2-5 神剣『陽天』
そんなこんながあっての都市中央。
そこには荘厳という言葉では表しきれないほどの、豪奢で、けれど清廉な神殿が鎮座していた。
それは前世でいう所のヨーロッパの某大聖堂の様。
天を突くほどの3本の尖塔は、それぞれ3本の神剣に対応している。
第二都市では3本の中央、『陽天』の塔に繋がる形で、これまた流麗なステンドグラスが光を反射する礼拝堂が、訪れる者にその威容を誇っている。
そのステンドグラスの下、礼拝堂の入り口には高さ20mほどの大扉。
開け放たれた大扉からは多くの信者が出入りをしている。
俺もノエルと一緒に、入り口の信者の男性に挨拶をして大扉の中に入る。
そして――――
一歩踏み込んだ瞬間、空気が変わった。
満ちる神気と祈り。
浄化された空気と光。
大扉の向こうには、左右に整然と並べられた木製の長椅子。
左右の光とりのステンドグラスからは七色の光が降り注ぎ、空気を乱反射して礼拝堂内部を彩っている。
中央には奥まで続く石畳が敷かれ、
さらにその先、
そこに、
それは、
あった――――
天まで伸びる円柱状の光のベールの結界。
中央に技術の粋を詰め込んだかの様な彫刻が刻まれた白亜の台座。
そして、その上――――
柄を上にした形で台座の上に浮遊する一振りの剣。
神剣『陽天』
「きれい‥‥‥だね‥‥‥」
隣のノエルからそんな声が漏れる。
その剣は空を思わせる青色の柄に、装飾があしらわれた黄金に輝く剣身を持った剣。
見る者に畏怖と共に安心感を与えるそれは、まるで全てを焼き尽くす苛烈な炎のようでも、体を優しく温め太陽のようでもあった。
まさに神剣の名にふさわしい一振り。
今でこそ中央神殿には何十回も通いその威容に慣れて来はしたが、正直その剣を最初に見た時の俺も同じ反応をしたものだ。
こればかりはSAHで見るのと、本物を見るのでは圧倒的に違うよな‥‥‥。
そんなことを思いながら、俺達は、しばらくそのまま神剣を眺め続けた。
それからどれぐらいの時間が経った頃だろう。
神剣から視線を外したところで俺は、膝を着き光のベールの前で熱心に祈りを捧げる同年代の女の子に気が付いた。
あまりに熱心な後ろ姿と見慣れた服装。
それに誘導される様に、俺はゆっくりとその少女に視線を移す。
そう、少女が纏っているのは白筑学園の制服。
後ろ姿から分かるのは、少し癖のある肩口で切りそろえられ濃い茶色の髪と、小麦色の肌。
首筋から見えるその肌は健康的に日焼けしており、その姿だけでも彼女の活発な性格が見える様だ。
何処か見覚えのある、いや、確実に見覚えのあるその姿――――
それを認識した途端、俺の意識が一気に切り替わる。
先ほどのぼんやりとしたものから、警戒を含むものに!
何故彼女がここに?
いや、彼女がここに居ること自体はあり得ることだ、しかし――――
そこまで考えたところで隣のノエルもその少女に気付いたのか、声を上げる。
「あっ、日菜ちゃん!!」
教会に響くその明るい声に、少女は一瞬肩をビクリと震わせる。
そのままこちらを振り返り、ゆっくりと開く瞳。
そして、こちらの姿を視認すると、
「ノエルっちに刀祢っちじゃん!
こんなところで何してるの??」
そう言って、快活な笑顔を向けて来るのだった。
神代刀祢の最大の罪
その、元凶が―――――




