3-11 幸福
その突然の質問の意味が分からなくて、俺は軽く困惑する。
「なんで突然‥‥‥」
思わず聞き返した俺の問いに、白亜は気まずいのか前方を見つめたまま続ける。
「そうですね、特に理由はありませんが。
強いて言うなら先日の拠点襲撃でしょうか。
その時に、ご主人様は仰いましたよね、私の事を推しの一人だと。
ですから、あの、推しと生活しているご主人様はいま幸せなのかなって、そう思いまして」
ああ、あの時か。
白亜の言葉に、俺は拠点襲撃時の時のことを思い出す。
そう、俺は確かに言ったのだ。白亜も俺の推しなのだと。
あの時、俺は至近距離で白亜に顔を覗き込まれて、それ以外に答えようがなかったのもあったが‥‥‥
あらやだ、思い出したら顔が赤くなってしまったわ。
「あ~、そうかあの時のな」
俺は気恥ずかしさから、言葉を濁しながら答える。
でもまあ、なんだ。白亜が俺の推しの一人なのも、俺が護りたいって思ってるのも事実なわけで。
それを否定するのは俺の願いを反する行為なわけで。
俺から否定の言葉が出なかったのに安堵したのか、白亜ははぁ~っと一息ついた後に、照れた様子の俺を横目で見ながら続ける。
「そう、あの時のです。
あの時、ご主人様が私のことを推しと言ってくださって、私、本当に嬉しかったんですよ」
俺の手を握る白亜の手の力が強くなる。
その手から伝わって来る体温はとても温かくて、けれどその力は決して痛くはなくて‥‥‥
「ですから、ご主人様。私はご主人様の隣に居られて」
白亜は前方の風景に目をやったまま、けれどその顔を耳まで真っ赤にして、
「最高に幸せですよ」
そう、言ったのだ。
それから、少し焦ったように矢継ぎ早な口調で続ける。
「だからですかね。ご主人様の口からそのあたりのことをしっかりとお聞きしたいと思いました」
そのまま、白亜は視線を少し下にずらすと、地面をじっと見つめだした。
それは、恥ずかしさと同時に、何かを恐れているかのような、そんな感じ。
俺から否定の言葉が出てきたらどうしよう、とかそんなこと思っているのかもしれない。
まったく、普段はあんなに強気なくせに、こういう時だけしおらしいとかさ。
ほんとずるいぞ‥‥‥。
でもだからこそ、俺の想いも伝えないといけないよな。
そして、俺は自分の中の答えを言葉にするために口を開く。
「そう、だな。推しとの生活が幸せか、か」
俺は空を見上げる。
その空に自分の気持ちを映すように、一言一言、自分の心の深い所から湧き出して来る感情を、整理して言葉を紡ぐ。
一方、白亜は下を向いたままだ。けれどその耳がしっかりと俺の言葉を捉えているのが、繋がっている手の反応から分かる。
「俺にとって推しってさ、星みたいなもんなんだよな。
夜空にキラキラと輝いててさ。今あの星はどんなふうに光りたいんだあろう。これからどんな物語を紡いでいくんだろう。そんなワクワクと憧れを抱えて光る星。
そういう意味では、俺にとって月夜も瑚兎も、認めたくはないがノエルも推しだ。
そして、」
俺は白亜と繋がっている手をギュッと握り返す。
俺の気持ちがしっかりと伝わる様に。
「白亜も、俺にとっては推しなんだ」
俺は、しっかりと告げた。
瞬間、白亜の手がビクンと跳ねる。
それは歓喜しているようにも、驚愕しているようにも感じられる。
「だけどな、推しは星だからこそ本来は手が届かない存在なんだ。
だからさ、今、白亜たちが俺の傍に居てくれることが未だに信じられなくなる時がある。
もしかしたら明日目覚めたら全部夢でしたって言われても納得しちまうと思う」
そう、俺にとって今は夢幻の様な時間。
前世、戦場で倒れたと思ったら、転生していて。
白亜が居て、月夜が居て、ノエルが居て、瑚兎が居て、他にもたくさんの仲間がいて。
「でもそうだな、きっと言葉にするなら、今俺は、」
そんな時間が、何よりもかけがえのない時間で。
だから俺は―――――
「幸せなんだと思う」
素直にそう思った。
俺の言葉を穏やかな風がさらって行く。
俺と白亜の間に無言が満ちる。
けれどそれは決して嫌な沈黙では無くて‥‥‥。
穏やかな沈黙が流れる。
そうして、しばらくたった頃、隣から微かな笑い声が聞こえてきた。
それは嬉しさを堪えきれない、そんな笑い。
「ふふふ、その言葉を聞けて安心しました。
やっぱり私はご主人様の傍に居てもいいのですね」
「はは、何言ってんだ。元々離れるつもりなんてなかったくせに」
隣を見れば、こちらを向いて花が咲いた様な艶やかな笑みを浮かべる白亜。
ああ、そうだな。俺は推しのこんな顔が見たかったんだ。
それに、白亜が居ない生活なんて今の俺には考えられない。
「そうですね、ご主人様と私はずっと一緒ですから」
白亜はそう言うと、俺の方にその身をグイッと寄せて来る。
美しく流れる銀髪。深い海の様なアクアブルーの瞳。
思わず俺の心ごとその美しい瞳に吸い込まれそうになる。
その瞬間、白亜の眼が先ほどとは打って変わって猫の様に悪戯な色を帯びる。
そして、白亜は自らの胸元にクレープに乗った生クリームを落とし、
「それに、私が居れば、こんなサービスもしてもらえますよ」
その胸の谷間を強調するように寄せきたではないか。
思わず俺の視線は白亜の瞳から、その谷間に強制的に吸い込まれてしまう。
「ちょっ、何しとりやがりますねん!?」
俺はそのあまりのギャップについて行けない。
あれ、さっきまでのしっとりした雰囲気はどこに行かれたんですか?
