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2-18 推しの平和を護る者

昨日もたくさんの方に読んでいただいて、ブックマークやリアクション頂きました!!本当にありがとうございます!!!

「先手、必勝じゃーーー!!」


俺は先ほどのダメージなど無いかのように、幽鬼のような奴らに襲い掛かる。

決して後ろは振り向かない!!


いや、白亜さんが怖いからじゃないよ?

真面目に戦おうとしているからだよ?

寧ろさっきまでのは敵を油断させるためにわざとやっただけだから。

中二病時代の黒歴史を思い出すふりをしていただけだからね!!


そうして俺は敵陣に切り込んだ!!

一方の敵はまだ動揺から立ち直っていないのか、迎撃の準備すら出来ていない!!


まずは雑魚を片付ける!!


「桜華天元流・一閃!!」


横なぎの一閃、まずは一人!!


「ぐぎゃぁあああ」


そのまま壁まで吹き飛ばされた幽鬼①君は、壁にめり込みながらもがいている。

俺はそこに瞬歩で肉薄すると、そのまま突きを繰り出す!!


「桜華天元流・華突!!」


朧桜が幽鬼①君の鳩尾に吸い込まれるように突き刺さると、そのままギュエという汚い声を残してピクリとも動かなくなる。


それを確認して俺は残りの敵に向き直り、さらに朗々と告げる!!


「ははは、侮るな!!この程度の精神攻撃のろい、耐えられなくて何が剣鬼か!!」


そう、既に俺は過去と向き合った。

辛く厳しい戦いの果て、俺はあの過去を乗り越えているんだ!!


「俺を殺したかったら、その三倍は持ってこい!!」


俺の大音声が空間に響き渡る。

だがそこで敵も我に返ったのか、その目に殺気を沸き上がらせる。


「やれ!」


その包帯幹部の一言で、幽鬼達は体の一部をボコボコと変形させ始めた。


グキャ、メキィ、バギィ!!


手が、脚が、胴が、見る見るうちに異形の怪物のものへと変形していく。

そのあまりの醜悪さは白亜が絶句するほどだ。


「「「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁあああ」」」


だが、それも仕方あるまい。

幽鬼達は今や、邪神の眷属と人間をぐちゃぐちゃに混ぜて歪に組み合わせたような形をしているのだから。


「邪神の忌み子・・・・・・」


思わず呟く。

そう、俺はそれを知っている。


あれは人間に邪神の因子を組み込んだもの。

邪神の愛し子に成れなかった者の成れの果て。通称・忌み子。


再生能力に優れ、他の邪神の眷属とは一線を画する力を持った化け物は、もしからしたら月夜が成っていたかもしれない存在だ‥‥‥


奴らは高い攻撃力に加え、異常なまでの再生能力を持っている。

その戦闘能力は凄まじく、通常であれば討伐どころか戦闘不能にすることすら困難な強敵。

その再生能力は他の追随を許さないほど高速で、内包するエネルギーが尽きるまで終わることはない。


そうだな、真っ二つにするような攻撃でも数秒で元通りになると言えばご理解いただけるだろうか?


だがな!!!


俺は再び瞬歩を発動させると忌み子の背後へと移動する!!

そしてそのまま、


「桜華天元流・華突乱舞!!」


忌み子の背中に無数の突きを放つ!!


「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁあああ」


噴き出る赤黒い体液、上がる化け物の叫び。

後ろに飛びのきながら、俺はそれらを無視して忌み子の傷の再生をじっと観察する。


じゅぅうう~~


赤黒い瘴気を上げながらも、忌み子の傷が見る見るうちに回復していく。


「そんな!?あの傷を一瞬で!?」


後方から白亜の驚愕が響く。


流石、適応しきれなかったとは言え邪神の因子を組み込まれた存在!!

だけどな、それは想定内だ!!


「見つけた!!」


俺はその体の一点、そこに狙いを定める。

そこは傷の治りが一番早かった箇所。

邪神の因子が一番強く発現している場所。


つまりは――――


「忌み子のコアってなぁ、桜華天元流奥義・華突旋牙!!!!」


俺はそのコアに向かって全身全霊の突きをくり出す!!

下半身から腰へ、さらには肩、腕、そして朧桜へ!!

