95話:グランドベア
クロコ領都まであと少しだったのに。
そこまで行けば、領軍の援護ももらえるのに。
愚痴を言っても仕方ない。やるしかないか。
「お2人は馬車の中に入っていて下さい。あれは私が対処します」
2人だけでなく、馬車と馬にも被害が出ないように、馬車から離れてグランドベアに向かっていく。
こちらから近づいているのに気づいたグランドベアは歩みを止めて待ち構える。
これ、どうやって倒そうか。
間合いの少し外で考えていると、グランドベアが立ち上がり、二足歩行で近づいてきた。
高さ5mはありそうな場所からの腕の振り下ろし。
ひとまず大きく回避する。すぐ側を通り抜けた腕は、ゴオォッという重い風切音を立てていく。
回避する事は問題なさそうだ。
立て続けに腕を振り回して攻撃してくるが、問題なく避けていく。
避けた直後に腕に剣をぶつけにいく。
サシュッ
剣はグランドベアの腕を斬り裂いたが浅い。避けながらだと攻撃力が足りないか。
反撃された事に怒ったのか、レッサーベアの攻撃が激しさを増していく。
長期戦はこちらの不利になるだろう。今のうちに試しておくか。
右へと踏み込み、攻撃を避ける。
腰を回転させ、左下から剣を全力で振り上げる。
ガアァァン!
グランドベアの爪にぶつかり、大きな衝突音が響き渡る。
うおらっ! 歯を食いしばり、更に力を込める。
グランドベアの爪が押し込む力も強いが、私の方が強い!
剣が上へと振り抜かれた。グランドベアとの力勝負は私の勝ち。
押し返された腕は大きく上へと弾かれ、体勢を崩した。
この大きな隙に攻撃する。狙うのは目線の高さにある太もも。
深く斬り裂くべく、左足を前へ送り、接近する。
左足の着地と共に、力強く地面を踏み締め、剣を振り下ろした。
ザシュッ!
両断するつもりで振り下ろしたが、想定以上に太い足で半ばまでしか斬り裂けなかった。
それでも大きなダメージを与えられ、グランドベアは痛みに叫んだ。
反撃が来ないことを確認して、振り下ろした剣を返して、水平に一閃。
スネを深く斬り裂き、グランドベアは左足の踏ん張る力を失い、後ろへ倒れ込んだ。
ズジーンッ!
大きな音を立てて倒れたグランドベア。
そこへさらなる追撃を仕掛ける。倒れたことで無防備になっている、もう片方の足の裏を狙い、剣を突き刺す。
ズジュッ、という音と共に剣が深く突き刺さる。剣に押されて足が曲がり、これ以上は刺さらないだろう。
蹴り飛ばされる危険があるので、素早く剣を引き抜き、少し距離を取る。
グランドベアの動きを確認するが、足の痛みで転げ回っている。
もう大丈夫そうだな。
再び近づき、足裏を突き刺した方の足のももを横薙ぎの一閃で深く斬り裂く。これで両足から大量出血だ。
その後もグランドベアからの反撃に注意しながら攻撃を続け、徐々に転げ回る速度が下がっていった。
これで終わりだ。
首を目がけて高く上げた剣を振り下ろした。
『All is Moneyの効果が発動しました。
経験値と素材がお金に変換されました。462,000Gを獲得しました』
マイカード。依頼の記載が完了に変わっている。
よし。討伐完了だ。All is Moneyの効果で死体は消えてしまったけど、マイカードを見せれば問題ないな。
「お2人とも大丈夫ですか?」
馬車に近づいていき、声をかける。
「グ、グランドベアはどうなったのですか?」
「倒しましたからもう大丈夫ですよ。
とりあえず、クロコ領都に行きましょうか。ジェームズ様にご報告すべきと思いますので」
「そうですね。もう馬は大丈夫か確認して欲しい」
「ほ、本当に倒したんですか?」
「クロコ領都までは私も御者席にいますよ」
御者さんは怖がっていたが、馬に指示を出すと何も無かったかのように走り出した。
領都の門へ到着すると同行していた役人さんが門番さんと対応して、馬車は領主館へと向かっていった。
「待っていたぞ、ディックス殿」
領主館に入ると、軍の偉そうな人が迎えてくれた。この方がジェームズ様かな。
「こちらがジェームズ様ですよ」
教えてくれた役人さんに感謝だ。
「初めまして、ジェームズ様。ディックスと申します。
早速ですが、ご報告がございます」
そう言いながら、マイカードを差し出す。
「ん? マイカードがどうした?
はぁっ!? 依頼が完了になっている!? どういうことだ!?」
「クロコ領都まで後少しという所で、グランドベアに遭遇しまして、その場で倒しました」
「なんと……マイカードがそうなっている以上、本当なのだろうな。
何か討伐した根拠となるものは他にあるか? 爪や牙を持って帰ってきていないのか?」
「私のスキルのことはご存知でしょうか? 私が倒すと素材は残りません。
ただ、スキルで素材を出すこともできます」
「じゃあ爪と牙を出してくれないか。それがあれば倒したことを説明できるからな」
ジェームズ様の要望通りに素材を出そう。
Money is Allの効果を発動してください。
『Money is Allの効果を発動します。金額と変換先を指定してください』
300,000Gをグランドベアの爪とグランドベアの牙に変換して下さい。
『Money is Allの効果を発動しました。
お金がグランドベアの爪とグランドベアの牙に変換されました。
300,000Gを消費して、グランドベアの爪とグランドベアの牙を獲得しました』
改めて見ると、爪も牙も大きいな。さすが体長4mのモンスター。
「これがグランドベアの爪と牙か。念の為鑑定してから、使わせてもらうぞ。
この分も含めて、領都にもどったら報酬を支払うように伝えておく。
そういえば、よくグランドベアを倒せたな? いい武器でも使っているのか?」
「剣は鉱石とレッサーベアの爪と牙を混ぜたもので作られています。
グランドベアの爪を弾くことはできました」
「なるほど。それなら攻撃が通じるな。
とりあえず、宿は用意してあるからゆっくり休んでくれ」
公爵家からの依頼は無事に終わったかな。
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所持金:18,366,740G
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