第4話・魔法少女のお仕事、事後処理
第4話・魔法少女のお仕事、事後処理
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「……もう、大丈夫そうだ」
車中から見守っていた雪菜さん――いや、魔法少女・白雪の戦いは、想定外の事故もなく終わった。
ただ、最後に叫んだあのセリフ。
あれは昔、一緒に遊んだRPGゲームの魔王の名台詞だ。まさか今でも覚えているとは。
魔力は精神と強く結びついている。
だいたい魔力量が半分を切るあたりから精神に影響が出始める。
魔力のおかげで身体能力は強化される一方、魔力の低下は精神疲労として反動が来る。
普段は小隊で風紀委員みたいに真面目な彼女が、あんな大胆なことを言ったのは……まあ、今回魔力低下の影響、恐らく「興奮」状態になっていたのだろう。
「魔法少女・白雪。変身を解除しないで、そこの安全な場所で待っていて警戒ください。すぐに合流する」
『……はい。わかりました。あと、その……さっきのセリフは魔力使いすぎたせいなので、忘れてください』
「……はい」
雪菜さんは恥ずかしがっているが、今回の件は明らかに異常事例だ。
おそらく記録は対策局内部で細かく検証されるだろう。
正直、いま彼女に真実を伝えないほうがいい。
とりあえず任務完了を事後処理部隊へ連絡し、異常性から調査員の派遣も要求する。
エンジンをかけ、廃棄工場へ向かった。
*
現場に到着すると、先ほどの音波攻撃と戦闘の余波で建物はさらに崩れそうに見えた。
車を降りた瞬間――
白雪に変身している状態で雪菜さんが、まるで瞬間移動のように目の前へ現れ、反応する間もなく抱きしめられた。力強く、完全に動けない。
「お兄さん!わたし、完璧に任務を達成しました!褒めてください!」
「うわっ、ちょっと待って!こんなところで魔法使う必要ないだろう!?落ち着け落ち着け。いまのキミは魔力低下でテンション上がってるだけだよ。ほら、深呼吸して」
雪菜さんは顔をオレの胸に埋めているので表情は見えないが……
興奮と恥ずかしさがごちゃ混ぜになっているせいか、耳まで真っ赤になっている。
「あのセリフ、昔のゲームのやつだろ?よく覚えてたな」
「忘れるわけ、ない……あれは、大切な……わたしたちの記憶だから……。だから……頭、撫でて……」
「はいはい。一人で任務を最後までやり遂げました、偉い偉い~」
精神安定のためにも、そっと頭をなで続ける。
……
しばらくすると、抱きしめる力がゆるみ、ようやく冷静さを取り戻したのか、雪菜さんはオレから離れた。
「もう平気?」
「うん……さっきは変なところ見せてごめん。もう大丈夫」
強い意志で感情を整えた彼女と、現場の調査を始める。
「……これは、やっぱり変だ」
「どうした?」
廃工場の地面に、赤い粒のようなものが一面に散らばっている。
オレはそのひとつを拾って観察する。
小型の魔石よりもさらに細かく、まるで紅い砂だ。
つまり――目の前に広がる赤い粒は、全部「魔石」である。
その瞬間、ひとつの推測が浮かぶ。
「……あの魔物の群れ、全部で一つだったんじゃないか?分身体の原理は元の魔石を分割した、あれ全は本体。おそらく、あの音波攻撃こそが本来の『魔法』……でも、どうして」
「なるほど……だからあんなに脆かったんだ。数を増やした分、個体能力が下がったのね」
もし推測が正しいなら、この異常事例にはさらに深い謎があるということだ。
考察していると、複数の車両が到着し、あれは魔物対策局の武装員と専門家たち、次々と降りてくる。
リーダーらしき人物がこちらへ敬礼した。
「魔物討伐任務、お疲れさまです。魔法少女様、連絡員様。後の処理は我々にお任せください」
「了解しました。こちらは先に支部へ戻ります。その前に……これが先ほど発見した情報です」
オレと雪菜さんは、事前に得た発見と推測を共有した。
これでひとまず任務は完了だ。
「事後処理部隊も来たし、オレたちの仕事はここまでだな。白雪、今回の任務は終了。お疲れさま。異常事例だから報酬計算は少し遅くなるけど……危険度が高かった分、たぶん多めになると思う。支部へ戻ろう。車に乗っていた後、変身解除もいいよ」
「うん、帰ろう」
二人で車に乗り込み、支部へ向かった。




