⑥清掃員に早いとは言わないで
服を買い、次は模型コーナーで予約したプラモデルを受け取りにきた。
一旦先輩と別れて、彼女は店内をみて回る。
僕が予約したキットを受け取ると、先輩がキャラクターのプラモデルを片手に声をかけてきた。
「真壁くん、こんなのもあるんだね!難しいのかな?」
ガン◯ムの主人公の少女のプラモデルでした。
アニメ好きなら嬉しい発見かもしれない。
「比較的、簡単に作れるシリーズで初心者でも1時間がからないですよ」
「何か道具いる?プラモデル用のハサミとか?」
「ニッパーですね。このシリーズは、無くてもいけますけどキレイに仕上げたいのなら要りますね」
アドバイスを素真に聞き、キットとニッパーを購入した先輩。
「服を選んで貰いましたし、奢らせて下さい」
そういうと、僕の持つ大型キットを見て、
「大荷物だし大変じゃない?そうだ!デパ地下で色々買って、真壁くんの家で食べるのはどう?
真壁くんの作品も見たいし、作るコツも知りたいし!」
部屋は綺麗だと思うし招くのは良いけど、Dの僕でも分かる。早すぎないか?
このままでは、大人の階段を上がる未来が確実なんだが!
「お疲れ様です、飯村さん、真壁くん」
商業施設の若手の優良株【一条】がいた。
「2人はデートかな?初々しくて良いね!」
僕とは縁のない部署の人だけど、面識は一応ある。ただ、挨拶しかしていない。
言葉をかけられたのも、先輩が一緒だからなんだろうなと思った。
「お疲れ様です一条さん。すごく良いところなので、引っ込んでいてもらっていいですか?」
上役なのにそんな態度で良いのかと思う程、冷淡な対応だった。
「手厳しいね、また会社でね」
爽やかな笑顔で一条は去って行った。
「デパ地下の気分じゃなくなっちゃったよ⋯⋯」
「あんな態度で大丈夫なんですか?」
「一条さんは、仕事は出来るけど厳しい人だから好き嫌いが分かれるんだよね。本人も必要悪と自覚しているから、あんな態度でも気にしてないのよ」
「へぇ、そうなんですね。懐が深いというか何というか⋯」
「そうだ!真壁くんの家でUberで良いよね?」
それはもう決まっているんだ⋯⋯。
★
少し離れた場所で飯村さんと真壁くんを観察する。
彼女は恋すると、あーなるんだ。
それとも真壁くんに、何か力があるのだろうか?
そう思えば、数日前と違い身体つきや雰囲気が変化した気がする。
エリートクリーナー、真壁真には何かあるのかな?
私は楽しげに笑みを浮かべるとその場を後にした。
★
朝目覚めると、僕の隣には飯村先輩⋯めぐみさんが幸せそうな笑顔で寝ていた。
色々あったけど、所謂【お楽しみでしたね♪】状態です。
ただ相変わらず僕はDのままなんですが、Rが付くのでご想像にお任せします。
昨日はアプリを確認出来なかったので、今の内に確認する。
『強制クエスト終了!報酬金合計¥105000、追加報酬、スキル使用回数が前日の未使用が5回までストックされます。(最大15回)
※アレのサイズの件はゴメンナサイ』
僕が伏せた意味は!?
お前!絶対観察しているよな!
「うーん⋯おはよう、ま⋯真くん♡」
抱き着いて頬にキス。
僕のある異変に気が付き、「する?♡」
「仕事あるし、疲れるのはちょっと⋯⋯」
「真くんは、早いからすぐ終わるよ?」
「毎朝の自然現象だし、そのうち収まるから!
何気に『早い』は止めて!傷つくから!
シャワー浴びてくるよ!」
ベッドから立ってバスルームに向かうと、めぐみさんが付いてくる。
「何で付いてくるの!?」
「2人で入った方が時短になるでしょ?」
「絶対ならないよね!バスルームで僕に何をする気!?いいから大人しくしてくれますか?」
僕はなるはやでシャワーを浴びると、めぐみさんと交代した。
ベッドに座り頭を拭いていると、テーブルに真新しいワンピースが⋯⋯あの時からお泊りする気満々だったの!?
めぐみさん、恐ろしい子!
