77話:タークス公爵領都
クロス領都の東門をくぐって王都へと向かう。
東門からは道なりに北東に進んでいく形になる。
クロス領都から王都への道は国の主要な道の1つであるため、しっかり整備されていて宿のある街や村が多くあり、領軍の巡回もされているのでモンスターに遭遇することは少ないそうだ。
走る邪魔になるモンスターが出てくることが無いのはいいことだが、あまりにも暇である。
定期的に馬車とすれ違ったり追い越したり。
昼過ぎにはゴブリンとハニービーの討伐依頼で来たタクト村に到着した。
今回は用事が無いので村に入らずに通り過ぎていく。
王都への道中はモンスターは基本的に無視するので収入は0。
一方で宿代と昼飯代はかかるので所持金は減っていくだろう。
まぁ往復10日くらいで13万Gくらいだから足りなくなることは無いはずだけど。
そのまま夕方まで走り続けて、今日の目標地点としていたアトミック男爵領都に到着した。
男爵領都ということもあり、タクト村よりは大きいがイムス伯爵領都やトヤ街よりも小さかった。
翌日からもひたすらに王都に向かって進み続けて、3日目の昼過ぎにタークス公爵領都に到着した。
次の大きな街であるマウス子爵領都までは走って1日掛かるので、早いが今日はここに泊まることにした。
タークス公爵領都は国の中で王都に次いで大きな都市であり、商業都市と呼ばれている。
王都まで徒歩で5日から6日かかる距離だが、南側が海に面しており、国で一番大きな港があることが理由として挙げられる。
王都から北西に徒歩で1日の距離にも港はあり、遠隔地から王都に向かう際は王都の港に直接向かうか、タークス公爵領都の港まで来てそこから地上で向かうかのどちらかが主要なルートらしい。
そんな大都市がクロス伯爵領の近くにあるため、孤児院を出た子の半数はクロス領都を出てタークス公爵領都に移っていた。
仕事が多くあるのがその理由だと思うが、中には新しい人生を新しい場所で始めたいという想いもあるのだろう。
私もクロス伯爵領都から一番近くにある大都市であり、王都の近くは冒険者が稼ぐようなモンスターがいないという話を聞いたから、クロス伯爵領都から出るとしたらタークス公爵領都に行くべきかと考えていた。
そのため、王都に行く途中でタークス公爵領都に泊まると同時に、暇な半日を使って都市を見て回りたいと思っていた。
タークス公爵領都に到着してまずは宿を確保した。
ここまでの街では1泊2食+昼食用の弁当で12,000Gだったが、タークス公爵領都では15,000Gと少し高かった。
それだけ宿の需要が多いのだろう。
宿を確保してからは街を見て回る。
クロス領都と比べて大きな商店が多い。
武器防具の店も、ポーションの店もとにかく大きい。
武器防具の店だとトヤ街で見たような鉱石とモンスターの素材を混ぜた素材での武器が色々と売られていたし、ポーションはハイポーションが多く売られていた。
それでもエクストラポーションは売ってなかったけど。
その後も見ていくと一際大きな建物を見つけた。
このまま先に進むと領主館があると街の入口にある地図に書いてあったので、変な建物ではないだろう。
気になったので店に入っていく。
「いらっしゃいませ。何をお探しでしょうか?」
店に入るとすぐに店員さんに声をかけられた。
「すみません。とても立派な店だったので、何の店か気になって入りました。
こちらは何を扱っているのでしょうか?」
「当店は初めてでしたか。
こちらは奴隷を扱っている奴隷商になります」
「奴隷、ですか?」
「奴隷をご存知ないですか? お客様はこの街の方ではないのでしょうか?」
「はい、西にあるクロス伯爵領都から来ました」
「なるほど。それであれば知らなくてもおかしくないですね。
この店では奴隷を扱っています。
お金を払って奴隷を購入する場所になります。
また、奴隷を売ることも可能です」
「すみません、そもそも奴隷とは何でしょうか。
また、クロス領都では見かけなかったのですが、タークス公爵領都だけにあるのでしょうか」
「まず奴隷には2種類あります。
1つは借金奴隷です。こちらは自分や家族を売ってお金を得て、売られた人を別の人が買って労働などに従事させることを目的としたものです。
分かりやすく言えば、通常の労働は労働の対価にお金を得ますが、借金奴隷は将来の労働の対価として先払いでお金を得るものです。
定められた労働を提供し終えると奴隷契約は解消されます。
もう1つは犯罪奴隷です。こちらは犯罪を犯したものに対して、その罰として労働に従事させるものです。
こちらは基本的に国や領主の元での特殊な労働に従事するもので、当店も含めて奴隷商での扱いはありません。
当店で扱っているのは1つ目の借金奴隷のみになります」
そういうものがあるのか。
知らなかったし、お金に困った人は借金奴隷になりそうだな。
「次にクロス領都で見かけなかった理由ですが、奴隷商を経営することは侯爵以上の領主にのみ認められているため、伯爵領都では奴隷商はいません。
また、わざわざ伯爵領都まで連れて行くことも珍しいので奴隷を見かけなかったのではないかと思います」
「解説ありがとうございます。
1つ疑問なのですが、どうして侯爵以上の領主のみに認められているのでしょうか」
「昔は自由に奴隷の売買は行われていましたが、違法な奴隷売買が横行したことで国が規制したのが理由となります。
規制により奴隷契約をするのに必要な魔道具を国が管理するようになり、許可された人以外が所持することを禁止されました。
そのため、王都、公爵領都、侯爵領都以外で奴隷商を見かけたら違法業者ですので、見かけたら国に情報提供をお願いします」
「分かりました。
ちなみに、借金奴隷が従事する労働に決まりはあるのでしょうか。
また、価格はどの程度なのでしょうか」
「労働についての決まりはありませんが、奴隷契約をする際にどういう労働に従事させるかを決める必要があり、購入者と奴隷の双方が合意する必要があります。
また価格についてはピンキリです。数十万Gから数千万Gまで様々です。
なお、奴隷の生活を保証することが購入者には求められ、違反した場合は国に罰せられたり、奴隷契約が解除されますので、十分に考えた上で購入をお願いしております」
なるほど。
今は不要だが、将来人手が必要になった時は奴隷の購入も選択肢に入れるようにしよう。
対応してくれたお礼をしてから奴隷商を出て宿に戻る。
やっぱりクロス領都と比べて大きくて色々なものがある街だった。
将来的に移住するか悩ましいな。
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所持金:2,047,900G
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