2.高校生の陽茉梨
陽茉梨は普段淡々としてて、財布とか落としても「落とした」とか言って顔も変えない子だった。
「落とした、じゃねぇよ!!なんで!?チェーンつけたのか!?」
「ちぎれたみたい」
「なんでだよ!?」
みたいなのが普段の亮とのやりとり。
そんな陽茉梨が高校くらいから
「亮ちゃん。私モテるみたい」
「へーすげぇすげぇ」
高校でラブレター(古典的)を何通も貰った陽茉梨、嫉妬させたくて亮にその束を見せるが相手にされない。
たまの休みに、実家に帰省し、酒を取りにくる亮は適当に流していた。
「おっ。これいいな。陽茉梨。この日本酒すげぇレアだろ!もらっていーか?」
「盗賊みたいなのやめて」
「いーだろ。金は弾むぞ!俺の財力(医者)なめんな」
「パンパンのブランドの長財布とか一番嫌な男だよ?」
「うるせぇぇ!!さっきからなんだその生意気な口は!?」
大人気なく激昂した亮から酒瓶をひったくると、すぐにレジを通した。
「お前なー。顔は俺に似て可愛いんだから、もっと『やだぁーお金持ちぃ♡』とか言ってぶりっ子して男を転がすくらいの女になれよ!!」
「そういうのが好きなの?」
一拍おいて…
「やだぁ♡お金持ち」
「顔!!声だけそれやめろ!」
無表情の陽茉梨に亮は吹いた。
爆笑されると、必死に気を引きたくてやった陽茉梨はめずらしくむぅっと眉を寄せてむくれたような顔になる。
「あー…笑った笑った。いやぁー…子供の成長に立ち会えて幸せだわ」
「子供じゃない」
「はいはい」
店の表に駐停車した外車に乗り込む亮を追いかけて、陽茉梨が続ける。
「亮ちゃんいつまでいるの?お盆暇ならお出かけしたい」
「はぁ?俺を車代わりに便利に使うのやめろ。お前はチャリでイオンでも行ってラブレターの男とデートでもしとけよ」
「イオン飽きた」
「生意気だな」
「亮ちゃんとデートしたい」
「今しただろ、酒屋デート」
バン!と拒絶するみたいに車に乗り込んでドアを閉めた。
トントンと窓をたたく陽茉梨に手を上げた亮は「じゃあな」のジェスチャー。
一応窓を下げ、ちゃんと「またな」と言う。
「今夜、亮ちゃん家(実家)行く。ドライブでいいからどこか連れて行って」
「酒飲むからだめ。敬一も来んだろ?迎えには来てやるよ」
「デート…」
「おまえが俺を転がせるくらいの、いい女になったらな?」
もちろん、亮は相手にしていなかった。
その夜のこと…
亮は実家で敬一や親と日本酒飲み、酔いつぶれてソファーに倒れていた。
誰もいないのを見計らって、陽茉梨はこっそり亮の寝顔をまじまじとみつめる。
幼い頃から見飽きたはずの顔だが、眠ると少し幼く見えた。
だが、無防備な寝顔に信じられないくらい胸が高鳴っていた。
「ん…」
呻いて寝返りをうった亮に、陽茉梨はビクッと反応し固まる。
真っ赤な顔で立ち上がると、敬一が戻ってきていた。
「…帰るぞ」
兄は何も言わなかった。
だが、全部分かっていると感じた。