「スッキリした!」
髪を拭きながらめぐみさんがやって来る。
明るい所で見ると、下手なグラビアアイドルより魅力的!
ヤバイ、反応する!
深呼吸だ!ヒーヒーフー、ヒーヒーフー⋯⋯ラマーズ法してどうする!!
「真くん、プラモデル置いて行っていい?」
「えっ?今日も泊まりに来るんですか?」
「エヘヘ、もう私なしでいられないんだね(笑)
本当はそうしたいんだけど、時間指定で実家から荷物来るんだよね」
「そうなんですね、全然構いませんよ」
「それにしても、反応してないね⋯もう飽きた?」
セクシーポーズをする。
「朝っぱらから何を言っているのですか!
必死に我慢しているんですよ!
早く着替えて下さい!モーニングセット食べに行くんでしょ?」
「は~い」と言いながら、空色のワンピースを着る姿を見て、反応したのは内緒だ!
★
真くんと仲良く通勤した後は名残惜しいけど、別れて更衣室で着替えていると、
「おはようメグリン、夕べはお楽しみだったの?」
ニヤニヤした亜希さんが声をかけてきた。
「何のことですか?」
アクセル全開で惚気たいけど、とぼけてみる。
「またまたぁ、お泊りするからワンピース買ったんでしょ?タグ付いているよ(笑)」
慌てて首元を手で確認する。
それを見ていた亜希さんはニヤリと笑う。
「カマかけただけよ。で、Dは美味しくいただいたのですか?(笑)」
してやられたと思ったけど、昨日の顛末を話す。
「亜希さんに言われて、超頑張って積極的に行動したら、お付き合いする事になってお泊りしましたよ」
「どう頑張ったら昨日の今日でそうなるの?
エリートクリーナーってチョロいの?」
「でもDは、美味しく頂けませんでした(T_T)
味見はしましたけど(笑)」
「そこをもっと詳しく!」
私は恋バナってあまりしたことなかったけど、凄く楽しいと感じました。
★
めぐみさんと別れて更衣室に向かうと、一条さんと遭遇した。
「おはよう真壁くん。君が書いてくれた報告書の件なんだけどね」
ただトイレ清掃をするだけではなく、報告書を提出する。
トイレットペーパーが盗まれる事もあるので対処を考えて欲しいとか、意見を書くこともある。
正直、毎日似た内容になるので、ちゃんと目を通しているとは思わなかった。
「おはようございます一条さん、何か不備がありましたか?」
「不備では無いのだけど、A社の新製品の業務用が発売されたら購入するべきとあったから、自分で調べたのかと気になってね」
「ああ、それですか。
自分の職務はトイレ清掃員ですけど、お客様や会社の為にどうしたら良いかと考えた時に、新製品の洗剤とかを購入して調べてます。
他社製品は3プッシュ必要なところ、これなら2プッシュで効果ありますし、伸びもあるので清掃が楽なんですよ。
薬品の匂いもキツくないですしね」
「流石は【エリートクリーナー】だね。
実際に働く人のそういう意見は貴重だから助かるよ!
この商品に対するレポートを頼めるかい?
近々業務用も出るようだから、A社に提出すれば仕入れ値を抑えられるかも知れないからね」
「会社の為になるなら、喜んで!」
たまに加藤さんとかがエリートクリーナーと僕を呼ぶけど、誰が言い出したのだろうか?
某プロレスラーの愛称とユニットを合わせただけのセンスのなさ⋯⋯直属の上司ではない一条には聞けないけどね。
「うん、この調子で頑張ってほしい。ちゃんと見ているからね」
「はい、期待に添えるよう頑張ります」
立ち去る一条の後ろ姿を見ながら、めぐみさんに何で嫌われているかよく分からなかった。
この日はお客様が多く、突発的な清掃も増えて忙しかった。
すれ違う職員やお客様の会話から「猫」と言うワードが出てくる。
もしかして僕が原因か!?
『【猫で5分間ダンスしてから捕まらず逃げろ!】報酬¥10000、アイテム【万能キー】YES NO』
絶対にシステムが楽しんでいるなと思いつつ、答えは保留にする。
お読みいただきありがとうございます
評価や感想頂けたら励みになるので宜しかったらお願いします