え? 緊急の出張? 代わりにお色気担当を派遣しておいた?
おぉおい、なんてことしやがるんだ!!
俺の混乱をよそに、白亜はさらに俺に身を寄せて来る。
間近まで迫ったその深いお山の間には、真っ白いクリームの小山が鎮座してらっしゃる。
くっ、溶け始めたクリームがエロすぎる!
「ほらご主人様、メイド服が汚れてしまいますので、拭いてください。
え、ハンカチが無い?
それならしょうがありません。今回だけは特別に舐めとってもらっても構いませんよ。
ほら♪」
「なぁ!?」
そして白亜はそのまま俺の頭を抱え込むと、そのまま谷間の方に‥‥‥
と、そこで突然白亜の動きが止まり、頭の拘束が緩まる。
次いで漏れるクツクツとした笑い声。
俺は白亜の拘束を振りほどき、その顔を見上げる。
そしてそこには、悪戯が成功した子供の様な顔で、笑顔を浮かべる白亜。
瞬間、俺も悟る。
くそぅ、からかわれた!!
「ふふふ、冗談、冗談ですよご主人様。
二人きりならいざ知らず、こんな公衆の面前でそんなことをするわけないじゃないですか」
「むぅ」
俺は思わずふくれっ面を作ってしまう。
まったく、純情な童貞少年をからかうなんて許せない!
これはご主人様として白亜にお仕置きをしなければな!!
だけどそれも、白亜の楽しそうな、本当に楽しそうな顔を見て気勢がそがれてしまう。
「それに、私今とても幸せなんです」
目の前には満面の笑顔。
そんな顔されたら、怒るに怒れない。
そして、白亜はその手を俺の手に再び重ねると、
「ですからほら、今回は手を繋ぐだけで許して差し上げます、ね。」
そうして、俺の手を自らの胸元に、それこそ宝物を扱うかのように、そっと抱え込むのだった。
システムさん:はい、というわけで今回のテーマは幸福です!では皆さんが幸せだと思う瞬間はいつですか、手を挙げて発表してください!
主人公:はい!俺はエロゲをしている時です!!
月夜:はい、私はお兄様と一緒にお散歩している時です。
白亜:私は、ご主人様に馬乗りになっている時ですかね。
ノエル:私は、刀祢ちゃんに首輪をつけられてた時かなぁ。
瑚兎:儂はそうじゃな、猛者共が闇討ちを仕掛けてきた時じゃな!
彩乃:私は料理を作っている時かしら?
システムさん:皆さん、個性的でいいですね!まったく、こんな個性的なヒロインに愛される刀祢さんは罪作りですねぇ(笑)!
主人公:もっと普通のヒロインがいい(泣)
システムさん:まあまあ、そんな刀祢さんの叶わない理想は置いておいて。ちなみに他の皆さんはどうでしょうか?はい、どうぞ!!
ジャンヌ:何で私が‥‥‥まったく。えーと、幸せ?そうね、寝てる時かしら‥‥‥
阿賀稚:はいはい、僕は剣神をフルボッコにするのを想像してる時だね!
パーシ:僕は月夜様の『お兄様』ってボイスを聞いてる時かな!
近藤:俺は姫園によしよしされるのを想像しながらおしゃぶりを咥えている時だぜ!!
システムさん:あれ、なんかヒロイン達より濃い人達(男達)がいますね。ヤバいですね~。このままではヒロインのキャラが薄まってしまいそうですねぁ、困った‥‥‥そうだ!ならこの人達もヒロイン候補にしちゃえばいいのでは??
次回予告:刀祢とパーシが急接近!?体育倉庫に消えた二人、それは禁断の扉への入り口だった。どうする近藤?刀祢をめぐるパーシと近藤の仁義なき恋の戦いが、今、はじまる!!腐女子の皆さんこうご期待!!じゅるり!!
主人公:始まんねーよぉ!!!!怒
作者:リクエストが多かったら書いてもいいかな‥‥‥
主人公:(゜д゜)!




