61話:勧誘
ヴェロニカとノクスの悩みへのアドバイスをした翌日。
今日も5日連続討伐の初日である。
昨日のアドバイスを受けて動き出したヴェロニカはどう考えるんだろうか。
それにしても風魔法か。
そもそも魔法ってちゃんと理解してないな。
メルティさんに数じゃなくて威力重視の魔法を使って、とレッサーベア戦では言ったが、そもそも簡単に変えることはできるのだろうか。
2人とパーティーを組むなら、私もちゃんと魔法を理解した方がいいな。
次の休みの日にギルドで聞いてみようかな。
◇◇◇
5日連続討伐を終えて、所持金は予定通り1,000万Gを超えた。
次はレッサーウルフをAcquisitionsするかな。
ただ、一体いくら掛かるんだろうか。
レッサーベアで約700万G、そこから1.7倍くらいになるけどレッサーベアよりレッサーウルフは弱いからいくらか安くなるはずだ。
仮に1.5倍だったらギリギリ足りないくらいだな。
まぁ焦る必要は無いからもう少し貯めるか。
「ディックス、おかえりー!」
孤児院の前に着くと、ヴェロニカとノクスも外から帰ってくる所だった。
「ヴェロニカとノクスもおかえり。
2人で出掛けてたのか」
「そうだよ。スライム倒してきたの」
「おっ!2人とも冒険者になったんだな。
問題なく倒せてるか?」
「スライムだからね。
今日は2人ともレベル2に上がったし、明日からはワームも倒しに行くの!」
「そうか、おめでとう。
セリアさんに報告はしておきなよ」
「夕食の後に毎日報告してるから、今日もちゃんとしてくるよ」
ヴェロニカは手を振りながら走っていった。
ノクスはこちらを見て軽くお辞儀をしてからその後をついていった。
2人でパーティーを組んでいるみたいだな。
あのアドバイスの翌日に孤児院にいる魔術師の子に色々と魔術師について聞いて回っているという話を聞いていたが、ちゃんと立ち直って前を向いて動き出したみたいで良かった。
ただ武器は持ってなかったし、ヴェロニカが籠手をつけているくらいだったけど、どう戦ったんだろうか。
「院長先生、ヴェロニカです。入ります」
「お待ちしてましたよ。お入りなさい」
「はーい。
あれ?なんでディックスもいるの?」
夕食後、院長室に私も先に入って待っていた。
「セリアさんに言って一緒に聞かせてもらうことにしたからだよ。
嫌なら出ていくけど」
「私は別に構わないけど、ノクスは?」
「僕も大丈夫です」
「じゃあこのまま始めましょうか。
早速今日の活動の報告をお願いね」
「はーい。
今日も2人でスライムだけ討伐してきました。
全部で24体倒して、全部スライムゼリーも取ってギルドで換金してきました。
あと、レベル2に上がりました。それくらいです」
「ノクスからは何かあるかしら?」
「特に無いです。
昨日と同じで僕がスライムの視界を塞いで、ヴェロニカがスライムの核を殴って吹き飛ばして倒しました。
明日からはワームとも戦いたいと思います」
殴って吹き飛ばすって籠手はそれか。
武器は嫌がってたし、それで殴ることにしたんだろうか。
というか、籠手も冒険者ギルドでレンタルしたのかな?
「ディックスは何か聞きたいことはある?」
「いいんですか。
じゃあ、2人とも魔術師だけどどういう魔法を使っているんだ?
