秋の大会
早川イサム(勇)
一卵性双生児の兄。弟より小柄で気弱な面もあるが努力家。父のサッカーに憧れる。
早川マサル(勝)
一卵性双生児の弟。明るくて素直な活発な少年。気弱な兄を支える優しい子。いつも兄と勘違いされている。
早川ソウスケ(宗佑)
双子の父親。サッカーJ2リーグのプロ選手。遠征中に不慮の事故で命を落とす。
早川ヨウコ(陽子)
双子の母親。フリーのカメラマン。取材の時に宗佑と出会い結婚。双子を出産している。2人の子供が成長したことで、仕事を再び始める。
坂口ショウマ(翔駒)
朝比奈学園中等部1年。サッカー部でイサムと仲良くなる。明るく元気だけど少しドジっ子。
山本ナツミ(夏実)
朝比奈学園中等部3年。サッカー部のキャプテン。大柄でぽっちゃりとした優しそうな先輩。口調も性格もおっとりしている。
夜桜イオリ(伊織)
朝比奈学園中等部2年。サッカー部のエースストライカーで長身イケメンだけど言葉遣いが荒いのがちょっとネック。関西弁なので余計にきつく聞こえるが実はすごく後輩思い。
大会出場前に休部という形で休む事になったマサルに対してイサムの方も秋の大会に向け調整を始めていた。ショウマが脚に違和感を感じ軽いねん挫をしており脚を使わないトレーニングに重視して回復を待っていたが、無理をしないと言う形から治療に専念する事になった。代わりに選ばれたのは1年生の田中陽二で新学期からレギュラー陣に混ざって練習していた1人だった。
ヨウジは本番に弱いタイプなので少しでも公式戦に慣れる様にと多めの練習試合を組んできたが一ヵ月そこそこでは付け焼き刃でしかなかった。それでもヨウジは負けまいと必死についてきていた。その結果を認められたのだ、ショウマが欠けたと言う事も重なったがショウマ自身も怪我の完治に専念出来ると社交辞令でヨウジを応援した。内心の悔しさはイサムがよく分かっている
自分も怪我でサッカーが出来ない思いは十分経験しているからだ。
秋の大会はグループ総当たりで地区4組で勝ち点の多いチームが決勝グループに残る。決勝グループに上がれるのは8チーム。その8チームに残ればトーナメント戦での優勝決定となる。この秋の大会と夏の大会での成績の良いチームが冬の全国大会へのチケットになる。朝比奈学園は既にそのチケットは手に入れているものの、手を抜いて良い理由には無い。当然全力で大会に向かうのだった。
朝比奈学園はCグループに選ばれグループ内には島南中、ファルジャーノンFC.Jr、水谷中が総当たりする事になる。
朝比奈が最初に当たるのは水谷中、チームバランスが良く弱点と言う弱点が見当たらないのが強みになっていた。
「攻防にバランスが取れてるなら守りを崩せば行けるって事だよな」
二年の島村がそう話すが
「事はそんなに楽じゃ無いでしょ切り崩すと言う意味では賛成だけど…」
慎重な菜花は島村の意見を止めた。そんな中、山本はゆっくりと話し始める。
「水谷中の中盤を見てご覧。全体に動く間隔がほぼ同じ1人が動くとその周囲がサポートに入る当たり前の行動だけどここまで綺麗にできるものじゃ無い…」
「つまり山本さんが言いたいのは規則正しいからこその穴がある…って事ですね」
イサムが反応して山本は優しく頷く
「その通り、ボールを持った者のサポート、ボールを取りに行く者のサポートがしっかりしている分ボールに目がいってない選手には動くチャンスがあると言う事」
一斉に視線がイサムに向いた。
「ぼ…僕がその相手の視界に入らない役をやれ…っと?」
「察しはいいみたいだな、山本さんそう言う事ですね」
夜桜がキャプテンらしく仕切る。山本も頷きイサムの肩に手を置いた。
「後にも先にも早川くんがキーマンになって今の朝比奈は引っ張られてる。プレッシャーを与えるつもりはないけど皆んなキミのプレーに期待しているんだよ」
部の先輩や同級生達が一斉に頷く、イサムは緊張も焦りもあったが決意を固めて前を見据えた。
「僕が何処までやれるかわかりません、でも皆んなの期待に答えれる様に頑張ります」
試合前のアップでは不思議とイサムの緊張は解けていた。風が心地よく深呼吸するたびに蒼く染まった空に溶け込むような感覚に思えると自然と心が落ち着いた。
この試合のイサムのポジションはディフェンダー。リベロと呼ばれるポジションは攻撃の組み立てやチャンスメイクまでこなす自由なポジションで今回のキーポイントに重要なポジションだ。もちろんリベロをやるのは初めてだが動きの自由度はイサム向きとも思えた。
基本のゲームメーカーは夜桜がコントロールしてチャンスや攻撃を動かすのがイサムの仕事になる
試合開始の笛が鳴り朝比奈からのキックオフで動き始めた。
イサムはレフトサイドバックでチャンスを伺う、ボールは中盤で動きが止まり停滞していた。周囲のディフェンダーの動きを予測してイサムが飛び出す、それに気がついた島村が大きくレフトサイドにスルーパスを出すと先程まで誰も居なかった場所にイサムが飛び込み弾く事なくトラップ、そのまま走り抜ける。当然、水谷中の視線はイサムに向きプレスを掛けようと動くがイサムのフェイントで2、3人抜かれると当然スペースが出来るそこにセンターリングを上げると夜桜の華麗なヘディングで一点をもぎ取った。
先制点を決めた朝比奈の快進撃は止まらず2対1の結果で初戦を終えた。
晴天は続く、昼からの2戦目に向けイサム達は休息に入った。




