70話:テンプレ
地上に戻ってきたので冒険者ギルドに向かう。
ランクDに上がった時に説明された感じだと今回の納品ですぐにランクCに上がるとは思えないけど、トヤダンジョンにいる間に上げられるかな。
ダンジョンの入口そばにある買取所ではなく、宿屋に近いギルドの方に向かう。
「すみません、素材の買取をお願いします」
「かしこまりました。素材はこちらにお願いします」
指定された場所にミニクラーケンの素材を出す。
「ミニクラーケンの吸盤と肉ですか!?
確認させていただきます」
そんなに驚くことかな。
こんなに冒険者がいるんだから珍しいものじゃないだろうに。
「ミニクラーケンの素材を納品したって?
こんなガキが? ハッ、あり得ないだろ。
というか、これ俺らが倒したやつじゃねえか!?
倒した直後に別の個体に襲われたから対応して、倒し終わったら最初の個体の死体が無くなってたんだよ。
こいつが盗んだに違いない!」
誰だろうかこの人は。
「何か御用ですか?」
「お前が俺らが倒したミニクラーケンを盗んだんだろうが!
素直に白状して俺らに返せば許してやるよ」
イチャモンつけたいだけの冒険者かな。
私が子供だからどうにかできると思ってるんだろうか。
普通に考えてミニクラーケンを倒したか、倒した人と繋がりがあるとは思わないのかな。
「何言ってるんですかね、この人は。
そんなに文句があるなら白黒はっきりさせましょうか?」
「おう? どうやってはっきりさせるんだ?」
「色々とやり方はありますよ。
受付さん。依頼って冒険者が冒険者に出すことはできますか?」
「はい、依頼主は誰でも問題ありません」
「では私からこの人に、この人から私に依頼を出します。
依頼内容はトヤダンジョン15階層のミニクラーケンの討伐です。
報酬は1体あたり1万Gでお願いします」
「申し訳ありません。
依頼については対応中か完了しか判断できません」
「では、ミニクラーケンの討伐1体から10体の依頼を10個にして、2体倒したら1体と2体の2つの依頼達成ということは可能でしょうか?」
「はい、それであれば可能でございます」
「じゃあそれで10個の依頼をお願いします。
それぞれ報酬は1万Gでお願いします。
それで問題無いですよね? お兄さん?
私がミニクラーケンを倒せないなら依頼をしても問題ないですよね?
お兄さんはミニクラーケンを倒せるはずですから儲かりますよね?
安心して下さい、10万G程度問題なく出せますよ。
未払いの心配はしないで大丈夫です。
報酬は依頼を出した時にギルドに払えばよいのでしょうか?
あ、今さら言いがかりをつけただけで嘘だったとか言わないですよね?」
笑顔でこちらから一気にまくし立てたことで冒険者お兄さんはあたふたしている。
「特に異論が無いようなので、先程お伝えした内容でお願いします。
依頼の期限についてはズルズルやっても変わらないと思うので明日中でお願いします。
お兄さんもマイカード出して、依頼料払って下さい」
「えっ、いや……」
「何ですか?
まさか、こんな祝福の儀から1年ちょっとしか経っていなそうな子供になら押し通せるだろうと思って、ギルドの中で詐欺行為をしようとしたのでしょうか?
もしそうだったらギルドランクを下げられたり、冒険者資格の剥奪もあり得ると聞いたことがありますよ?」
こちらの財産を奪おうとした詐欺師。
私が時間をかけて積み重ねてきたものを奪おうとする奴に容赦はしない。
そのお金で孤児院の子たちがどれだけ食べられると思っているんだ。
「はい、依頼を受け付けました。
それぞれ依頼料と手数料として105,000Gも受け取りました。
依頼が未達成となった場合、未達成分は返還されますので、明後日以降にお越し下さい」
あたふたしていた冒険者も自分がやらかしたことを理解したようだが逃げ道は無かった。
震えながら受付さんに依頼を出して、2つの依頼が交わされた。
さて、宿に戻って明日に備えて休むか。
◇◇◇
翌日、朝食を食べてからダンジョンに向かう。
早起きするわけではなく、ゆっくりと朝食を食べた。
今日はミニクラーケンを10体倒したら終わりにしよう。
昨日は昼休憩後からで4体倒したし、午前からやれば10体にいくだろう。
ミニクラーケンを10体倒し終えたので外に向かう。
5体倒した所で昼休憩にしたけど、そこまでお腹は減ってなかったから思ったより早く終わったかも知れない。
螺旋通路に向かっていると、前方でミニクラーケンと冒険者が戦っていた。
邪魔しないように避けていこうと思っていると、冒険者側が劣勢に見えた。
無理して戦わずに逃げればいいのに。
それでも助けを求められたら手を貸そうかなと思って近づいていく。
近づいていくと、劣勢の冒険者はあの絡んできた冒険者たちだった。
じゃあ放置でいいかな。
「そこの人! 助けてくれ!」
「報酬は?」
「そんなこと言ってる場合じゃない!」
「人の命と同じくらい大切な資産を奪おうとした詐欺師をタダで助ける必要がありますか?」
「うっ……」
「こちらの提示する条件を飲むのであればいいですよ?」
「ど、どんな条件だ?」
「そうですね。
今後あなた方が冒険者ギルドで報酬を受け取る際、10%をその街の孤児院に自動的に寄付する、というルールを付けてもらって下さい。
その代わりにミニクラーケンを倒しますし、冒険者ギルドに処分をしないように口添えしましょう」
