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2-6 邪神教団 第8席

 さて、ここで突然だが、神代刀祢が〈狂楽〉へと至った経緯について復習してみよう。


先に語った通り、SAHにおいて主人公に敗れた後の神代刀祢は、とある教団に入りびたりそこで〈狂楽〉へと堕ちた。

そして、市民を虐殺し、月夜を生贄にし、あまつさえ瑚兎すらその凶刃にかけるのだ。

それはひとえに、神代刀祢のプライドの高さと元々の残虐性によるもの。

その行為に救いようはない――――


だが、ここで考えてみて欲しい。


いくら堕ちる素質があったからと言って、一学生がそんなに簡単に危険な教団と接触することが出来るものだろうか?

通常であれば、ただ腐っていくだけで終わるのではないだろうか?

そう、普通であれば――――


しかし、SAHにおいて神代刀祢に関してはそれが出来てしまった。

いや、それができる者が“近くに居た”という方が正しいだろう。

あるいはそれこそが神代刀祢にとって最大の不幸だったのかもしれない。


そんな不幸が


神代刀祢が〈狂楽〉へと堕ちた原因の一つが――――


今、俺の目の前に居る――――


邪神を崇拝し、剣神を憎悪し、邪神の復活を望む、この世界最悪にして最凶の宗教組織。


その幹部。

神代刀祢の不幸の第一歩目。


『邪神教団 第8席 不死者(イモータル)阿賀稚日菜(あがちひな)


その人だった。



俺はSAHでの彼女の立ち位置を思い出し、警戒を強める。

だが、それを悟らせてしまうのはまずい。


仮に彼女がSAHと同じような行動をとろうとした時、アドバンテージを取れなくなると、下手したらそれだけで詰む可能性がある。

それに、活発そうなその印象に違わず活動的な彼女は、その顔の広さから情報取集の面でも優れている。

下手な行動を起こして、それに気づかれたら目も当てられない。

現状では、このままクラスメイトとしてつかず離れずの位置をキープするのが妥当だろう。


俺は、状況と今後の方針を数秒で整理し、平静を心掛けながら彼女を見る。

一方その横では、ノエルと阿賀稚が女子トークを弾ませている。

その様子だけを見れば、本当にどこにでもいる女子生徒達だ。


まあ、実際は二人とも化け物みたいなやつらなんだけどな。


ノエルは言わずもがな。

阿賀稚のステータスも実は化け物じみている。


いや、邪神教団の第8席を任されるぐらいだからこの世界有数の実力者ではあるんだが。

ではどれぐらいの強さかと言うと、第二都市に来た主人公パーティーを全員相手にしてしばらく持ちこたえられる程のものだ。


SAHの中で、主人公が第二都市に訪れる時の平均武技レベルおよび神気レベルはいずれも5。

それを複数人相手とか、それだけでふざけた強さだ。


SAHでは最期、固有スキルを発動させずに主人公に押し切られそのまま退場していったが、それでもその戦闘力は邪神教団幹部に相応しいものだった。


そんな彼女が中央神殿に居る。

そりゃぁ疑うなって方が無理なもんでしょ?


「んで、阿賀稚はこんなところで何してるんだ?」


「あはは~やだな刀祢っち。ここ教会だよ?

ここでやることなんて決まってんじゃん。

神様に、お願い、僕を強くして~ってお祈りしてたんだよ」


その答えを聞いて思わず俺は渋面を作りそうになる。


まったく、こいつはいけしゃあしゃあと。

既に強い上に邪神教幹部だぞ!?

そんな奴がその程度の理由で、最大の敵である剣神のところに来るわけが無いだろう?


であればこいつの目的は、


やはり“あれ”しかないだろう―――


俺は自身の中で阿賀稚への警戒レベルを上げる。

こいつが動くならもしかしたらあのイベントが早まるかもしれない。


「それにしてはずいぶんに熱心に祈っていたようだったが?」


「そりゃね、これから授業で荒野実習なんかも始まってくるし。

僕だって死にたくないからね」


そう言って阿賀稚は『陽天』の方を見やる。

その顔には眩しいものを見るような、叶わない何かを諦めるようなそんな表情が浮かんでいる。


だが、それも一瞬。

また、人懐っこい笑顔でこちらを見ると、


「ってか、それよりもノエルっちと刀祢っちだよ!!

何々?二人ってやっぱりそうゆ~関係なの?」


左手の指で輪っかを作り、そこに右手の中指を出し入れしだしたではないか!?


この子は公衆の面前、しかも教会で何をやり出してるの!?

こら、阿賀稚さん、止めなさい!!

しかも動きを早くするんじゃありません!!

あ、こら早すぎる!!

あなた嫁入り前の娘さんでしょう??

それじゃ完全にセクハラオヤジじゃねーか!!


その意味が分からなかったのか、隣ではきょとんとした表情のノエルが俺の方を見上げている。

俺は居たたまれなくなって顔を真っ赤にしながら目線を逸らす。


そうして真っ赤になった俺とよくわかっていない顔をするノエルを見比べた阿賀稚は、


「刀祢っちのスケベ~」


そう言ってニヒヒと笑うのだった。

まったく、こんな雰囲気でシリアスなんか作れるかよ。


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