86話:帰宅
昨日の夕飯はとても美味しかった。
料理は孤児院でも見たことがあるものばかりなのに、どれもが同じものと思えないほど美味しかった。
これが料理人の腕の差ということなのだろうか。
素材の差もあるかもしれないが、メニュー表を見る限りそんなに高額では無かったので料理人の腕によるものなのだろう。
あんなお店がクロス領かタークス領にもあるのかな。
あるならその近くに住みたい。
「おはよう、ディックス君。
出発の準備はできているかな?」
「おはようございます、ゴードンさん。
準備万端ですぐに出発できます」
「じゃあ行こうか」
あとは帰るだけなので他の職員さんが案内してもいいのだが、ゴードンさんがわざわざ案内してくれた。
昨日の夕飯の時にも断ったけど、特別協力者なんだから絶対に見送りすると強く言われた。
「お世話になりました」
「じゃあ元気でね。
定期的に手紙を出すから、ちゃんと返信するように。
それ以外のタイミングでも何かあれば連絡してくれて構わないよ」
ゴードンさんが研究所の入口で見送ってくれているのを背にして、王都に来た時と逆に辿ってクロス領に向かう。
今回はタークス領で半日過ごす必要は無いから、タークス領からクロス領の間は来た時とは違う街に泊まることになるだろう。
◇◇◇
王都を出発してから6日目の昼頃、ようやくクロス領都が見えてきた。
最近トヤダンジョンに行って1ヶ月近く離れていたので、それと比べると短いけどやっぱり懐かしい感じがする。
東門で門番さんのチェックを受けてから街に入る。
王都より小さく、人の数も多くない。
けれど、やっぱりこの街が落ち着く。
ここが地元なんだな。
コンコン
「はいどうぞ」
「セリアさん、ディックスです。
ただいま戻りました」
「あら、おかえりなさい。
思ったより早かったわね」
「王都での研究が思ったより早く終わりましたので。
あと、セリアさんにお願いされた手紙も教会本部に渡してきました。
そしてこちらが教会本部にいたケルシーさんからの手紙です」
「ありがとう。
ケルシーは何か言っていたかしら?」
「返事を出せと言ってました。
セリアさんと見習い時代に一緒だったということも聞きましたよ」
「返事ねー。
返して伝えるようなことも無いのよね、まぁ仕方ないわ。
そんなことよりも研究所の方はどうだったの?」
そんなことって……ケルシーさんが少し可哀想に感じる。
「スキルの読み方と意味を教えてもらいました。
オール・イズ・マネー、マネー・イズ・オール、デュー・デリジェンス、アクイジションズ、レバレッジド・バイアウト、カーブ・アウト、ディビデンドと読むそうです。
デュー・デリジェンスだけ意味とスキルの効果に違いがあるので、それだけはまだ調査中になります。
あと、マイカード。これを見て下さい」
セリアさんにマイカードを見せる。
「何かしら?
……えっ? タークス公爵家特別協力者?
どういうことですか、ディックス」
「実は手紙をもらっていたゴードンさんがタークス公爵家の四男でした。
そして私の能力を見て、庇護下に入らないかと提案いただいて、公爵様にも許可を得られてこうなりました」
「この特別協力者になることで何が変わるのですか?」
「ゴードンさんの研究への協力は継続すること、タークス領で強いモンスターが現れた場合に討伐を依頼すること、クロス領から外に出かける時は領主館に行き先を伝えること。
その代わりに他の貴族からの勧誘などから守ってもらえる、ということになっています」
「ほとんどディックスに不利な点はありませんね。
まぁディックスも考えて受けたのでしょうし、良かったのではないですか?」
「そう思っています。
それくらいでしょうか。
あと、研究所に併設された客室に泊まりましたが、とてもベッドは良かったですし、料理も見たこともないものが多くて美味しかったです。
あと、送別会として連れて行ってくれたお店もとても美味しかったです」
「そうですか。
まぁ本職の料理人の料理には私たちでは敵いませんからね」
「孤児院を出たら、近所に美味しいお店がある所に住もうと思いました。
クロス領になるか、タークス領になるかは分かりませんけど」
「スゴく良いですね。
すぐに孤児院から出て行っても構いませんよ」
「いいえ、ここにいられる間はいます。
ヴェロニカとノクスもいますし、出て行っても寄付金は受け取ってもらえないでしょうし」
「14歳になるまでは受け取らないですね」
「ですよね。引き続きよろしくお願いします。
では、スワンさんとヴェロニカとノクスにも帰ってきたことを伝えてきます」
そう言って院長室を出て隣の部屋に入っていく。
ポーションも久しぶりに作らせてもらおう。
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所持金:2,027,420G
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