3-12 日常の終わり
本話は、以前に追加した『1-22 邪神’ズ メモリー』を読んだうえで読んでいただくのを推奨しています。もし良ければよろしくお願いします。
それと、評価とブックマーク頂きました!本当にありがとうございます!!もしかしてこれは昨日の後書きの続きを書くべき!?
その後、俺達は公園でゆっくりした時間を過ごした。
「さて、じゃあそろそろ休憩は終わりにして、残りの用事を済ませて帰るか」
俺はベンチから立ち上がり、白亜に手を伸ばす。
「はい、ご主人様」
白亜は嬉しそうに俺の手をとると立ち上がる。
そして、俺達が歩き出そうとしたその時、
「あら、刀祢君、こんな所で―――――」
左の方から穏やかで、おっとりとした声が俺達にかかる。
不意に途切れた、聞き覚えのある声。
声がした方に振り向くとそこには、特定の男性を殺すためのセーター‥‥‥
ではなく、そのセーターを着た彩乃さんが居た。
「あっ、彩乃さん」
夕飯の買い物帰りなのだろうか。
その手にはパンパンに膨らんだマイバッグと中からはみ出した野菜たちが見えている。
あの材料から、コズミックな謎料理が作られるのだから世の中は不思議だ。
そんなことを思っていると、そこでふと彩乃さんの動きが止まっていることに気付いた。
そのまま彩乃さんの表情を見れば、そこには驚愕、次いで憤怒。
その視線の先は、俺?
ではない。
俺の斜め後ろ、白亜が居る位置を凝視している。
そして、そこに居る白亜も驚愕に動きを止めているのが感じられる。
なんだ?
俺が二人の変化に訝しんでいると、
突然。
そう、本当に突然、彩乃さんから膨大な邪気が立ち昇った!!
「!?!?」
ゴオオォォォオオオオオオ!!アアアアアーーーーーーー!!
轟く爆音、空間が軋みを上げる様に甲高い音を鳴らしている。
それは地上から天を貫く極太の柱。
赤黒い邪気の激流が天へと向かって吹き上がる。
そしてその中には、炎よりもなお深紅の二つの輝き。
それが爛々と光り、こちらを見つめている。
そこに以前に見た優し気な色は一切ない。
ピンクブラウンだったはずの彩乃さんの瞳。
それは今、深紅に染まり、その瞳に深い深い憎しみを宿している。
混乱、困惑、疑問。
突然すぎる出来事に思考が正常に働かない。
そして、彩乃さんの口が言葉を紡ぐ。
風に乗って俺の耳に届いたそれは――――
「万魔神殿――――」
ゾワリ
背筋に悪寒が走る。
俺は知っている。そのスキルを知っている。
いや、そんなまさか!?!?!?!?
パリーーン!!
しかし俺の否定も空しく、世界が、穏やかだった日常の風景がひび割れ、全てが赤黒い呪いの世界へと変じていく。
それは、以前荒野で邪神と相対した時と全く同じもので――――
気付いた時には既に、その赤黒い世界の中には俺と彩乃さんと、そして白亜しか居なかった。
「‥‥‥なん、で‥‥‥」
嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ。
空転する思考で俺は彩乃さんの方を見やる。
その周囲には膨大な邪気の渦。中心には深紅の瞳を憎悪に染め上げた彩乃さん。
だが、事態は当然そんなもので終わるわけも無く―――――
「!?!?」
俺は彩乃さんの手に握られている物を見て驚愕する。
それはこの呪いに満ちた世界でなお、己の存在を誇示するがごとく怨嗟を振りまいている大斧。
あの日、俺が邪神と相対した日、俺の左腕を切り飛ばした恐怖の化身。
怨嗟大斧・マルドゥーク――――
彼女はそれを大きく振りかぶり、
「しまっ!?」
そこで初めて思考が目の前の現実に追いつく!!
咄嗟に右手に握る朧桜を正中に構えようとして――――
だが、それは致命的に遅かった――――
「叙述詩の終焉」
無情にも膨大な呪いを内包したマルドゥークが、俺の目の前で振り下ろされる。
瞬間、ゴオオオオと凄まじい轟音が俺の横を通り過ぎる!
それは身の丈を超えるほどの呪いの斬撃!!
俺はそれに反応することすらできず、
その斬撃は、俺の斜め後ろで何にぶつかって
ドガーーーーーン!!!!
弾けた!!!
轟音、轟音、轟音!
あまりの衝撃に体が吹き飛ばされそうになる!
舞い上がる砂塵が、容赦なく身体を打ち据えてくる!
俺はそれに必死に耐え――――
けれど、そんな俺の元に届く、柔らかいものが地面に倒れる音
次いで頬に降り注ぐ温かな水滴
「は?」
思わず俺の口から間の抜けた声が洩れる。
鼻をつく錆びた鉄の匂い
次々に降り注いでくる温かな水滴
「ぁ――――――」
いや、分かっている
この匂いは何度も嗅いだ
この温かさは何度も触れた
それこそ前世の戦場で嫌になるほど
これは‥‥‥
「あ、ああ」
これは、血だ
命の欠片だ
では、その命は誰の?
決まっている、俺の後方に居たのは彼女しかいない‥‥‥
けれど、理性が、感情が、そんなことはあり得ないと否定している。
そんなことは認めたくないとがなりを上げている。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!!!
俺は震えながら後方を振り向く。
大丈夫、きっと大丈夫だ。
だって白亜だぞ?
邪神教団の拠点でも圧倒的な戦闘力を見せた白亜がそう簡単にどうこうなるはずはないだろう。
そう、俺が振り向けば
『心配しましたかご主人様? もうご主人様ったら私のことが好きすぎるんですから!』
なんてからかってくるに違いない。
だから――――
振り返った俺の眼に、映っているこれは、嘘だ‥‥‥
視界を埋めるのは、
赤、赤赤、赤赤、赤赤、赤赤赤赤、赤赤赤赤赤赤赤、赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤
「ああああああ‥‥‥」
そこには、美しかった銀髪を朱色に染め、大きな血だまりの中に倒れ伏す白亜が居たのだった――――
「ああああああああああああああああああああ」
システムさん:‥‥‥
主人公:‥‥‥
システムさん:‥‥‥
主人公:‥‥‥
システムさん:刀祢さんのバカ‥‥‥
主人公:‥‥‥




