黒い霧
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エイル君の中身はこちらのオッサンのコピーで、
女神クララベル様はこのチャンネルのマスコットキャラクターの見た目を使った。という設定にしています。
AIは日本語としておかしくないか、誤字脱字がないかの校正作業で使用しております。
見たこともない故郷の幻を見てから数週間。
おれたちエイル号とリリエラさんたちの研究船は、バルガス調査船に同行して旧王都島の定期観察へやってきた。
旧王都島付近では、いつ『邪悪な魔素』が流れてくるか分からない。そのため調査船団には、常に窓を閉めておくよう重ね重ね注意されていた。
エイル号の操船はマリナに任せ、おれとリュミエルとレイナはバルガス船へと移った。
「これが対巨大魔獣用の武器なんすか」はぇ~
バルガス船の船首甲板には、巨大な弩砲が設置されていた。
「狙って当てられるのは、せいぜい四百ほどだがな……」
バルガスさんは説明をしてくれた。
「撃つ時は錨を下ろして船首を固定するんだ。それでも反動で船が下がるから、機関も前進に入れておかなきゃならん」
某宇宙戦艦の波動砲を撃つ時みたいな感じやな。
バルガスさんたちは監視体制に入ったのでレイナはエイル号へ戻り、おれはリュミエルをハーネスで固定し、カイトで研究船へと移った。
「あら、エイルさんいらっしゃい♪」ムチッ♪ プルン♪
リリエラさんが甲板で何かの装置を操作していた。
おれは装置を見てるんやで? せやからリュミエルさん、腕を力いっぱい抱きしめてこんといて!? 痛い! 痛い!
リリエラさんはそんなおれたちを見てクスリと妖艶な笑みを浮かべた。この人『サキュバス』とかちゃうやろな……この世界にそんな種族おるのか知らんけど……
「イテテテ……リ、リリエラさん。その装置は何なんっすか?」
「これ? これは大気の採取装置ですよ♪」ニコッ♪ プルン♪
「じゃあスイッチを入れてみて?」
リリエラさんがそう言うと、船内にいる研究者さんが何かのスイッチを入れた。
ブオォォォン……シュコー……
装置は起動し機械音のあと、空気を吸っているような音がし始めた。
「吸った大気を、ここにある瓶に詰めて自動で密封してくれるの♪」プルン♪
「へぇ~、便利っすね」
「ほかの空気が混ざったら検査にならないもの♪」ウンウン頷きプルン♪ プルン♪
リリエラさんはしゃがみ込んで瓶を取り出した。しゃがむ時に脚とか見てないから、リュミエルさん……痛いですので腕を緩めてもらえませんかね!?
『エイルよ……一体お主はなにをしに行っとるんじゃ……』ヤレヤレ……
「は!? ノル、聞こえてたんか!?」
『丸聞こえじゃ♪』ニヤニヤ♪ してる声。
またレイナとリュミエルに説教されるんとちゃうやろか……そんな嫌な予感が脳裏をよぎった。
『それよりもじゃ……また邪悪な魔素の気配が濃くなってきおったぞ。気をつけるよう、皆に伝えるんじゃ』
「わかった」
「リリエラさん。ノルから邪悪な魔素の気配が濃くなってきたから気をつけるよう伝言です」
リリエラさんにそう伝えると、おれはバルガス船に向かって叫んだ。
「バルガスさーん! ノルが邪悪な魔素の気配が濃くなってきたから気をつけろと伝言でーす!」
「わかったー!」
「ノル、やばくなったらまた教えてくれ! マリナとレイナは頼んだぞ!」
『わかったわい!』
緊張に包まれる船団。そんな中、バルガス船と研究船は監視作業を続けていた。
「エイル! 万が一巨大魔獣が出てきたときは、まずこの弩砲で攻撃をする! お前はバックアップを頼む!」
バルガスさんが大声で、研究船にいるおれに指示を出した。
「おれは威力を上げるために、もう五百ほど後ろへ下がります!」
「頼む!」
「リリエラさん、おれとリュミエルは一旦エイル号へ戻ります。くれぐれも黒い霧には気をつけてください!」
「わかったわ」
おれはリュミエルをハーネスで固定し、カイトでエイル号へ戻った。
レイナに目測してもらい、おれはエイル号を操縦し船団から離れた。
「レイナ、バルガス船から大体五百ぐらい後方で合図してくれ」
「わかった!」
レイナの合図で、バルガス船たちをヴェルディアボウの射線に入れない位置に錨を下ろし、おれたちも待機する。
おれとレイナは交代で遠見の加護を使い監視を続ける……マリナやリュミエルは室内で待機させた。
どれぐらい時間が経ったか……
『一段と強くなりおったぞ!』
ノルがそう伝えてきた次の瞬間。
旧王都島の溶岩原から、なにか蠢く黒い影が現れた。
巨大魔獣だ……
おれは警笛を鳴らしバルガス船たちに伝えると、バルガス船と研究船も警笛を鳴らして返事が返ってきた。
「レイナ、いつでも逃げ込めるようにしておいてくれよ!」
「任せて!」
巨大魔獣は海岸へ向かって、ゆっくりと森を進む。森の木々はバキバキとなぎ倒されていく……
風向きは……海から岸に向かって吹いている! 今回は風に流されんようやけど、気は抜いたらアカン!
