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あの日、僕らは嫌いになった。  作者: ピッタちお


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6/7

あの日、僕らは…

「姉ちゃんが話したいって」


そのメッセージを見て、しばらくスマホを握ったまま動けなかった。

正直、怖かった。

もう終わったと思っていた。

二度と話すことなんてないと思っていた。

なのに、玲の弟から突然そんな連絡が来た。


「いいよ」


たった三文字を送るのに、何時間もかかった。

何を言われるんだろ。恐怖と期待が胸の中で渦巻いていた。


待ち合わせ場所は、昔よく遊んでいた近所の公園だった

夜八時。俺は少し早く着いて、ベンチに座っていた。

昔は何度も来た場所なのに、今日は妙に広く感じた。

しばらくして、遠くから人影が見えた。

玲だった。

「……あ、久しぶり」

「久しぶり……ここ座れば?」

「うん」

それだけの会話だった。

昔なら、会えば勝手に話が始まっていた。

でも今は、何を話せばいいのか分からない。

沈黙が続いた。

先に口を開いたのは玲だった。

「あの日、ごめんね」

「あの日?」

「……メッセージ無視してごめん」

その言葉を聞いて、あの日のことを思い出した。

俺が送ったメッセージ。

気持ちを切り替えるために自分の中でのケジメ的なもの。


『色々ごめん。何か嫌なことしたんだよねごめん。別れる時嫌だと返信しなくてごめん。僕はずっと好きだった。今までありがとう』


送ったことすら忘れていた。

「……俺も、ごめん」

「なんで煌が謝るの?」

「分かんない。でも、何かあったんだろうなって思ってたから」

玲は少し俯いた。

「私ね、煌に嫌われてると思ってた」

「え?」

「だって、私のこと色々言ってたでしょ?」

笑いながらも玲の目から涙がこぼれる。

「……何を?」

「愛想がないとか、暴力的とか」

頭が真っ白になった。

「違う。そんな意味で言ってない!」

「……え?」

俺はあの頃、友達に玲のことを話していた。

口下手なところ。あまり感情を表に出さないところ。

ゲームで負けると頭突きして悔しがるとこ。

全部、僕にとっては好きなところだった。

「俺は……そういうところが好きだって言ってた」

玲が顔を上げる。

「……嘘」

「嘘じゃないよ、好きだったんだよ。」

しばらく玲は黙っていた。

そして、小さく息を吐いた。

「そっか……はは。」

その顔を見て、ようやく分かった。

俺らはずっと、同じことをしていた。

好きだったのに。

傷つけたくなくて、傷つきたくなくて。

言葉にしなかった。聞かなかった。

そして離れた。

「私も聞いてほしいことあるの…」

「うん…ゆっくりでいいよ」

「私ね……告白したじゃん。罰ゲームじゃないよ」

「……そうだったんだね。」

「友達がね、私がずっと煌のこと好きなの知ってて。告白する勇気が出るようにって……」

玲は少し笑った。

「だから、罰ゲームみたいに言われたのかも」

僕は何も言えなかった。

あの日の告白は、嘘じゃなかった。

あの電話で聞いた、

「ずっと好きだったの」

その言葉も。

六年生の帰り道に言われた、

「いずれわかるよ」

という言葉も。

全部、本当だった。

「……なんで、あのとき言ってくれなかったの?」

「煌こそ」

「……」

「言ってくれなかったじゃん」

「……そうだね、怖かったのかも」

二人で少し笑った。

笑えるようになるまで、ずいぶん時間がかかった。

しばらくして、僕は空を見上げた。

「そういえばさ」

「ん?」

「ここで星見たことあったよね」

玲も空を見る。

「あったね」

「付き合ってすぐの七夕のあとだっけ」

「うん」

「初デートが星見るだけって、今考えるとすごいな」

「そうだったね、でも私は好きだったよ」

また少し笑った。

あの頃と同じ空だった。

でも、僕らはもうあの頃の僕らじゃない。

「ねえ、煌」

「ん?」

「もしさ……」

玲が少し迷ってから言った。

「もし、あの頃ちゃんと話せてたら、どうなってたかな」

僕は少し考えた。

「……分かんない」

「そっか」

「でも」

空を見上げたまま続ける。

「今と違う未来にはなってたのかも」

玲がこちらを見る。

「その未来がいいと思わないの??」

「もし、話せていたら誤解は解けてたかも、でもお互いに不信感は残って後味悪くなってたと思う」

「……そっか」

「だから、これでいいと思う」

玲はしばらく黙っていた。

そして、

「うん、そうだね。話せてよかった。」

と答えた。そして

「話す機会をくれてありがとう」

「いいよ。話を聞いてくれてありがとう」

「じゃあ私先帰るね」

「うん。またね」

玲の歩く背中を見ていた。もしかしたら横にいれた未来もあったかもだけど。

「ねえ、煌!」

玲が振り返る。

「今度は、ちゃんと誘ってよ!」

「何に?」

「……星見に行くの」

僕は少し笑った。

「分かった!」

「煌好きだったよ!」

「……俺も、好きだったよ」

今度は、ちゃんと話せる。

今度は、ちゃんと聞ける。

あの頃の僕らには、それができなかった。

だから僕は、もう一度だけ空を見上げた。

あの日と同じ星が、静かに輝いていた。

星を見ていれば、涙は溢れて来なかった。

あの日、僕らは分かり合えた。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。


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