ノクスの視界を塞ぐってのが闇魔法なのか?」
「じゃあ僕から。
闇魔法は闇とか影に関する魔法を使います。
現時点だと指定した場所に暗闇を作るのと、指定した相手に暗視能力を付与することができます。
その暗闇を作る魔法をスライムに使って動きを止めて、ヴェロニカに暗視能力を付与するのが役目です」
「私の風魔法はその名前の通り風に関する魔法だよ。
今は身体から風を吹き出してスピードを上げることしかできないかな。
普通は風の刃を飛ばすことができるそうなんだけど、私はそれが上手くできないから籠手を着けて
殴ってるの」
「へえー。それってレベルが上がっていくと使える魔法が増えていくのか?」
「レベルが上がっても増えないみたいです。
レベルが上がると威力や範囲は強化されていきますが、使える魔法は練習して増やすしかないみたいです。
あと、ある程度の知力が無いと使えない魔法もあるみたいです」
「そうなのか。
他の人の魔法を真似したり、自分で考えて新しく作ったりって感じか。面白いな」
「そうですね。
僕は色んな闇魔法使いの本を読んでみようと思ってます」
「ノクスは強くなりたいのか?意外なんだけど」
「強くなるのは手段です。
僕は世界を見たいんです。本だけじゃなくて実際に自分の目で見たり感じたりしたい。
そしてその経験を元に本にして後世に残したいんです。
もちろん学者もいいなと思ってましたけど、魔術師を与えられたので魔術師じゃないとできないことをやろうと思います」
「そうか。ノクスは強くなるのに興味無いかと思ってたけど、そういう考えなんだな。
ヴェロニカはどうなの?強くなりたいのか?」
「強くなりたいよ。
強くなれば魔法の威力もステータスも上がって、そうすればもっと速く走れるからね」
「シンプルでいいね。
セリアさん、どうしますか?」
「いいのですね、ディックス?」
「はい、いいですよ」
「ん?何が?」
「2人とも、ディックスとパーティーを組む気はありますか?」
「えっ!?ディックスと3人でってこと!?いいの?」
「2人が組みたい、強くなりたいと思ってるならいいよ。
まぁ毎日一緒って訳じゃなくて、半分くらいになるだろうけど」
「ディックスはソロがいいからソロなのだと思っていましたが、違うのですか?」
「普通の冒険者とパーティーを組むとトラブルになる可能性の高いスキルがあってね。
だからセリアさんとスワンさんには、パーティーを組むならトラブルにはならなそうな孤児院の子がいい、既にパーティーを組んでいる年上の子は入れたくないって伝えてあったんだ。
2人ならトラブルにはならないだろうし、私と組んでもやっていけるくらい強くなりたい気持ちがありそうだし。
ちなみに、この間のヴェロニカが落ち込んでいた日にセリアさんには相談済みだよ」
「トラブルになる可能性の高いスキルって何!?怖っ!」
「強いスキルなんだけど、変わった効果があってね。
パーティーを組むことになったら教えるよ」
「そうですよ。
ちなみに、ディックスは今孤児院にいる子の中で一番強いです。
ウォード、エマ、メルティのパーティーよりもね」
「3人よりディックス1人の方が強いってことですか?」
「そうよね?」
「まぁレッサーベアを倒しているのでそういうことになるでしょうか」
「ちょっと待って!
ディックスが祝福を与えられたのって1年前よね!?
1年でレッサーベアを倒せるくらい強くなったの!?」
「そうだぞ。正確には3ヶ月かからずだったけど」
「最短記録かもしれないじゃないですか!?
なんで話題になってないんですか!?」
「話題になると貴族とかの誘いが来そうだからやめようとセリアさんと相談したんだ。
年明け以降にレッサーベアを納品してランクアップする予定だよ」
「どれだけの速度で強くなっているんですか。意味不明ですね」
「その強くなった理由がスキルにあるんだよ」
「じゃあディックスとパーティーを組んだら私たちも強くなれるの?」
「それは分からない。
ただ、少なくとも稼ぎは良くなるから、いい装備を早く揃えることはできるはずだよ」
「装備ですか。
確かにそれで安全性が上がればモンスターを倒しやすくなってレベルアップも早くなるかもしれませんね」
「そういうこと。
それでどうする?今すぐ決める必要は無いけど」
「ノクスと2人で相談していい?」
「構わないよ。
明日は休みで1日孤児院にいるから、聞きたいことがあれば聞いて」
「分かったわ。
ノクス、ちょっと私の部屋で相談しましょ」
「分かったよ。
院長先生、ディックス、失礼します」
ドアを開けて駆け出していくヴェロニカと、お辞儀をして歩いて出ていくノクス。
本当にどうしてここまで仲が良いのか不思議な2人だな。
「では私も戻ります。
2人からの答えをもらったらセリアさんにも報告します」
「はい、そうして下さい」
2人はどうするのかな。
今までとは違ったドキドキを感じながら眠りについた。
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所持金:10,468,390G
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