「そ、それは……」
「別に断るならそれで構いませんよ。
私にはデメリット無いですし」
「……た、頼む。その条件で受ける」
「分かりました。
では私に近づかないようにして下さい。
近づいてくるなら敵と判断して斬りつけることになります」
この冒険者が死んでも、冒険者資格を剥奪されても、ランクが下がっても私には何も関係ないし、メリットが無い。
でも孤児院に寄付してくれるなら、うちの孤児院ではないだろうけどお腹いっぱいに食べられる子供が増える。
それなら生きて稼いで寄付してもらった方が世の中のためになる。
ゆっくり歩いてミニクラーケンに近づいていく。
この冒険者たちもある程度は頑張っているから、ミニクラーケンも少しは出血しているだろう。
自己修復能力があるからどれだけダメージを与えたのか分からないけど。
こちらに気づいたミニクラーケンは5本の足をこちらに向けてきた。
残りの足は冒険者たちに向けている。
たった5本なら余裕だな。
躱して斬る。躱して斬る。
ミニクラーケンもすぐにこちらの方が危険だと判断したのか、9本を向けてきた。
それでも何も変わらない。
しばらく続けていくと動きが鈍り始めたので、足を斬りながら接近して胴体を大きく斬り裂き、更に追撃を数回行って終わらせた。
『All is Moneyの効果が発動しました。
経験値と素材がお金に変換されました。39,000Gを獲得しました』
「さて、終わりました。
一緒にギルドに行きましょうか。
ちゃんとギルドの人と話さないといけないですから」
「えっ、き、消えた? ミニクラーケンはどこに?」
答える義理は無いので、無視して歩いていく。
歩けないほどのケガはしてなさそうだったからついてくるだろう。
「すみません、依頼の確認をお願いします。
それと色々と話がありますので、個室でやり取りをすることは可能でしょうか。
あと、少し偉い人も同席してもらえるとありがたいです」
「かしこまりました。
上のものに確認してきますのでお待ち下さい」
冒険者たちは逃げずに冒険者ギルドまでついてきた。
最初から素直になっていればこんな目に合わずに済んだのに。
「準備ができましたのでこちらへどうぞ」
受付さんが個室まで案内してくれた。
「副ギルド長のサイロです」
「ディックスと申します。
お忙しい中、お時間を取っていただきありがとうございます」
「冒険者なのに礼儀正しいですね。
ミニクラーケンを倒す冒険者への対応なので、私クラスが出るべきだと判断しただけなので気になさらず。
早速本題に入っていただけますか?」
「まず、昨日私とこちらの冒険者の間でいざこざがありました。
ざっくりと説明すると、私が倒して納品したミニクラーケンを自分が倒したものだと主張してきたのです。
そこでお互いにミニクラーケンを討伐する依頼を出すことになりました。
そちらの主張が正しいのであれば私は倒せず、彼らは倒せるはずです。
その結果がこちらです。マイカード」
私のマイカードをサイロさんに渡す。
「あなたのマイカードも出して下さい」
冒険者にそう言うと、彼もマイカードを出した。
「結果として、彼らは1体も倒せず、私は10体倒しました。
つまり、彼らは私を舐めてかかって、詐欺行為を行ったことになります。
普通はそれによりギルドから処罰が下されるかと思いますが、今回はそれについて相談したく、サイロさんにお越しいただきました」
「ほう。どのような相談でしょうか?」
「彼らへの処罰を無くす代わりに、彼らが今後冒険者ギルドで納品や依頼によって金銭を受け取る際、その金額の10%をそのギルドがある街の孤児院に寄付する、というルールを付けてもらいたいのです」
「何故そのような対応をしたいのでしょうか?
あなたには何のメリットもありませんが?」
「それで言えば、ギルドで下される処罰も私には何のメリットもありません。
しかし、私はクロス伯爵領都の孤児院に今もお世話になっており、孤児院の生活を良くするために冒険者になって稼いでいます。
それでも他の街までは手を伸ばせていません。
そこで彼らを使って少しでも良くできるのであれば、私にもメリットはあると思います。
それに、依頼の達成により10万Gがもらえるので、私個人への金銭的なメリットはそれで十分です」
「なるほど、分かりました。その条件を受け入れましょう。
本来はそう簡単に決められませんが、ミニクラーケンを大量に倒せる実力者ですから、将来的なギルドとの繋がりのためにも協力しましょう」
「私にそれを伝える必要は無い気がしますが、ありがとうございます」
「元々ちょっと素行に問題のある冒険者でしたが、これで懲りたでしょう」
サイロさんが冒険者たちに笑顔を向けた。あれは目が笑ってないな。
元々目を付けられていた冒険者たちは、完全に要注意人物としてギルドに監視されるようになるだろう。
その後、依頼の達成報酬と未達成分の依頼料の返還を受けて、冒険者ギルドを後にした。
面倒だったけど、そこそこ儲かったのでよしとするか。
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所持金:11,688,480G
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