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2-21 チェックメイト

すみません、前話の最後、少し修正を加えました。その続きとしてお楽しみください。

「はぁ、君、ほんと化け物だよね」


包帯幹部はその茶色い光彩に敵意と、かすかな畏怖を宿しながら声をかけてきた。


「まさかここまで苦戦するとは思わなかったよ」


やれやれと苦笑しながら話すその声は、やはり俺の知っている者の声。

故に俺はその軽口に軽口で返す。


「まあ、それなりに修羅場は潜り抜けてるからな」


「確かに、邪神様とも戦ってるんだもんね。呪い子と僕だけじゃ役不足だったかな?」


その質問に俺は頭を振る。


「いや、そーでもないさ。

これでも結構一杯一杯だ。

バビロンの呪いに加え、神気により強化された武器が大量に迫って来るとかさ、かなりのムリゲーだろ。

強いて言うなら選択肢一つでバッドルートになるヤンデレヒロイン盛り盛りのエロゲぐらいハードモードだったぞ」


「??」


「??」


だがそこでお互いしばしの困惑。


おかしい、結構分かりやすい例えにしたと思ったのだが。

こいつにはエロゲの経験はないのだろうか?

奴は包帯の上からでも分かるキョトンとした表情を浮かべているが、まあいいだろう。


俺はうまい例えが伝わらなかったことに若干残念な気持ちを覚えつつ、先ほどの推察を裏付けるため、SAHの資料集を思い出しながら質問を選ぶ。


「それにしても、」


恐らくこれで、この包帯幹部が彼女かどうか分かるだろう。


「邪神教団でも神気は使うんだな――――」


ピキリ


瞬間、周囲の気温が一気に下がった気がした。

先ほどとは打って変わって包帯幹部からは何の表情も読み取れない。

だが、俺は構わず続ける。


「正直ここまで熟達した神気使いなんて、なかなかいないと思うぞ。誇っていい」


そうして、さも称賛しているかのように大仰な仕草で言葉を紡ぐ。

それは心からの賛美。けれど、奴の本性をさらけ出させるための罠。


対し、目の前の包帯幹部の顔は徐々に険しくなっている。

それは憎悪、それは憤怒。


まあ、そういう反応になるよな。分かっていた。

俺はその表情を見て、確信を深める。


そしてついに我慢できなくなったのか、包帯幹部が吼える。


「剣神も自らが与えた力で反逆されるなんて、ほんとに笑えるよね!!」


唇を吊り上げ放たれたその声は、自嘲を含み空間に反響する。

それはいっそ悲痛なほどに。


だがそれこそが、この包帯幹部が彼女だということを示している。



本来、邪神教団の目的は邪神を復活させてこの世界を破壊することである。

故にこそ、その幹部には一定以上の戦闘能力が求められる。


それは武技、あるいは神気。

現状この世界ではそれらの強化無くして強さを手に入れることは不可能だ。

だから邪神教団といえど、いや寧ろ邪神教団だからこそ神気レベルを上げた猛者がゴロゴロいるのが現状だ。


けれどもそれを許容できなかった邪神教団幹部もいる。


それがこの包帯幹部。


SAHの資料集によると、こいつはもともと実験体なのだ。

邪神教団により、母体にいる時から神気に馴染むよう様々な実験を行われた被験体の一体。

その実験により、生まれる前から自らの人生を狂わされ、歪な道を歩まされてきた生まれついての被害者。

それが彼女。


故に彼女は、邪神の復活ではなく剣神への復讐こそを自らの目標としている。

そんな彼女にとって、望まぬ高レベルの神気とは呪いにも等しいものなのだ。


そしてそんな闇を抱えた人物こそ


邪神教団 第8席 不死者イモータル阿賀稚日菜あがちひな


その人なのであった――――


と、俺がそこまで考えたところで、阿賀稚がニヤリを口角をつり上げる。

気付けば、阿賀稚と呪い子は俺を挟んで対角線上の位置に布陣していたのだ。


なるほど、阿賀稚も存外冷静らしい。

まあ、俺も気付いてはいたがな、ほんとだよ?

恐らくこちらの準備も整う頃だろうから、そろそろ決着をつけようか。


「死ね!!!」


阿賀稚は新たに取り出すと、話は終わりとばかりにナイフとシミターをもう一度投擲してくる!

そしてさらに追加のナイフを両手に握り、そのまま俺の方へと突進を敢行してきた!!

その速度は学園で見た時とは段違いだ!!


しかも、


「今だ、やれ!!」


彼女が叫ぶと、俺の背後で咆哮が上がる。


「ギャアアガガガガガカカァァァ」


呪い子がその不揃いの歯が並ぶ口を大きく開く。


ゾワリ!!


背筋に冷たい悪寒が走る。

眼の端で呪い子を捉えると、その口内に呪いの塊!!


それは邪神のマルドゥークから感じたのと同様の気配!

なるほど、相手もここが勝負どころと判断したか!!


瞬間――――


その呪いの塊が内部からはじけ、極大の呪いの帯が空気を裂いて迫って来た。


ゴォオオオオオオオオオオオ!!!


それは赤黒い狂気を孕んだ致死の閃光。

通常であればそれは、絶対に回避も受け流しも不可能な致命の一撃!


だが――――


カツーン……


そんな中、俺は元来た通路から微かに響く足音を捉える。

知らず、俺の口角がニヤリと上がる。

どうやら天は俺に見方をした様だ!!


故に告げる!!


「タイムアップだ――――」


そして俺は、阿賀稚から視線を外し呪い子の方に全力で駆け抜ける。


カツーン……


一瞬で詰まる俺と閃光との距離。


「うそ!!??」


背後にいる阿賀稚から信じられないというような驚愕の気配が伝わる。


呪いの閃光まで距離、あと数メートル。

もはや、眼の前は全て赤黒い光に占められている!!


カツーン……


だけど!

だけどな!!

ノープロブレムだ!!

だってそうだろ?


何故なら――――


「うちには俺をサポートしてくれる銀髪完璧美少女メイドが居るんだからなあ!!

白亜ぁああああ!!!」


カツーン!!


「お任せください、ご主人様!!」


甲高いブーツの足音が空間に響く!!

同時、部屋を走り抜ける青の極雷!!


ガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!!!!


部屋の入口。

そこにはもちろん、美しい銀色の髪がたなびく一人のメイド!!

そして、そのれに握られた巨大重火器から伸びる一直線の雷霆が、俺を殺すはずだった呪いの閃光に吸い込まれていく!

毎分4000発の蒼い雷霆が、呪いの閃光を焼き貫いていく!!


至近まで迫る赤黒い閃光、それを打ち破る蒼い雷霆。

俺はその中を駆ける、駆ける、駆ける!!

爆発四散した呪いの閃光が辿った道を、白亜が切り開いた道を遡る!!


全力の疾駆!!


ブワッ!!


そしてついに暴虐の嵐の中を抜ける!!

呪いが弾け、赤黒い霧に変わった間隙を抜け、眼前に広がるは忌み子の巨大な口腔!


さらにその奥には淀んだ赤黒い光を発する宝玉が見え!!


見つけた!!!


俺はその宝玉に狙いを定め、右腕を大きく引く。


「これでチェックメイトだ!!」


そして――――


「桜華天元流奥義・華突旋牙ぁあああああ!!!」


一直線に突き貫くのだった。



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