2-20 触手プレイ
全方位からうなりを上げて迫る呪いの触手と呪い子の超重量を生かした物理攻撃!!
それが変則的なタイミングで俺の胸を、腹を、頭部を破砕し、呪い殺そうと迫って来る。
通常の対人戦ではありえない連続攻撃。
だから俺は自身のピッチを引き上げる!
戦鬼の意識へと切り替える!!
「はは」
神経を研ぎ澄まし、攻撃の起こりを見切り、その全てに対応していく。
「はははは」
被弾は最小限で。
今までの経験の全てを絞り出し、裂帛の気合でもって朧桜を振り続ける。
「ははははははは」
それを何合も何合も繰り返す。
周囲には切られた触手と、呪いのより溶けた床。
けれど今の俺には関係ない。
「ははははははははははは」
極限の集中でもって、呪いに侵される前に渾身の踏み込みでもって、斬って斬って斬りまくる!!
一方の呪い子は触手の向こうでその表情を徐々に苛立ちの色に染めていく。
何故なら、奴の攻撃がまともにヒットしたのは先ほどの一撃のみ。
初期こそ危ない場面があったものの、今の俺はほぼすべての攻撃を捌き切っているからだ。
「はははははは、呪い子さんよぉ、もっと気合入れてこいや!!」
俺はさらに意気を上げる!!
「じゃねえと、俺を触手プレイするなんて夢のまた夢だぜ!!
何より――――」
斬撃が鋭さを増す!
周囲はもはや呪いの触手のドームのようになっている。
だが、手数が多いだけの呪い子の攻撃など、慣れてしまえばわけもない!!
「需要ねぇから、お引き取り願おうかぁ!!」
同時、何故か白亜とノエル。そして彩乃さんの顔が脳裏に浮かんだが、今は無視だ無視!!
俺の触手プレイの需要なんて無いはずだからなぁ!!
俺は怒涛の勢いで迫る触手と前足による振り下ろし、さらには蛇の尻尾による噛みつき、それらを完璧に弾き返し、呪い子に嘲笑を投げかける。
そしてそれは呪い子を挑発するのに十分な一手!!
やつはその顔を憤怒に染め叫ぶ。
そして、それまでに倍する量、それこそ壁にしか見えないほどの触手の波濤を叩きつけてきた。
だが――――
「それは邪神戦で見たってーの!! 桜華天元流奥義・流水円転!!」
対して俺は、迫る触手を完全に制御し倍の威力で呪い子に返す!!
「人を呪わば穴二つってな!!」
ドガーーーーン!!
空間に轟く衝撃、轟音、呪い子の驚愕の気配。
そして呪い子と触手はお互いに貪り合い、その呪いを周囲に飛び散らせる。
このまま行ければ‥‥‥
だが、その安堵も束の間、呪い子の周囲の泥はその脚ににじり寄ると、再度同化しやがった。
「え~、マジでかぁ」
俺は顔をしかめ、心底嫌そうな声で呟く。
まあ、呪い子から遠く飛ばされた触手はそのまま床を溶かして消えていったので、最初よりはいいが。
俺はその様子を観察して改めて状況を整理する。
「本体からある程度離れた呪いは再生できないと仮定して、現状の戦力差なら削りきることは可能‥‥‥」
一方で、呪い子は憤怒を表すかのように全身の呪いを波打たせている。
その中心には怪しい光を放つ赤黒い宝玉。
恐らくあれがコアなのだろう。
身体の中心部で厳重に守られているが、呪いを削って行けばいずれはたどり着ける。
「だが、正直なところ少しマズいか‥‥‥」
俺は周囲の惨状と残りの呪いとを見比べて思案する。
先の攻防で切り取った呪いの量は、本体の体積に比較して極めて少量だ。
一方、削った呪いとこの部屋の破壊具合を見た時に、このまま削っていっていてはこの空間自体が崩れてしまいかねない。
それに――――
俺は頭上に気配を感じ、朧桜を掲げる。
ガギンッ!!!
瞬間、朧桜に青白い燐光を放つ2本のシミターが叩きつけられる。
俺の腕に走る鋭い衝撃!!
「ちっ!!」
けれどそれでは止まらず、襲撃者、すなわち包帯幹部はそのまま空中で体勢を整えると、左右から挟み込む様な斬撃にシミターの軌道を変えてきた。
「甘い!!」
俺はそれらが交差する前に、瞬歩で敵の懐に潜り込む。
そして、そのまま肘を相手の胸元に当て、
「桜華天元流・震肘!!」
襲撃者の体内に響くように肘から衝撃を叩きつけた!!
「っつ!!」
響く打撃音!!
包帯野郎が回転しながら、後方に吹き飛ばされる。
けれど、俺の攻撃はやつの包帯に阻まれた。
その証拠に、包帯の一部が崩れその下の褐色の肌が覗いてはいるが、それ以上の損傷は無いように見える。
「今の一撃、沈めるつもりだったんだけどな」
俺の呟きが空間に溶ける。
一方で、そのまま地面に着地した包帯幹部は、一瞬で体勢を立て直すと、今度は両手のシミターをブーメランのように投げ放ってきた。
「シッ!!」
さらに奴は腕に巻いてある包帯の隙間から4本のナイフを取り出すと、投擲!!
そのいずれもに神気により強化されている!!
「まったく、触手の次は暗器祭りとか、今日は本当に面白い相手ばかりだな!!」
俺はそれらを目で追いながらも確信する。
これであの包帯幹部の正体はおのずと知れたと!
包帯から覗く素肌の色といい、使用する武器といい、間違いは無いだろう。
まあ、だからこそ先ほどは朧桜ではなく、拳打で仕留めようとしたのだが……
そんなことを考えている間にも迫る数多の暗器たち。
しかも、呪い子の方からも数多の触手が怒涛の勢いで迫っている。
まったく、モテって辛いね。モテたことはないけど‥‥‥
止めよう‥‥‥
「桜華天元流・霞!!」
俺は涙を力に変えて、霞を発動する。
間合いをずらし、その全てを涙で滲む視界の中、紙一重で躱していく。
「なっ!?」
全てを躱された包帯幹部は動揺の表情を浮かべている。
まだまだおかわりだ!!
「桜華天元流・流崩!!」
俺は迫る触手の一部を、包帯幹部の方に受け流す。
それは包帯幹部を飲み込む勢いで――――
「止まれ!!」
しかし、それが包帯幹部に届く直前、叱咤の声が空間に木霊する。
瞬間、包帯幹部に向かっていた触手はビクッと硬直し、空中に静止した。
なるほど、相打ちは難しいか‥‥‥
本当はこれで方が付いてくれれば楽だったんだが。
俺は、その事実に内心で舌打ちをするが、すぐに朧桜を構えなおす。
対峙する俺と包帯幹部、それに呪い子。
いずれも戦意は衰えていないものの、体力は徐々にすり減り、戦いの終わりを予感させている。
そうして、俺達の戦いは佳境を迎えるのであった。
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