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2-4 ノエルとデート

ガクガクガクブルブルブルブル‥‥‥


忙しない振動音が室内を満たしている。


ガクガクガクブルブルブルブル‥‥‥


ここはとあるビルの一室。


ガクガクガクブルブルブルブル‥‥‥


俺が座るハート形のベッドの上には『YES』と書かれた同じくハート形の枕が二つ。


「‥‥‥どうして」


ガクガクガクブルブルブルブル‥‥‥


そして目の前には首に革の首輪を巻き、胸部と臀部のみをふわふわの毛で出来た肌着で覆ったノエル。


ガクガクガクブルブルブルブル‥‥‥


「どうして‥‥‥こんなことになった」


俺は全身を恐怖で震わせながら信じられない思いで自らの手の中をみやる。


ガクガクガクブルブルブルブル‥‥‥


「なんでこんなことになっちまったんだよぉーーーーーーー!!」


そこにはノエルの首輪から繋がったリードがしっかりと握られていたのであった―――――



◇◇◇



それは数時間前の事、俺とノエルは買い物をするために街に出ていた。


何故か?


それは、前回邪神との戦闘後、助けられたお礼を提案したら、ノエルからお出かけのお誘いがあったからだ。


姫園宅から自宅に帰る際、


「お出かけ?」


「そうだよ、お出かけ」


「二人で?」


「うん、二人で!

ダメ‥‥‥かな??」


上目づかいで見つめて来るノエル。

そのしおらしいノエルのセリフを聞いた時、俺は思ったよ。

男女二人でのお出かけ。それすなわちデートだと!!


前世も含めて数十年、一度も関わり合いの無かった単語。

本来であればそれは気球にのって空高くまで舞い上がるぐらいのイベント。

俺が求めて止まなかったもの――――


その、はずなの、だが‥‥‥


ノエルとのデート――――


その響きに何故か背筋に嫌な汗が浮かび、危機感知がぶっ壊れるぐらいのアラームを鳴らしている。

正直この誘いに乗ってはいけないと本能が叫んでいる。


だが、ノエルに助けられたのは事実。

その恩に応えないのは剣士としてもエロゲオタクとしてもダメだと思う。


そうして俺は、諦念と共にノエルの提案を受け入れた。


くるぅ~、きっとくるぅ~~~、きっとくるぅ~~~


何処からか流れる、そんな歌を聞きながら―――――



それから時が流れ学園開始後最初の日曜日、俺とノエルと街に出ていた。


「それで今日はどこを回りたいんだ?」


「う~んと、そうだなぁ。

私、刀祢ちゃんが普段言っているお店とか行ってみたい」


そう言って目をキラキラさせるノエル。

その腕は当然俺の右腕に絡みついている。

今日のノエルは、春らしいワンピースに薄手のカーディガンを羽織っている。

いつもよりも女の子らしいその姿とふわりと広がる桜の様な香りに思わずドキリとする。


そう、するのだが、それよりも俺は、今回も腕に伝わる感触が気になってしまうのだ。

だって、毎回のことながら、感触が柔らかすぎるんだもの!!

何でこいつの中にはブラの概念が無いんだろうか!?


それは理性を溶かすから、やめなさい!!

今度から‥‥‥いや、今度の今度のそのまた今度ぐらいからはやめるよう彩乃さんに教育をお願いしよう!!


しかし、


「行っている店か‥‥‥」


ノープランで来てしまったが、普段行っている店というのも難しい。

なにせ俺がこの世界に来てからまだ数日しか経っていない。

その間に訪れたのは学校と姫園邸、あとは『ナイアの工房』と教会ぐらいか?


「そうすると、店じゃないけど教会とかかなぁ?街の中央の」


俺はノエルに提案してみる。


「中央神殿のこと?

珍しいね、そんなところ。刀祢ちゃんってそんなに信心深かったっけ?」


するとノエルが不思議そうに小首をかしげる。

確かにそれはそうだろう。

都市内に暮らしていても、熱心な信徒でなければ中央神殿に足を運ぶのなんか正月とクリスマスぐらいだ。

神気の盃に関してもレベル0から1に上げる奴なんて普通は居ないからなぁ。


「ちょっと違うな。

どちらかって言うと、せっかく学園に入ったし、神気をもっと身近に感じられるようになっておきたいってところだ」


だが、例外はある。

それが学園の生徒や荒野で戦う剣士だ。

彼ら彼女らの場合、教会に行くのはもっと合理的な理由による。


それは何か?

ずばり、己の神気と向き合うためである。


第二都市の中央神殿には剣神から与えられたという神剣『陽天(ようてん)』が祀られている。

それは神が与えた奇跡。

人の可能性を見出し、邪神の眷属に抗しうる力を与える聖遺物。


そこに後光に心身を浸すことは、己の神気とより深く対話することと同義だ

つまり、自らの神気を高めることに繋がる。


それに教会では『神水』も配布している。

高レベルの神気使いには不要でも、まだ未熟な学園生には神水は非常に貴重な戦力になる。


であれば例え信仰心が薄くても学園生や剣士が中央神殿に赴くのは当然といえよう。


「そう言えば私、あんまり神殿には行ったことが無いんだよね。

でもせっかくだし行ってみようか。

それに刀祢ちゃんとの結婚式の下見にもなるしね」


突然ノエルが爆弾をぶっこんだと思ったら、頬に両手を当て、顔を赤くしている。


「私、結婚式は神前式と人前式と両方やりたいんだ。

それで、皆の前で刀祢ちゃんと永遠を約束するキスをするの。

ブーケ投げでは月夜ちゃんの方に投げてあげるのもいいかもしれないね。

それでそれで―――」


やばい、眼の中にハートマークが浮かべノエルさんがトリップしてらっしゃる。

しかも周囲が『若いっていいわね~』って目で生暖かい視線を送ってきている。


止めてノエル!!俺、ノエルと結婚する気はないからね!!


「あー、ノエルさん?

俺、まだ結婚相手とかは決めてな‥‥‥」


ため息をついた俺は、無駄だと思いつつノエルを止めようと口を開く。

けれど、俺がそのセリフを言い終える前に――――


カクン


ノエルの首が曲がり、ハイライトが消えた目でじっとこちらを見つめてきた。

その瞳には濃いピンクの闇。


「ひっ!!」


思わずその目に後退る。怖い、怖いよノエルさん。


「何、刀祢ちゃん、私とのことは遊びだったの‥‥‥」


右腕につかまったノエルの腕の力が一気に増す。

俺の腕からミシミシと嫌な音が聞こえる。


痛い、痛いですノエルさん!

マルドゥークで切られた時より痛いです!!


「刀祢ちゃん、私悲しいよ。刀祢ちゃんがそんなこと言うなんて‥‥‥

ああ、そうか、刀祢ちゃんもまだ遊びたい盛りなんだね、そうなんだね‥‥‥

じゃあ、しょうがない。私が解決してあげるね」


ノエルはハイライトが消えた目でニッコリと笑みの形を作ると、俺の下腹部を指さして、


「ねえ、刀祢ちゃん、チョキンってして、いい???」


キュ~~~~~

瞬間下半身が一気に縮み上がる。

そのままお腹の中まで引っ込んでしまいそうだ。


ダメだ、抵抗したら終わる!!

童貞のまま死んでしまう!!


コンマ数秒でそれを理解した俺は、


「サーイエスマム!! I want to get married soooooooooooooon!!!」


転生してからの最速の速さで、敬礼をするのだった。

群衆の中に紛れるノエルへの殺気に気付かないまま―――――

今日は1話分が短めなので2回投稿します。2回目は夕方~夜にかけての予定。

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