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1-20 彩乃クッキング

その後、ノエルにズボンを半分ほど下ろされたところで理性を取り戻した俺は必死の抵抗を試みた。

その際にも彩乃さんが「めっ」をしてきそうになったが、理性が溶かされる前に何とか、


「せめて自分でやります!!」


そう言って、オムツを受け取った。

頑張った、頑張ったよ俺!!


そして、ベッドの中で着替えるふりをして何とかごまかし、現在は姫園宅で食卓を囲んでいるのである。


「刀祢ちゃん、お腹すいたでしょ?

ママの料理は絶品なんだからね~」


目の前のノエルがとても嬉しそうな顔で対面に座っている。

対する俺は、その視線をひたすらに泳がせている。

何故か?

その答えは台所にある。


まさか、先ほどの試練を突破した俺に、さらなる凶悪な罠が待ち受けていようとは・・・・・・


思わず運命を呪いたくなってしまうが、それでも視線がキッチンの方に向いてしまうのを止められない。


見れば、そこでは現在進行形で彩乃さんが料理を作っていた。

鼻歌を歌いながらエプロンをして料理を作るその姿はとても可愛らしい。

可愛らしいのだが・・・・・


俺は鼻頭が熱くなってきたのを感じて鼻を押さえる。

しかし、それも無理ないことだろう。


何故なら―――――


台所の彩乃さんは、童貞を殺すセーターの上にエプロンを着用しているのだから!!


あれはヤバい、邪神のマルドゥークよりヤバい!!

そのあまりの破壊力に鼻から赤いパッションが溢れ出してしまいそうだ。


目を逸らそうとしても目がキッチンに吸い寄せられてしまう!


それは吸引力の変わらない絶対の礼装!

その吸引力はもはやブラックホールすら及ばない!!

神様、世界に素晴らしい贈り物をありがとう!!


「ねえ、刀祢ちゃん聞いてる?ねぇってばぁ」


そんな俺を前に、ノエルが俺の肩を揺らすがそんなもの、あの彩乃さんの前には無意味である。

いくらノエルがミニスカナースの姿のままでも、前のめりで襟首から谷間が見えていようとも、彩乃さんのレジェンダリー装備には勝てない!!

俺は家庭的な女性が好きなのだ!


そうして俺は、彩乃さんの料理が終わるまでずっと台所をちらちらと見やるのだった。



どれほどの時間が経った頃だろう。

気付けば目の前には大量の料理が並び、おいしそうな匂いが鼻孔をくすぐっている。


俺の斜め向かいに座った彩乃さんも、エプロンを外して卓を囲んでいた。

どうやら俺は、あまりの衝撃に意識を飛ばしてしまっていたようだ。


「おまたせ、刀祢君、それじゃあ頂きましょうか」

「私、もうお腹ペコペコだよぉ~」


そんな俺をよそに、二人は待ちきれないとばかりに箸をもつ。

俺のお腹もそれにつられ、ぐ~~となる。

そう言えば、狩りに夢中になっていて、朝からまともな食事を摂っていなかった。

そう思い、机に並んだ料理を眺める。


と、そこで俺の動きが止まる――――


俺の視線が捉えたもの――――


それは、紫色だったり不定形な何かだったのだ。


息を呑む俺。

しかし、そんな料理を二人はおいしそうにパクパクと食べている。


え、これ食べられるの?

見た目がアレなだけで実は美味しいっていうエロゲあるあるな、あのパターン?

それともSAHの世界ではこれが一般的なのか?

いやでも、少なくとも昨日まで家で出ていた料理は普通だったぞ?

じゃあ、これは姫園家特有の料理か?


と、そこで俺の様子に気付いたのか


「あら、刀祢君には気に入ってもらえなかったのかしら・・・・・・」


彩乃さんがとても寂しそうな顔をする。

その悲し気な様子に俺の胸の奥がぎゅーっと締め付けられる。


「あ、ち、ちが・・・・・」


思わず否定の言葉を重ねようとするが、視線の端で紫色の物体が動いたのを見て俺の口が閉じられる。

え!?いま動いたよね??


と、そこへノエルが我が意を得たりとばかりに助け船を出す。


「違うよママ。刀祢ちゃんは疲れてるだけだよ」


ナイスだノエル!

お前もやればできるじゃないか!!

そう、俺は疲れてるんだ。

だから、今は普通で消化に優しいものが食べたいんだ。


そして、ノエルは俺の方に満面の笑顔で向き直ると、


「きっと、自分では食べられないから私達に食べさせて欲しいんじゃないかな?」


そんなことを言いやがった。


What’s!?!?

なぜそうなったぁ???

助け船じゃなくて、爆弾付きの船でむかえにくるんじゃねぇ!!??


