68話:慣らし運転
翌朝、とてもスッキリとした寝起きとなった。
さすが良い宿だ。あのベッドがいつか欲しいな。
朝食をとり、弁当を受け取ってダンジョンに向かう。
湖沿いを歩いていくと、10分ほどでダンジョンの入口に到着した。
大きな亀の甲羅のような見た目で、亀の頭にあたる部分が空洞になっていて、そこが入口になっている。
入口の周りにはギルドの買取出張所、ポーション等の消耗品の商店、飲食店などが出店していて、多くの人で賑わっていた。
本当にダンジョンを中心とした街なのだと実感する。
店には用は無いので早速ダンジョンに向かう。
入口にも門番さんがいたが、特にチェックは無く通っていく。
何のためにいるんだろうか?
入口を通り過ぎると雰囲気がガラッと変わった。
ダンジョンの中は薄暗くジメジメした洞窟のようだった。
もっと暗くてもおかしくないが、壁にある苔? が薄っすら光っていることで視界が確保されているようだ。
入口から先は一本道になっていて、すぐ前には他の冒険者もいる。
しばらくその冒険者の後についていき、左に曲がったかと思ったら、緩やかに右に曲がりながら徐々に下っていく。
これが階層間の移動をするための螺旋通路なのだろう。
螺旋通路を歩き始めてから数分で左側に大きな穴が現れた。
これが1階層の入口なのだろう。
1階層から3階層まではジャイアントフロッグしか生息していないので、ここはスルーする。
そのまま下り続けて4階層と思われる場所に到着した。
まず、今日の午前中はここで戦おうと思う。
ここ2日間をトヤダンジョンへの移動で時間を使ってしまって鍛錬も戦闘もしていないので、ここで戦いの感覚を取り戻しておきたい。
既に28日までの宿泊代は支払っているので、ダンジョン攻略を急ぐ必要はないからな。
螺旋通路から外れて4階層に入っていく。
螺旋通路の近くには他の冒険者もいるので、少し離れた場所まで移動する。
戻って来る際に迷わないように道をちゃんと覚えておかないとマズイな。
しばらく奥に進んでいくと、ジャイアントフロッグを発見した。
ジャイアントラットの蛙版という感じで、大きさも80cmで同じくらいであり、雰囲気も同じ感じだ。
長い舌による捕縛にさえ注意すればいいという特徴だが、そもそも適正レベル3なので気にするだけ無駄かな。
早速近づいていくと、こちらに気付いたジャイアントフロッグが舌を飛ばしてきた。
回避しても良かったが、剣で打ち返してみようと思い、舌を剣で斬りつけた。
舌は剣に当たり、キレイに斬り裂いた。
斬り口から大量の血が出てきたので回避してから、再度接近して胴体を斬り裂いた。
『All is Moneyの効果が発動しました。
経験値と素材がお金に変換されました。1,200Gを獲得しました』
胴体を攻撃するとすぐにジャイアントフロッグは消えていった。
まぁ苦戦するはず無いよな。
その後、スライムとジャイアントクラブも発見したが、それぞれ一撃で倒した。
ジャイアントクラブは防御力が高いモンスターらしいが、ステータス差がありすぎるのであまり関係無かった。
適正レベル6だからな。
昼前まで討伐を続けて、昼休憩を挟んでから螺旋通路で13階層に移動した。
ゴブリンは北の森で飽きるほど倒してきたので飛ばして、このダンジョンで初めて出会うサハギンとケルピーがいる階層を選んだ。
この2種類は適正レベルが14と20だけど、サハギンは複数体が基本、ケルピーは水魔法使い、とそれぞれ油断はできない。
螺旋通路から離れて奥に進んで歩くこと10分。
ようやくサハギンに遭遇した。
今回は4体。ゴブリン4体と大して変わらないだろう。
迷彩スキルを発動してから、いつも通り右端にいるサハギンに投げナイフをプレゼント。
投げナイフがサハギンに到達する前に気づかれたが、避けられずにノドに刺さった。
投げたと同時に走り出していたので、すぐにプレゼントしたサハギンを剣の攻撃範囲に収めて一刀。
胸部を大きく斬り裂いたことですぐに消えていった。
残り3体から大きく離れて様子を見る。
残り3体はこちらに気づいていて、既に手にした槍を構えていた。
構えは悪くない。
そして、リーチの差を考えているのか、向こうから攻めてこない。
やられるのが早くなるか遅くなるかの差しかないのだから、早く攻めてきて欲しい。
