94話:公爵家からの討伐依頼
クロス伯爵領都を出発した翌日の夕方。予定通り、タークス公爵領都に到着した。
その足で領主館に向かう。
「すみません、タークス公爵家特別協力者でCランク冒険者のディックスと申します。
ジェームズ・タークス様より、領主館へ来るようにと呼ばれて参りました。
取次をお願いできますでしょうか。こちらが手紙になります」
領主館へと入り、クロス伯爵領都の領主館と同じように目の前にあった受付にいた職員さんに声をかけた。
手紙を受け取った受付さんは、すぐに駆けて行ったので、話は通っていたのだろう。
数分後、先ほどの受付さんが走って戻ってきた。
「ハァハァ、ディックス様、こちらへどうぞ」
そこまで急ぐのかな。と思ったけど、案内される間は走らずに歩きだった。
私を待たせないようにという事だったのだろうか。
コンコン
「トーマス様。特別協力者のディックス様をお連れしました」
「入ってくれ」
ドアが開けられ部屋へと入っていくと、そこは王都の研究所や教会よりも立派な内装の部屋だった。
応接室か偉い人の執務室か。それにしても豪華すぎる。
ソファにテーブル、窓ガラス、燭台。どれもが細かな模様が入っていて、高そうな感じがする。
「掛けてくれ」
豪華さに圧倒されていると、部屋の主だと思われる男性が声をかけてきた。
言われた通りにソファに座る。
その直後、もう1人の男性が入ってきた。
「兄さん、例の冒険者が到着したんだって?」
「ちょうど来た所だ。お前も座れ」
兄さんってことは、このお二人は兄弟なんだろうな。
「まずは、急に呼んだにも関わらず来ていただきありがとう。
私はタークス公爵領主代行をしているトーマス・タークスだ。
父のトムハットと弟のゴードンから話は聞いていたが、本当に若いのだな」
「私は次男のヘンリー・タークスです。主に内政、商業関連を担当しています。
ちなみに、ディックス君に手紙を出したジェームズは領軍を引き連れて、先に現地に行っているよ」
「初めまして。ゴードンさんから特別協力者に任命いただきました、Cランク冒険者のディックスと申します。
お力になれるように努めます」
「うーん、本当にこの若さの冒険者でこの受け答えができるとはね。
そこも含めて、ゴードンが推薦したってことなんだろうな」
「兄さん、まずは依頼内容を伝えた方がいいんじゃない?」
「そうだな。ではここまで来てもらった理由は手紙に書いてあったと思うが、詳細を説明する。
まず、ディックス君に討伐してもらいたいモンスターはグランドベア。
体長は4mほどあり、レッサーベアの倍ほどの大きさがあり、適正レベルもレッサーベアの倍、レベル40とされている。
レッサーベアを単独で倒せる領軍の精鋭が10人掛かりでも、負傷者と数名の死者が出ることは確実というほどの強敵だ。
ゴードンからディックス君の実力は聞いているが、領軍の精鋭で支援はさせてもらうつもりだ。
そして、そのグランドベアが出現した場所は、ここから西にあるクロコ男爵領。
ここから高速馬車で丸3日かかる領都の北にある村の近くになる。
領都であれば防壁で守られるが、物流が止まってしまう。
また、軍馬の生産地でもあり、そこは守ることが難しいため、早急に討伐することが求められている。
ここまでで不明点はあるか?」
「グランドベアは1体だけでしょうか?」
「確認されているのは1体だけだ。
複数体で現れることはほとんど無いから、恐らく今回も1体だけだろう」
「分かりました。すぐに出発します」
「いや、出発は明日の朝にしてくれ。
討伐依頼を出すから、それをギルドで受けてから今日は休め。
ディックス君がモンスターを倒すと消えるのだろう?
討伐したことの証明として依頼を出した方が良いと判断した」
「かしこまりました。ギルドに向かって、明日朝早くに出発します」
「ディックス君をここまで案内したものを付けるから、彼と一緒に依頼を受けてきてくれ。
クロコ領にも同行させるから、何かあれば彼に聞いてくれ」
「色々とお気遣いありがとうございます」
「こちらから依頼するのだ。
確実に、最小限の被害で討伐してもらうための必要な措置だと思ってくれ。
ヘンリーから何かあるか?」
「大丈夫ですよ。討伐が終わって帰ってきたら、色々と話を聞かせてね」
ヘンリーさんが席を立ち、それに合わせて私も立ち上がり、部屋を出ていく。
部屋を出ると案内してくれた方がいたので、その人に従ってギルドで依頼を受領した。
◇◇◇
翌日、朝食を食べ終えてから、すぐにタークス公爵領都を出発した。
そこから2日後の午後。もうそろそろクロコ領都の防壁が見えてくるらしい。
ヒヒィィン!
突如、高速馬車を引いていた2体の馬が嘶き、馬車が止まった。
「何かありましたか?」
「分かりません。急に馬が止まってしまって……」
同行している職員さんが御者さんに聞くが分からないのか。
……なんか嫌な感じがするけど。
ブルルッ!
御者さんが馬を動かそうとするが、嫌がっているみたいに首を振っている。
ガサガサッ
何か来る!?
咄嗟に馬車から飛び出し、剣を鞘から引き抜く。
その直後、森の奥から大きな影がヌッと現れた。
このタイミングか。他の馬車が狙われたわけじゃなかっただけ不幸中の幸いかな。
ドッドッドッ
木々の間を駆けて来たのは、レッサーベアの倍近い大きさのモンスター。
これがグランドベアか。
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所持金:18,204,740G
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