だが、それを聞いた彩乃さんは雰囲気を嬉しそうなものに一変させる。

そして、スプーンをとるとその紫色の物体を掬いあげた。


「そうなの、それじゃあ刀祢君、遠慮しないで

はい、あーーーん」


そこにはひと掬いの異形の物体。

だが、決して俺には救いをもたらさないひと掬い。


ダメだ、現実逃避しても状況は変わらない。


近づく異形、嬉しそうな彩乃さん、前かがみになって揺れる双丘。


それらを前に、絶望に支配された俺の口が開きかけたその時、


周囲の時間が止まった――――


【1】大人しく彩乃さんからのあーーんを受け入れる

【2】ちゃぶ台をひっくり返して「こんなもの食えるか」と叫ぶ

【3】「その料理も美味しそうだけど俺は彩乃さんが食べたいな」と彩乃さんを引き寄せる


・・・・・・はっ!?!?!


あまりにも死が直前に迫っていたため意識が飛んでいた。

危ない、危ない。

なんて恐ろしい食べ物だ。食べ物か?食べ物じゃないだろ!


まあ、何にせよ若干の猶予が出来た。

そうして俺は改めて選択肢を見つめる。


『まず【2】は論外だろ。

いかに紫色の不定形の物体だとは言え、それは彩乃さんが作ってくれたものだ。

エロゲオタクとしても男としても、これ以上彩乃さんの悲しむ姿は見たくない!!

であれば【1】か【3】だが・・・・・・

正直なところ魅力的なのは【3】だ。

そう【3】なのだが、これはうん、なんというか、そう、え~~と、うん、童貞にはちょっとハードルが高すぎやしませんかね?

こんなセリフ、エロゲの中では噛ませ犬役が言うか、完堕ちしたヒロインに対して主人公が言うかの二択だろう。

あれ、でも今の俺、SAHでは噛ませ犬役だからもしかして有り?

いや、このセリフを言った瞬間、自分の中の何かが崩壊しそうな気がする。

それが理性なのか、プライドなのかは分からが・・・・・・。


それに、今回の選択肢、実は最初から俺の答えは決まっている。

それは【1】だ!!


何故かって?

そりゃ、俺だってこんな紫色の不定形な何かを食べるのは怖いよ!!

けどな、彩乃さんがあんな一生懸命、しかもあんな格好で作ってくれた食事なんだぜ?

それを無駄にする?

それこそエロゲオタクとしてあり得ない!

例えこれが童貞を殺すセーターの効果だったのだとしても、俺は逃げない!!

こんな料理、皿ごと喰らってこそ漢だろ!!』


そして俺は大きく息を吸う。

もしかしたらもう二度と息を吸うことすら出来ないかもと思いながら・・・・・・。


『俺の選択は【1】だ!!!』


そうして、再び時が動き出す。

その時には既に彩乃さんのスプーンは俺の唇のすぐ傍まで迫っており――――


ぱくり!!


俺は、ギュッと目をつむりながら、その謎の紫色の不定形なものを口に含んだ。


そうして、

最初に、

感じたのは

混沌。

次にビッグバンと拡張する宇宙。

そして宇宙を跳び回る色とりどりのエロゲのCD達――――


その時俺は全てを理解した。

運命、生命の神秘、宇宙の無限の法則。


ああ、俺の中で何かが生まれ落ちる。

おぎゃあ。おぎゃあ。おぎゃあ。


その声が響く度に、次第にマーブル色に染められる世界、世界、世界―――――




「―――ちゃん、とーーーーやちゃーーーーん」


はっ!?!?!


俺はいま何をしていた。

何か途方もなくヤバいものを見ていたような―――

うっ、ダメだ思い出せない、いや思い出しちゃいけない。

あれは見てはいけないものだ、人間が触れてはいけないものがあそこには居た!


目の前でノエルと彩乃さんが心配そうに俺を見ている。

その二人の顔に思わず涙が零れる。


「よかった、戻って来れた・・・・・・」


思わず口から零れ落ちる言葉。

なんてことだ、まさかあそこまでの凶器だったなんて。

体がガクガク震えるのを止められない。


「大丈夫、刀祢君。無理はしなくていいのよ?」


その様子を見て彩乃さんがそっと手を握ってくれる。

温かい。

その温もりに心まで温められる。

だが、俺はその手をそっとどかす。


そう、今はそれに甘えてばかりもいられない!!


俺は立ち上がると、今度こそ自分でスプーンを持ち、紫色の不定形な凶器に向き直る。

そして悲壮な顔でそれを眺める。

するとその瞬間、俺を馬鹿にするように不定形なそれがぶるりと震えた。


『やめとけ、お前には俺は早すぎたんだ。

家に帰ってお寝んねしてなよ、チェリーボーイ』


俺には不定形のそれが、そう言っている気がした。


上等だぁ!!


「はっ、舐めるなよ、たかが紫色のスライムみたいな存在が!

今日、俺が、その全てを食らいつくしてやるぜ!!!」


俺はそいつを大きく掬うと、そのまま口の中に放り込んだのだった。



正直、それからのことはよく覚えていない――――

とにかく壮絶な戦いだった――――


そして最後、紫色のあいつが、


『ナイスファイトだったぜ!!』


そう言って口の中で震えた気がした。

それだけを覚えている。

俺と紫色のあいつは最期の最後で分かり合えたんだ。


そうして俺は意識を手放し―――――




その後、俺が意識を取り戻したのは、大慌てで姫園邸に突撃してきた月夜が、俺に人工呼吸をしようとした、その時だったとさ。


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