92話:製作依頼
「すみません、お待たせしました」
タオルで汗を拭きながら、エドワードさんが受付にやってきた。
「いえ、突然お伺いしてすみません」
「大丈夫ですよ。ほとんど来客なんて無いので鍛冶に集中してお待たせしてしまいました」
職人ってもっと頑固な人を想像していたけど、若いからなのか元々の性格なのか、優しい人だな。
「それで、どのようなご用件でしょうか?」
「私のパーティーメンバーがあなたに籠手を強化してもらったと聞きまして、私の武器も対応してもらえそうと思ってお伺いしました」
「パーティーメンバーですか。もしかしてチーター獣人の女の子とフクロウ獣人の男の子ですか?」
「ええ、その2人です」
「なるほど。あの2人のパーティーメンバーですか。
あなたもかなりの強さをお持ちですね」
「どうしてそう思ったのですか?」
「あの2人が来た時に、強くなって早く一緒に戦いたいと言っていました。
それがあなただとしたら、彼らよりも強いはずです。
そして、その防具。傷や凹みがほとんどありません。
全く使われていないか、丁寧に手入れされているか、ダメージを受ける事無く戦っているかの3つが考えられます。
ただ、金属部分以外を見れば使い込んでいることは分かりますので、使われていないという事は無い。
そうすると残り2つが候補になりますが、手入れしていてもここまでの状態にはならないので、ダメージを受けずに戦っているという考えになります。
レッサーウルフやレッサーベアにもダメージを受けずに戦えるならかなりの強さだなと思いました」
「……素晴らしい洞察力ですね。鍛冶師には洞察力も必要なのでしょうか?」
「依頼人の体格にあった武器防具を作るためには必要だと思っています」
「なるほど。ますますあなたにお願いしたいと思いました。
ちなみに、この剣もあなたが作ったもので間違いありませんか?」
腰から鞘ごと受付の上に置く。
「失礼しますね……確かに私が作ったものです。
ギルド前の武器防具の商店で買ったもので間違いないですか?」
「はい、そこで買いました。
確か良さそうなのが2本あって、両方ともエドワードさんが作ったものでした」
「それはありがとうございます。それで依頼されたいのは剣でしょうか?」
「剣と防具の両方お願いしたいです」
「今使っている防具は……レッサーベアの皮で作られていますか?」
「はい。軽さも重要なので、防具は軽さも重視したいです。
剣については重くても問題ないですが、この体型なので長さは今と変わらない程度でお願いしたいです」
「うーん。作るのはいいんだけど、素材が無いんだよね。
剣については鉱石とモンスター素材を混ぜたものにしないと今より強くはならないし、防具もレッサーベアより強いモンスターの素材が必要だからね」
そうか、素材か。何が必要なのかな。
「理想の素材はありますか?」
「レッサーベアより強いモンスターであることは絶対条件だね」
「ミニクラーケンの吸盤と肉なら手に入りますけど、それじゃあダメですか?」
「ミニクラーケンを!? あの、もしかしてCランクだったり?」
「はい、Cランクです。ケルピーも手に入りますけど、ケルピーだとレッサーベアより強くはないですよね?」
「おぉ、思ったよりも強かったよ。
ケルピーはそうだね。レッサーベアの方がいいかな」
「それを超えるとなると……マクカリダンジョンにいるモンスターでしょうか?」
「そうだね。あとはたまに出てくるグランドベアかな」
グランドベアか。レッサーベアより強いなら戦ってみたいけど、依頼書で見かけないな。
「剣だけレッサーベアの素材と鉱石を混ぜて作ってもらうことは可能ですか?」
「まぁ可能だが、時間は少しかかるし、お金もかかるぞ」
「問題ありません。レッサーベアの素材は何が必要ですか? 爪ですか? 牙ですか?」
「持ってるの?」
「明日狩ってきますよ。10個ずつあればいいですか? 伝手もあるので、明日持ってきます。」
「あぁ、それだけあれば問題ないよ。余ったら返すね」
「分かりました。料金はいくらでしょうか?」
「レッサーベアの素材は持ち込みなので……15万Gでどうかな?」
「分かりました、ここで払いますね」
手を差し出し、握り返してくれたエドワードさんに15万Gを支払った。
「いやぁ、さらっと15万Gを払えるのはさすがCランクだね」
「どれくらいの期間かかりますか?」
「細かい細工とかしないでいいだろうし、1週間はかからないと思うよ」
「では、6日後が休みなのでその日に来ます」
「しっかり良い剣を作っておくよ。
あ、名前聞いてなかったね」
「ディックスです。孤児院所属のCランク冒険者です。
一応マイカード見せますね」
「ディックス君だね、一応見せてもらうね。
……うん!? 何この公爵家って!?」
「何かあった時に戦力になるという約束をして、代わりに保護してもらっている関係です」
「よく分からないけど、公爵家と繋がりがあるのか……
これまたスゴイお客さんができたな。
まぁそれは関係なく、しっかりと作らせてもらうよ」
「よろしくお願いします」
エドワードさんに頭を下げて工房を後にした。
今の剣よりどれだけ強くなるんだろうか。楽しみだな。
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所持金:6,345,540G
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