3-4 新称号
「さて、じゃあ素材をだしてもらおうか」
「はい、こちらを」
ここは荒野。
白亜はおもむろにスカートの端をつまみ上げると、その細くしなやかな脚を晒す。
その中から取り出されるのは、先日ゲットした『神鋼』とマザーギリタブリルの素材たち。
それが白亜の脚元に落ちる。
「‥‥‥」
だが俺はそれに手を伸ばすことが出来ない。
何故なら、そのすぐ横には白亜の脚があるからだ。
ロングソックスにガーターベルト。
その魅惑の装備に俺は思わず目を引き付けられる。
くそ、あざとい!!
なんて童貞心を的確についてくる装備だ。
俺は白亜の選択に内心で白旗を上げつつ、表情には出さないように努めて平静な顔をする。
だが、白亜は「分かってますよ」といった表情で、静かにスカートをたくし上げ続けている。
くそ、もう素材は取り出したんだから大人しくしまいなさい!!
けれど、俺は口からその言葉を発することが出来ない。
俺の眼と心は白亜のあの流線型の魔力に囚われてしまっているからだ。
悲しいかな、例え数多のエロゲをクリアした俺でも、実際は童貞。
そんな俺ではあの魔力に逆らうことは出来ないのだ!
そんな懊悩を繰り返している間にも、白亜はその綺麗な脚を晒し続けている。
ただ、その口元には堪えきれない笑い。
完全に遊ばれている!
「くそっ、俺は、俺はどうしたらいいんだぁ!!!」
そうして俺は内心の葛藤と戦いながら、これまでの経緯を思い出すのであった。
◇◇◇
先日、瑚兎とのやり取りで元気を取り戻した俺は、その夜のうちに自らのステータスを確認した。
何故かって?
それは、先日の邪神教団との戦闘の後から、どうも体の調子が変だったからだ。
それは頭が痛いとか、腹を壊しているとかではなく、体の出力と自分の動きがうまくかみ合っていないような、そんな変な違和感。
その感覚を強いて言葉にするのであれば、学園物エロゲをやっているのに、体はRPG系エロゲの感覚でストーリー把握をしてしまうような、そんな感じだ‥‥‥
え? 分かりにくい? しょうがないなぁ。
そうだな、一般的な例えにすれば、乗用車にスーパーカーのエンジンを積み込んだけど使いこなせていない、そんな感じだ。
まあ、もしからしたらアンニュイになっていた原因の一つがこれだったのかもしれない。
最初は精神の不調だと思っていたが、瑚兎と話し、元気を取り戻した俺はそれでも残る違和感に、もしかしたら別の原因かと考えを改めた。
そして、その違和感の正体に思い当たった。
それは神気、いや、混神の盃のレベルアップだ。
それを確かめるために、まずはステータスを確認をしようと思い立ち、早速行動に移したというわけだ。
そして夜、我が家の自室。
俺の右手にはステータスペーパーがある。
「ステータスオープン」
俺の呟きに反応して、白紙の羊皮紙が淡く発光する。
そして、浮かび上がってくるステータス。
『個体名:神代刀祢
武技:剣術レベル12、槍術レベル6、拳闘術レベル9、弓術レベル3、
混神:レベル2』
やっぱり。予想通り混神レベルが2にアップしている。
それで、続きは
『特殊スキル:ラッキースケベ、巻き込まれた体質、致命の選択、■■の加護、邪神の加護
称号:千人斬り、剣鬼、桜華天元流開祖、天下無双、世捨て人、鈍感師匠、限界突破童貞、エロゲインストーラー、邪神に認められし者、ビーストテイマー、性欲の剣鬼、スーパーエロリスト刀祢
』
「‥‥‥」
うん、おかしいな。
俺の目が幻を映しているようだ。
しょうがない、一度目を擦って、深呼吸して、推しのヒロインの名前を唱えて、よしもう一度。
今度こそちゃんとしたステータスを見るぞ!!
『個体名:神代刀祢
武技:剣術レベル12、槍術レベル6、拳闘術レベル9、弓術レベル3、
混神:レベル2
特殊スキル:ラッキースケベ、巻き込まれた体質、致命の選択、■■の加護、邪神の加護
称号:千人斬り、剣鬼、桜華天元流開祖、天下無双、世捨て人、鈍感師匠、限界突破童貞、エロゲインストーラー、邪神に認められし者、ビーストテイマー、性欲の剣鬼、スーパーエロリスト刀祢
特記事項:』
「なんでだよ!!!????」
俺の魂の叫びが室内に木霊する。
ふざけんじゃねぇ、何だこのステータスは!!
混乱のあまり、俺はステータスペーパーをベッドに投げつけ、はぁはぁと肩で息をする。
だってあんまりにも酷いだろ?
前回と変わったのは武技と加護、それに称号だ。
武技に関して剣術レベルが12。
本来武技レベルの上限は10となっているが、それを飛び越えてのレベル12。
正直、これはこれで衝撃ではある。
だが考えてみれば、混神の盃というイレギュラーを抱え込むことになったうえに、眷属や忌み子、果ては邪神とまで戦ったのだ。
これで上がってなければ、むしろ運営にアップデートしろやとDMをすると思う。
それに邪神の加護。
これもヤバいが邪神との戦闘後、邪神とのキスの時に、何か邪神から流れ込んでくる感じがあった。
その瞬間、「あ、これ加護を押し付けられた可能性あるやん」と思ったのも確かだ。
これももはやしょうがない。
だからこれはいい、良いのだが‥‥‥
「称号ビーストテイマーってなんやねん!!」
これはおかしいだろう!?!?
きっとラブホでのノエルとの一件ことを指しているのだろうが、俺はノエルをテイムしてないし!!
あんなに被害を出したのに、さらに精神的ダメージを与えて来るとかなんやねん!!
俺は頭を抱え、荒い呼吸を繰り返しながらステータスペーパーを睨みつける。
しかもそこには、ビーストテイマーの他に、性欲の剣鬼とスーパーエロリスト刀祢の文字!
もはやこれに関しては冤罪でしかない!
ああ、そうか分かったぞ、これはきっと幻だ。
あるいはステータスペーパーが故障しているに違いない。
なら簡単だ。こんなものは消そう、すぐ消そう、今すぐ消そう。
俺は虚ろな瞳で朧桜を大上段に構えると、奥義を発動するべく精神を集中させる。
そうして俺は、心配になった月夜が様子を見に来るまで悪意ある称号に絶叫とツッコミを入れ続けるのであった
◇
その後、半刻ほど騒いだ後、俺は改めてステータスペーパーを拾い上げた。
もしかしたらまだ精査するべき箇所があるかもしれないし、何より個人情報をこのまま放置するわけにはいかなかったからだ。
だが、そこで俺は気付いた。
ステータスペーパー、その最後に見慣れない文字が躍っていることに。
それは特記事項。
はて、前回はこのような記載あっただろうか?
俺は改めてステータスペーパーに顔を寄せる。
そして、その文字を理解した瞬間、驚愕が全身を駆け巡る。
同時、さらなる飛躍への期待に、知らず口角がつり上がり笑みの形になる。
「ははは、マジか‥‥‥」
でも仕方ないだろう?
何故ならそこには、
『特記事項:朧桜 ―存在進化待機中―』
そんな文字が書かれていたのだから。




