2-9 ナイアさんの秘密道具
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それから数分後。
額を押さえ、床を転がり回っている俺達を見て、ナイアさんはしばらく狂ったように笑っていたが、徐々にその笑いを収めるとニヤニヤしながら俺達を見て来た。
俺はその顔に無性にイラっときて、思わず右手を握る。
くそぅ、自分が推しのライブに行けなかったのに、すげー楽しかったってどや顔でマウント取られるぐらいムカつく!!
でも、ダメだ俺、耐えるんだ!!
今ナイアさんを相手にしても絶対に勝てない。
寧ろこちらが地獄のような思いをすることになるのは目に見えている。
「まったく、本当に面白い小僧だね。
邪気丸の事といい、今回の事といい。
ああ、気に入ったよ。まったく、ほんとうに。
あひゃ、あひゃ、あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
そこでナイアさんは先ほどの光景を思い出したのか再び爆笑し出した。
ふざけんなよ!!
こっちはどれほどの思いで止めに行ったのか知らずによぉ。
そんなだからいろんな所で敵を作ってんだよ!!
バーカバーカ、この性格破綻者!!享楽主義!!
俺が憮然とした顔をしていると、ナイアさんは顔を上げ、
「あぁ笑った笑った。いや、本当にいいものを見せてもらったよ。
まぁ、なんだ。楽しませてもらった礼に儂からひとつアドバイスをしておくかね」
その瞳に面白い実験動物を見るような光を宿らせ、ノエルを指さす。
「その子によく注意を払ってやることだ。
小僧の大事な物を護りたければね、あひゃひゃひゃ」
そう言って、薄気味悪い笑みをさらに深くする。
それは根源激な恐怖を呼び起こすような笑み。
先ほどまでの様子からつい気が抜けていたが、やはりこの人の底には狂気が渦巻いている。
「後はそうさな、ほれこれをやろう」
そんなナイアさんはさらに何かが入った小袋を取り出すと、俺の手に握らせて来た。
「何それ?」
ノエルが不思議そうな目をナイアさんに向けている。
「これはまぁ、楽しませてくれたお礼だよ。ひゃひゃひゃ」
そんなノエルをよそに、俺はその小袋の中身を見て驚愕する。
何でこんなものをナイアさんが持っている!?
「さぁ、そろそろ出ていっておくれ。
あんたらみたいなのが居たら商売の邪魔だよ、ひゃひゃひゃ」
「あっ、ちょっと――――」
最後にもらった小袋の事を聞きただしたくて声をかけるが、ナイアさんは聞こえないとばかりに近くにあった杖で俺達の背中をつつく。
そうして俺達は、ナイアさんに追い出される様にして『ナイアの工房』を後にしたのだった。
◇◇
それから少し後、刀祢とノエルが去った『ナイアの工房』。
その中には一人の美女が居た。
濡羽色の髪に、漆黒の瞳。
それは全てをぐちゃぐちゃに混ぜ合わせた混沌の様に深く、暗い黒。
その美女は恍惚に歪んだ表情で自らをかき抱いている。
その様は一枚の宗教画の様に荘厳であり、この世の悪意を全て煮詰めたように醜悪だっただった。
美女は笑う。昏く昏く昏く―――――
「あれが邪神の愛し子とイレギュラーか。
まったく、合縁奇縁とはこのことだ。
まさか二人の運命がこうも交差しているなんてね」
美女は笑う。クルクルクルと楽しそうに――――
「ああ、でもいいね、いいよ、とてもいい。
それでこそこの世界に来たかいがあったってものだ。
彼らは僕にどんな物語を見せてくれるのかな?」
誰もいない店内で美女は笑う。ドロドロドロと粘着質な笑みで――――
「ねぇ、刀祢君、刀祢君、刀祢君、刀祢君、刀祢君、刀祢君、刀祢君、刀祢君、刀祢君、刀祢君、刀祢君、刀祢君、刀祢君、刀祢君!!
あは、あはは、あはははははははっハハハハははははは――――――――」
笑う、笑う、笑う、嗤う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、嗤う、嗤う、嗤う、嗤う
高らかに、愛おし気に、狂気的に、まるで長年探していた恋人に出会えた喜びを表すように――――
そうして店内は混沌の闇に沈んでいくのであった―――――