まだ射程に入らんのか……!?
バルガス船にめちゃ近くなってきてるんやけど……
おれの心臓がバクバク言ってるのが分かる。
次の瞬間、弩砲から巨大な矢が放たれた!
バルガス船の船首がわずかに沈み込む。
遅れて――ズドォォン! と大きな音が聞こえた!
そして……吹き飛ぶ巨大魔獣の頭!
「やった! バルガスさんたちが倒した!」
黒い霧となり霧散する巨大魔獣……
しかし黒い霧はバルガス船と研究船へ向かって流れている!
「なんでや!? 風向きは逆やんけ!」
「レイナ! 急いで室内に入るで!」
「うん!」
おれとレイナは大急ぎで室内へ避難した。
「バルガスさんやリリエラさんは大丈夫やろか……」
おれたちは不安な気持ちで黒い霧が過ぎ去るのを待った。
「もう過ぎ去ったようじゃぞ……」プルプル……
しばらくすると、レイナに抱きしめられたノルがそう言った。
あのノルですら、本能的に恐怖を感じるのか小さく震えている。
ララもリュミエルに抱きしめられ、不安そうな表情で震えていた。
おれは急いでバルガス船へ戻ると、ブレイサーの蔓を使って飛び移った。
「黒い霧は風向きに逆らって飛んできましたが、みなさん大丈夫でしたか!?」
「ああ、みんな無事だ。弩砲の方も上手くいってくれたようだ……」
「おめでとうございます! これで万が一の時もなんとかなりそうですね!」
「ああ、あれだけ近づかれて肝が冷えたがな……」
「せや、研究船の方も心配なので見てきます!」
おれは上昇気流でカイトを飛ばし、研究船へと向かった。
「リリエラさーん! 大丈夫でしたかー!?」
甲板で作業をしていたリリエラさんは、おれの呼びかけにウンウンと頷いている。どことは言わんけど、プルン♪ プルン♪と揺れていた。
「風向きが逆やったのにこっちに向かってきたから……心配しましたよ」ホッ
「風向きに逆らう黒い霧……」片腕組み顎手添えギュウウ……バイン♪
何とは言わんけど、激しく暴れてらっしゃる……
「上手くいったようね……」ウンウン頷き、プルン♪ プルン♪
リリエラさんは黒い瓶を手に持っていた。
「それは……?」
「船内でちょっと閃いてね。さっきの採取装置を動かしてみたの♪」ニコッ♪ プルン♪
「見て、これ」ムチッ♪
リリエラさんは黒い霧が入った瓶を見せてきた。その後ろの谷間に目が吸い寄せられそうや……
瓶の黒い霧は片側に偏っている。
リリエラさんが瓶を回してみると、黒い霧もゆっくりと動いてまた片側に偏った。
「……?」
今度は瓶を逆さにする。
それでも黒い霧は、ゆっくりと同じ方角へ集まっていく。
「地図で確認すると、王泊の方向へ向かおうとしているみたいね……」
邪悪な魔素の塊『黒い霧』は、風に逆らってまで王泊の方向へ向かおうとしている。
これは一体どういうことなんや……
被災したヴァルネシアの人たちは、やっとの思いで王泊に生活基盤を作った。
まさか……今度はその王泊で何か起こるんとちゃうやろな……
胸の奥に、なんとも言えん嫌な予感が広がっていった……




