84話:提案
昨日の午後は部屋で身体を鍛えて過ごしていた。
外に出てやりたいこともないし、ダラダラ過ごすのも嫌だったから。
「おはよう、ディックス君」
今日もゴードンさんが部屋にやってきた。
「おはようございます。
今日は何をするのですか?」
「それがもうやってもらいたいことが無いんだよね。
マイカードの更新、スキルの説明と観察・体験はした。
デュー・デリジェンスの意味の解明については君の協力は不要だし、アクイジションズを使ってステータスの変化を見たいけど、お金はかかるし近くにちょうどいいモンスターはいないし。
何かディックス君がやりたいことはあるかな?」
「いいえ、昨日の休みで王都での用事も済みましたのでやることはありません」
「そうか。スキルとは関係ないけど、ディックス君はこれから先どうするの?」
「どうするのとはどういう意味でしょうか?」
「何をめざすのか。何を目的に冒険者を続けるのか」
「第一の目的はお金を稼ぐことです。
それによってお世話になった孤児院に寄付をして少しでもいい生活をしてもらいたいです。
それ以外だとこの国を見て回りたいです。
一緒にパーティーを組んでいる子の目的なのですが、私も共感しましたので」
ノクスの冒険者になる理由を聞いて、私もその目的はいいなと思ったのだ。
孤児院を出てからになるだろうから、2人が出るタイミングまでまだ4年近くあるけど。
「冒険者ランクを更に上げたり、国に仕えたりする考えはあるかい?」
「冒険者ランクは上げたいです。
中級ダンジョンは国の東側にあって遠いので、上級ダンジョンであるマクカリダンジョンにはパーティーで行くつもりです。
ただ、ランクを上げることは目的ではなく、Cランクになったのと同じく面倒ごとに巻き込まれないようにするためにランクを上げるべきかなと思っている程度です」
「お金を稼ぐなら護衛依頼とかを受けるよりもダンジョンで沢山モンスターを倒す方が儲かるから?」
「そうです。
稼ぐためにはモンスターを多く倒せば良いですが、それを邪魔されないようにしたいです」
「そうか、なるほど。
活動の邪魔をされなければどこかの貴族の庇護下に入るつもりはある?」
「庇護下ですか。
たまに珍しい素材を提供するくらいで活動の邪魔にならないなら入ってもいいですが、そんな貴族との繋がりも無いですし、これから声をかけてくる貴族は信用しにくいです」
「それくらい貴族に対しては疑り深いくらいでちょうどいいよ。
それなら私の庇護下に入らないかい?
研究の協力者だし、定期的に手紙で新しいスキルとかの情報をもらえれば十分だよ」
「ゴードンさんの庇護下ですか?
研究所の研究員の庇護下というのはそれだけ大きな力があるのでしょうか」
「ああ。そういえば言ってなかったね。
私の名前はゴードン・タークス。
王立研究所の研究員である前に、タークス公爵家の四男だ。
私の庇護下というか、タークス公爵家の庇護下に入る形になるね」
タークス公爵家!
アルフレッドさんと仲がいいことについて聞いた時に、気兼ねない感じで話しかけてくる珍しい人だと言っていたけど、公爵家の直系なら気軽に声をかけるなんてできないよね!
「ふふ。驚いているね。
タークス公爵領はクロス伯爵領にも近いし、ちょうどいいんじゃないかな。
まぁ父に確認をする必要はあるけど。
定期的な手紙のやり取りがメインで、どうしても公爵領の軍で対応できないモンスターが現れた場合とかにディックス君の力を貸してもらうかもしれないけど、基本的には自由に冒険者として活動してもらって構わないよ。
どうだろうか?」
「本当にいいんでしょうか?」
「いいとも。
というか、ディックス君のステータスは現時点でAランク冒険者と同等かそれ以上、最上位層だと思う。
もちろん戦闘技術やスキルによる差はあるだろうけど、まだまだ強くなる事を考えると公爵家が拒否することは無いだろう。
クロス伯爵家とも同じ地域でうちの傘下だから、うちの庇護下に入っても文句は言わないでしょ。
まぁあまり遠くに拠点を構えるつもりなら難しいかもしれないけど」
「拠点については、しばらくはクロス領になります。
私はあと3年は孤児院にいるつもりですので。
その後1年はパーティーメンバーがまだ孤児院にいるでしょうからクロス領にいて、その後はクロス領かタークス領かもしくはトヤダンジョンを拠点にしようと思っていますので、そんなに遠くに拠点は作らないと思います」
「トヤダンジョンなら、イムス伯爵家もうちの傘下だから大丈夫だろうな。
マクカリダンジョンは王家直轄だから、タークス家の力も少し及びにくくなるから気をつけてね。
まぁ拠点にするほどじゃなければ問題ないし、何かあれば王都にいる父か私が対処するから大丈夫だろうけど」
「そうなんですね。
えっと。ではお願いしてもいいでしょうか」
「分かったよ。
これから父の所に行って話してくるから決まったら伝えるね。
私に伝えたディックス君のステータスやスキルについて話しても問題ないかな?」
「はい、ゴードンさんを信じていますので」
「うわぁ、責任重大。
じゃあ行ってくるよ。
研究所を出てどこかに行ってても問題ないから自由にしててね」
そう言って部屋を出ていくゴードンさんを見送った。
さて、今日も1日空いてしまった。
何しよう。
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