向こうから動かないなら仕掛けるか。
3体に向けて酸攻撃をばら撒いた。
威力は下がるが広範囲になるように。
酸攻撃を見て、左の個体は避けたが他2体は避けなかった。
結果、2体は酸攻撃を浴びて、手で目を覆ってしまった。
酸攻撃が目に入ったのだろうか。
2体が動けない間に酸攻撃を避けた左の1体に接近する。
それを見て槍で攻撃をしてきたが、剣で弾き返して、できた隙に胴を横薙ぎで深く斬り込んだ。
再起不能になっただろうと判断して、残り2体に近づき首を刎ねていく。
2体を倒してから、もう1体を念の為確認するとちょうど消えていく所だった。
うん、予定通り問題無かったな。
リーチが長いことを除けば戦いにくさも無かった。
さて。残りはケルピーだな。
ケルピーも倒して予定をしっかり消化してしまいたい。
その後スライムを1体倒して更に探して走っていると、遂にケルピーを発見した。
頭の高さが1.8mほどの見た目は馬。
だが、水色の身体でキレイなたてがみがあるので普通の馬とは明らかに異なっている。
こちらが気づいたのとほぼ同じタイミングで向こうもこちらに気づいたようで、すぐに水球が放たれた。
水球はあっという間にこちらに向かってきた。
ハニービーより早かったが、私の投げナイフよりは遅い。
それなら避けるのは余裕。
左足を開き、右足を引いて半身になることで避けた。
次はこちらの番だ。接近して剣で攻撃しよう。
前傾姿勢となり、ケルピーに向かって駆け出す。
すると、それに合わせてケルピーが逃げていく。
えっ? 逃げるの?
逃げるモンスターは初めてだ。
今までのモンスターは全てこちらに積極的に近づいてきたのに。
逃すわけにはいかないから追いかける。
ただ、気になったので徐々にスピードを落としてみた。
するとケルピーもスピードを落として、距離が一定になるように動いているように見えた。
これはケルピーが水魔法という遠距離攻撃を主体としているから、その水魔法に有利と考えている距離を保とうとしているのだろうか。
こういうモンスターもいるんだな。
1分ほど追いかけ続けていると、再びケルピーが水魔法を使ってきた。
再び左に避けるが今度の魔法は水球ではなく放射であり、水が継続して襲ってきた。
左に走ることで避け続けるが、ケルピーが先読みをして水が追いついてきた。
とはいえ、発射から到達までのタイムラグがあるため、冷静に動きを見れば避けられる。
追いついた水を姿勢を低くして避けて、今度は右に走って水から距離を取る。
その後も水との追いかけっこが続いたが、30秒ほどで水魔法が終わった。
この間、ヴェロニカとノクスに魔法について色々と聞いてみたが、威力の高い魔法を使うとその次に魔法を使うまでの時間が長くなると言っていた。
その法則がモンスターにも適用されるなら、ケルピーは最初の水球の魔法よりも長い間魔法が使えないはずだ。
この間に接近して倒してしまおう。
今度は全力疾走でケルピーを追いかける。
ケルピーも逃げるがスピードの差は圧倒的であり、10秒ほどで追いついたので剣で後方から一閃を放った。
『All is Moneyの効果が発動しました。
経験値と素材がお金に変換されました。7,500Gを獲得しました』
首をキレイに斬り裂いたので、ケルピーは一撃で消えていった。
適正レベルはレッサーベアと同じだが、近距離で力の強いレッサーベアと、遠距離で魔法を使ってくるケルピーは全然違ったな。
ステータスはレッサーベアの方が高そうだが、水魔法という遠距離攻撃と、そこそこのスピードがあって接近してこないという特性のせいで適正レベルが上がっているのだろう。
ケルピーに追いつけなきゃ倒せないからな。
その後もサハギンやケルピーを倒していった。
外だと夕方になったら分かるけど、ダンジョンの中は時間が分からないのが困る。
あまり遅くなるのはよくないと考えて、ケルピーを4体倒した所で戻ることにした。
螺旋通路に到着して入口に戻っていくと、空が赤く染まり始めた頃だった。
まぁ初日だしこれで帰ろう。
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所持金:10,984,980G
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