2-17 致命傷
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足音は―――4人、いや5人か?
4人の足音は重く、1人の足音は静かだ。
その音が耳に届いたのか、邪神教徒はびくりと肩を震わせる。
その表情は恐怖に強張っているようにも見える。
「?」
こいつが逡巡していたのはこれが原因か?
「「「「あぁああ~~~」」」」
そして、そいつらは通路の奥から現れた。
生気を失った表情、歩くのもおぼつかないその様は幽鬼の様。
明らかな普通の状態ではない。
だが、それよりも俺が気になったのはその背後。
異様なのは男達の背後から歩いてくる人間。
「そん‥‥‥な‥‥‥」
俺の口からかすれた声が漏れる。
俺は知っている、あれを知っている――――
そいつは顔を含めた体全体に薄汚れた包帯を巻き、その両手には弯曲したシミターを携えている。
体の凹凸から辛うじて分かる性別は女性。
その全身から不吉な気配をまき散らし、その立ち姿には一切の隙が無い。
明らかな強者。
間違いなく邪神教団幹部。
彼女は……
「がはっ!?!?」
俺は全身を視界に入れた瞬間、血反吐を吐き片膝を着く。
「ご主人様!?」
その俺の明らかな異常に白亜が狼狽の声を上げる。
だが、俺はそれに答えることも出来ない。
なんてことだ、これはかなり深刻なダメージだ。
「そんな!?攻撃の兆候すら無かったのに?」
白亜が俺を後ろに庇いつつ戦慄の声を上げている。
ディオスクロイを向け牽制し、険しい視線で包帯幹部をねめつけている。
そうだろう、そうだろう、俺も戦慄している。
俺もまさか敵があんな隠し玉を用意しているなんて思っていなかった。
こんなことなら雑魚共を倒した時点で撤退しておくべきだったんだ!!
「っく!!」
白亜はそんな俺を見て、歯噛みしている。
俺がこんな有様では撤退も難しいと判断したのだろう。
銃を構える手が強張っている。
一方の包帯幹部は、
そんな俺達を見て――――
「え?」
少し高めの声で動揺の声を上げた。
「「「「‥‥‥」」」」
数秒の沈黙。
いや、うん、そうだよね。そういうリアクションになるよね。
一方の白亜は、俺と包帯幹部を見比べると、何か悟ったような表情を浮かべた。
そしてそのまま表情を消して問いかけて来る。
「ご主人様‥‥‥‥攻撃を受けてらっしゃったんですよね??」
俺は未だにせり上がる血反吐を必死に堪え白亜に答える。
くそ、答えるだけでも体の芯に響く。
「そうだ、致命的な攻撃だ‥‥‥」
だが、俺の身体どころか服にさえ一切の損傷はない。
それでも今も俺はダメージを負い続けている。
「それは肉体にですか、それとも精神にですか??」
「決まっている、俺の、精神だ‥‥‥」
段々と白亜の声が剣呑なものになっていく。
けれど俺はダメージが深すぎてそれにも気づかない。
「どういったこうげ攻撃で??」
「それは、っぐ、ちゅう‥‥‥」
白亜の背後では包帯幹部どころか生気を失っている幽鬼達でさえ話の行く末を見守っている。
ダメだ、これ以上はやめてくれ!!
だが、白亜は追及の手を緩めてくれない。
「ちゅう??」
ああ、言葉にするもの憚られる。憚られるが、戦場での状況確認は必須だ。
白亜もそれが分かっているからこんなにも問い詰めて来るのだろう。
故に俺は決死の覚悟で口を開く!
「中二病ハートへの攻撃に決まってんだろーが!!!!」
俺の叫びが空間に強く強く響く!!
そう、それは俺の黒歴史!!
全身に包帯を巻き、邪眼のポーズを練習し、腕に巻いた包帯に黒い炎を纏えないかと試行錯誤した日々。
奴の姿は正に俺が封印した当時の姿そのままだったのだ!!
それは俺の心の傷!
致命傷!!
「くそっ、敵はここまで計算していたというのか。
だとしたらなんと恐ろしい!!
しかも、あの姿は俺の中期中二病時代のもの!!
であればあそこからまだ変身を2回残しているはずだ!!」
白亜の眼が座る。
美しい銀髪がゆらゆらと揺らめいている。
白亜が静かにディオスクロイを構える。
そうだよな、白亜も恐ろしいよな!?
「ダメだ、そんなものは耐えられるはずがない!!
俺はもうここでリタイヤだ。
本当は最後まで白亜のそばで戦ってやりたかったのに!!
ああ、白亜、お前だけでもなんとか――――」
バヒュン!!
刹那、蒼の極光が俺の股をかすめ、地面に食い込んだ。
「「「「「・・・・・・」」」」」
再びの沈黙。
けれど先ほどとは違い、周囲には冷たい怒気が満ちている。
その怒気は目の前に立つ銀色の鬼から放出されていて―――――
凍り付いた空気と重力が何倍にも増したかのような重圧の中、俺と白亜の眼が合う。
それは今までに見たことも無いような冷気を帯びた視線。
俺はそれを感じ、数秒黙考。
そして、先ほどのダメージが嘘のようにすっくと身体を起こす。
ああ、分かっている、分かっているぜ白亜!
そして、朧桜を構え、邪神教徒達に向き直る。とても真剣な顔で――――
「白亜、行くぞ!!」
絶対零度の圧力と、後でお仕置きですよ(怒)という副音声を背に、俺は邪神教幹部との戦いに身を投じるのであった。




