃって……」
「私、エイルさんたちと……海の向こうの世界が見たい……」
「いいよ……行っておいで……」
「……いいの……?」
「あたしたちしか映ってなかったマリナの目は……大きくなるにつれ、色んなものが映るようになった。」
「近所の友達……村のみんな……市場の人たち……」
「いきなり海の向こうとは、びっくりしたけどさ。」
マリエはクスリと笑った。
「お父さん、許してくれるかな……」
「あたしに任せときな。」
マリエは胸をドンと叩いた。
「父さんだって、きっと許してくれるさ。」
「ダメだダメだダメだ!マリナはまだまだ子供だぞ!!」
「何言ってるんだい!アンタだってあたしをこの村まで連れてきたじゃないか!」
「旅立つ前の日はとうちゃん、隠れてボロボロ泣いてたんだ!」
「今度はアンタに送り出す番が回ってきたんだよ!」
「マリナの目はもう、この村だけじゃなく外の世界を知っちまったんだよ!」
「アンタだって一度は刺激を求めてこの村から飛び出したんだろ!?」
「だからこそだ!苦労もした、怖い思いもした。だから行かせたくねぇんだ!」
「苦労もしただろうさ、怖い思いもしただろうさ……」
「でもあたしと出会えただろう?苦い思い出ばかりじゃなかったろう?」
「ちょっと早いけど……その時が来たんだよ。」
「ううう………マリナ………」
トーマは力なく俯いていた……
その夜トーマは眠れず、ぼんやりしながら外を歩いていた。
気づけば足は、教会へと向かっていた。
「クララベル様……まだ幼い娘をどうか……どうかお護りください……」
どれぐらい祈っていたのだろう。
立ち上がろうと目を開けると、
目の前に月見草が一輪、置いてあった……
「……クララベル様……?」
きっとこれは、クララベル様からの賜り物に違いない。
そんな気がした……
マリナは母マリエと、久しぶりに一緒に寝ていた。
マリエは、マリナがまだ小さかった頃の話をしていた。
小さい頃は夜になるとよく熱を出したこと。
一晩中心配で看てたけど、いつも朝になったらケロッと元気になって安心したこと。
お父さんが夜中に、熱冷ましの月見草を岬まで取りに行ってくれたこと。
壁に手をつき立ち上がって、自分たちに向かってトトトと初めて歩いたときは大喜びしたこと。
話を聞きながら、マリナは母の胸の中で、目を涙で濡らした。
「ごめんね……かあさん……」
次の日の朝、マリナはいつもより真剣な顔をしながら筏の前にいた。
「え、どうしたの?マリナ」
マリナは胸の前でギュッと手を握りしめた。
ゆっくりと深呼吸をし……
まっすぐにおれを見た。
「エイルさん!」
「はっ、はい?」
「私を!一緒に旅へ連れていってください!!」
「いやいやいや!マリナ!?」
「危ないしあかんやろ!!トーマさんとマリエさんには言ってるんかいな!」
もう父と母には伝えたこと。お父さんには大反対されたけど、お母さんが説得してくれたこと。
「私……海の向こうを……世界を見たいんです!!」
おれはドワーフ国ガルドラム城で、マリナが一心に地図を見ていた姿を思い出した。
あの時マリナが見ていたのは地図ではなく、地図のその先……世界だったのか。
クララベル様があの時言ったことは、そういうことだったのか、と。
後ろからやってきたトーマは言葉短くこう言った。
「マリナのこと……守ってやってくれ……」
怖い思いをし、死にそうな目にあった娘と奇跡的な再会。そんな娘を世界に送り出してやろう、おれに預けようと決めたのには、大変な葛藤があったことは想像に難くない……
「必ず……」
おれはその決心を、真っ直ぐに受け取ることにした。
筏にはマリナの部屋を作った。
荷物をまとめ、出発の準備は整った。
出発前、トーマはマリナに月見草を一輪渡した。
「夜中、教会でクララベル様に祈ってたんだ。」
「目を開けたら、これが置いてあった。」
「クララベル様は……ちゃんとマリナを守る。そう仰られたように思えた。」
「持っていけ。」
「お父さん……小さい頃よく、月見草取りに行ってくれたんだってね?」
「ありがとう……」
マリナは両親に抱きついた。
トーマとマリエは、マリナを抱きしめた。
「ごめんね……ごめんね……」
「元気で行って来い……」
「いつまでもここで待ってるからね……」
おれは三人を見つめていた。
また目頭が熱くなってきて涙がこぼれた……
「体には気をつけるんだぞー!!」
「いつまでも待ってるからねー!!」
「おとーさーん!おかーさーん!いってきまーーす!!」
「お腹が大きくなってきたら、一旦帰ってきなさいよーー!」
「なにっ!!」
びっくりしたトーマはマリエの方を見た。
次の瞬間、
「エイルゥゥゥゥゥ!!マリナに手を出したら分かってるだろうなァァァァァァ!!」
トーマはオレに向かって怒鳴り声を上げた!
「そんな訳ないでしょうがァァァァァァァ!!」
「何言ってるの、おかーさん!!」
涙で濡れたマリナの顔が、一瞬で真っ赤になった。
――ふふっ♪
涙の別れは母の一言で、みんな笑顔となった。
トーマ以外は。
大切な娘を預かり、再び旅に出たおれ。
次はどこに行こうか。
おれとマリナとクララベル様。
きっと楽しい旅が待ってる。
そんな気がした。