踏み込みを、捻りを、その力の全てを乗せた一撃が忌み子のコアへと叩きこまれ――――


パリンッ


甲高い音が響いたかと思うと、忌み子の動きが止まる。

そして、あ゛あ゛あ゛とかすれた声を残して赤黒い霧となって消えていった。

後に残されたのは崩れかけた邪神像。


SAHの知識によると、邪神教団はあの中に邪神の呪いを詰め込み、それを体内に埋め込むことで忌み子の核としている!

つまり、


「あの像を破壊すればあの化け物を倒せるというわけですね」


白亜もそのことに気付いたのか、敵の弱点に勝機を見出している。


俺は振り返り、残りの眷属と包帯幹部に向き直る。

その顔に見えるのは狼狽。


まさか、邪神の忌み子がこんなにもあっけなく倒されるなんて想像もしていなかったのだろう。


「なんだ!! なんなんだよお前は!?!?」


声に浮かぶ焦燥。

少し高めのその声が目の前にある現実を認められないと叫んでいる。


だからその誰何に、俺は魂を込めて答えてやる。


だってそうだろ?

これから負ける相手の名前ぐらいは知っておかないとさ、気になって気になって推し活もロクに出来なくなっちまうだろ?


「俺は!!俺の名は!!神代刀祢!!」


だから耳をかっぽじって、よーく聞いておけ!!

俺の最高にカッコいい自己紹介を!!


「推しの平和を護る者だぁあああ!!!」


「「「「「‥‥‥」」」」」


沈黙、沈黙、沈黙。


何故だろう、その場の誰もが動こうとしない。

しょうがない、聞こえなかったのかな?

よし、それじゃあもう一度、


「俺は、推しの平和をぉ、護る者だぁああああああ!!!」


再び、今度は聞き取りやすいように区切りをつけて叫んだ!!


「「「「「‥‥‥」」」」」


おかしい?

今度こそ聞き取れたと思うのに、とても大事なことだから2回も言ったのに?


なのに、敵を含め白亜まで冷たい視線で俺を見つめて来やがる、解せぬ。

俺が頭の上に疑問符を浮かべていると、


「はぁああ~~~」


俺の後方からとても重く深いため息が響いてきた。

それは白亜のため息。

その声に、先ほどの様な微かな冷気を感じて肩がビクリと跳ねる。


「まったく、ご主人様は空気を読まないことにかけても世界一なんですから」


そう言って白亜はツカツカと俺の方まで歩いてくる。

どうしよう、今度こそ股間に鉛球天誅をされるのだろうか?


戦々恐々としている俺をよそに、白亜は俺の頬に手を添える。

そして----


「ちなみに、その推しの中に私も入っているのでしょうか?」


真剣な顔で俺の瞳をじっと覗き込んで来た。


あ~、うん。そんな真面目な顔でじっと見ないでくれないか?

何と言うか、うん、その湖面のような美しい瞳と月の光のような銀髪が相まって、俺の心臓が早鐘を打ってしまうのですよ。


一方、放置された邪神の忌み子達が


「ぐぎゃぁああ」


と騒いでいたが、ノールックで白亜が放ったディオスクロイの一発が忌み子の足元を抉ったことで、きゅぅうっと鳴いて静かになった。


「で、どうなのですか?」


白亜がさらに顔を寄せて来る。

もはやその距離は唇と唇が触れ合う1秒前だ。


もぉ、白亜さんがイケメン過ぎて俺のドキがムネムネですよ!?


童貞の俺にそんなプレッシャーは耐えられるはずがなく。

その瞳に吸い込まれる様に、俺の口から言葉がもれた。


「‥‥‥もちろんです‥‥‥」


すると、白亜は端正な顔に少女のような可愛らしい笑みを浮かべ、俺を解放した。

そしてそのままステップを踏みながら敵に向き直ると、


「ならばいいのです。

ああ、なんだかやる気が湧いてきました。

今なら、私、何でもできそうな気がします!

励起せよ、あなたに銘を授けましょう、ミニュアースの蔵――――」


その眼を閉じ、すらりと伸びた腕を大きく広げ、

そして詠った!


「全てを穿て、ゼウス!!」


瞬間、白亜のスカートの中から現れたのは特大の銃器!!

超重量の鉄塊が地面に鈍い音を立てて地面に落ちる。


それは武骨、それは重厚、それは破壊の化身。

連結した6本の長い砲身と大型のドラムマガジンが鈍い輝きを放ち、繋がれた20㎜の弾薬の束は、発射の時を今か今かと待ち望んでいる。


俺は知っている。その名を知っている。

毎分4000発の破壊の暴雨をまき散らすその獣の名は、M61バルカン砲!!


白亜はカッと目を見開くと、その破壊の権化をしっかりと掴み、持ち上げる。

そして本来、人の膂力では持ち得ぬ獲物。

白亜はそれを半身で構え、一匹の忌み子に狙いを定める。


「蹂躪しなさい、ケラウノス!!!」


ガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!!!!


刹那、俺の視界を蒼い極太の雷が埋める!!!

穿つ、穿つ、穿つ、穿つ、穿つ、穿つ、穿つ、穿つ、穿つ、穿つ、穿つ、穿つ、穿つ


それはもはや一本の柱となって、邪神の忌み子の身体を削る、削る、削る。

抵抗も出来ず、全身が粉々に削られていく忌み子。

その威力はまさしく、神の雷の名に相応しい。


ガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!!!!


毎分4000発の嵐がその破壊の轟音を周囲に響かせる!


そして数秒後――――


そこには邪神像どころか忌み子の欠片すら残っていなかったのだった。


「ふぅ~、いっちょ上がりですね」


そのあまりの熱に蒸気を上げるM61バルカン砲。

あまりの衝撃にフリーズしていた忌み子達と包帯幹部。


白亜はそれをどしんと横に下ろすと、追加の連結弾倉を取り付ける。

そして改めて残りの忌み子達に向き直り、


「さてと、残りの2匹もお掃除しちゃいましょうか」


そこで初めて、思い出したようにビクンと跳ねる残り2匹の忌み子達。

その背後、包帯野郎は悔し気に歯噛みしている。


「くそっ、計画変更だ!

お前達、何としてでも時間を稼げ!!」


そうして、踵を返すとそのまま背後の通路へと駆け出していった。


「待て!!」


俺はすぐにその後を追いかけようと一歩踏み出すが、間には2体の忌み子が立ちはだかっている。

さらに厄介なことに、奴と入れ替わりに追加で3体の忌み子が現れる。


奴め、まだ戦力を残していたのか!?

だがコアになっている邪神の呪いは本来非常に貴重なもののはず。

何故こんなにも忌み子が量産できている?


その疑問に、嫌な予感が背筋を這い上がるのを感じるが、しかし今は奴を追うのが先決だ!!


俺が敵の逃亡に焦っていると、


「行ってくださいご主人様」


白亜の静かな声が俺の耳に届く。


「あの全身包帯中二病幹部を取り押さえて、何を企んでいるか吐かせるんでしょう?

このままでは無駄足になってしまいます」


「だがっ」


流石に忌み子5体は荷が重い、それなら俺と白亜で協力して倒したほうが。

そう言って白亜を説得しようとするが、それより前に


「それに、幸いまだゼウスは暴れ足りないようですから」


白亜は忌み子とその奥の通路を睨みながら、M61バルカン砲を撫でる。

その砲身は蒸気を放出し、鈍色の鋼の奥からは未だ冷めやらぬ戦意を感じる。

そして何より、白亜のその瞳には絶対の自信と戦意が漲っている。


「道は私が切り開きます。だからご主人様は行ってください!!」


白亜が再度M61バルカン砲を構える。

その銃口から吹き上がるのは蒼い神気。


最後に白亜はこちらをちらりと振り向くと、その唇に悪戯気な笑みを浮かべて、


「そして、ちゃんと推しである私の平和を守ってくださいね♪」


M61バルカン砲の引き金を引いた!!


刹那、再度蒼いスパークが空間を満たす。

轟音と共に俺達と奥の通路までの間に一直線の道が出来る。


そうだ、そうだな!!

俺は推しの平和を護る者!!

その一人にこうまで言われてはしょうがない!!

もう答えはこれしかないだろぉ!!!


「当然だ!!

推しに応えるのが、オタクってもんだろぉがぁあああ!!!!」


叫び、俺は瞬歩を発動する!!

風よりも早く、忌み子達の認識すら置き去りにして!!


そうして俺は包帯幹部が逃げ込んだ通路に飛び込むのであった。



「帰ったら、たくさん可愛がって差し上げますからね、ご主人様♪」


そんな白亜の声を聴きながら――――


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