60話:後輩
レッサーベアをAcquisitionsした翌日から、再びお金を貯め始めた。
急上昇したステータスも4日もあれば流石に身体に馴染んだので一安心。
そこからひたすらに貯め続けて数カ月。
12月上旬も終わりに近づいた所で、所持金は9,975,790Gとなった。
あと1日で1,000万Gを超えそうだ。
ここの桁が上がるのにどれだけの時間が掛かっただろうか。
…いや、4ヶ月あれば1,000万G稼げるというのはすごいよな。
改めて、ファンドマネージャーとスキルの凄さを感じる。
そして、もうすぐ祝福を受けてから1年になるのか。
あっという間だったな。
◇◇◇
翌日は休み。
いつも通り朝食後に鍛錬をしていく。
複数のレッサーベアとの戦闘をイメージして剣と投擲を織り交ぜて。
なんかいつもより静かな気がする。
なんでだろう。
「ディックス、今ちょっといい?」
「ノクスか。どうした?」
「ヴェロニカがね。部屋に引きこもって出てこないんだ。
力を貸して欲しい」
静かだったのはヴェロニカがいないからか。
いつもなら孤児院の庭を走り回っているはずだからな。
ノクスの後についてヴェロニカの部屋に向かう。
「ヴェロニカ、いる?
セリアさんの許可はもらってるから入るよ」
ノクスはドアを開けて部屋に入っていく。
「ちょっと!入ってこないでよ!」
「何があったのかくらい話してよ。
僕だけじゃ解決できないかもしれないから、ディックスにも来てもらったよ」
「ディックス?なんで?」
「ノクスに力を貸して欲しいって言われたんだよ。
それでどうしたんだ?
話したくないなら、外に出ていつも通り一緒に走るか?」
「…走る。ノクスもついてきて」
「はぁー。しょうがないな」
3人で部屋を出て庭に向かった。
「僕もいるから軽めにしてよ」
「分かってるわよ」
そこから5分ほど走って身体が温まってきた所で、
「昨日の夕方に祝福を受けたの」
ヴェロニカが話し始めた。
「でね、ジョブが魔術師で、スキルが風魔法だったの。
どうして魔術師なんだろうって頭がぐちゃぐちゃになって、院長先生にも相談したんだけど何も教えてくれなくて」
「そうか。まずは誕生日おめでとう。
ジョブとスキルか。セリアさんは何も言わなかったのか?」
「何も言ってくれなかった。
ただ私の話を聞いてくれただけ」
「そうか。でも、セリアさんだから何か考えがあって何も言わなかったんじゃないかな。
自分で考えて気づいて欲しいとか。
そもそも、ヴェロニカは何が嫌だったんだ?」
「私は走るのが好きで、祝福を与えられるまでもずっと走ってきた。
だから走るのに適したジョブになると思ってたの。
剣士とか身体をうごかす適正があるようなものになるとばかり。
でも魔術師だったの。全然違う。
神様は私に走るなって言いたいのかなって…それが嫌だった」
「剣士ってエマさんみたいな感じ?」
「そう。エマさんみたいなスピードを活かして戦う感じ」
「でもヴェロニカは武器は嫌なんだろ?
そんな子に剣士のジョブを与えたら嫌なことをさせることになるから、神様は剣士を与えなかったんじゃないかな」
「でも、だったらなんで魔術師なの?」
「そこまでは分からない。
ちなみに風魔法って何ができるの?」
「知らないわ」
「まずは調べてみたらいいんじゃないか?
神様に与えられた理由が分かるかもよ。
何の理由もなく風魔法を与えないと私は思うかな。
風魔法についてなら、セリアさんも教えてくれるんじゃないかな」
「ノクスはどう思う?」
「風魔法について知るのは、この先のことを考える上でも必要だろうね」
「分かったわ。ちょっと院長先生の所に行ってくる」
ヴェロニカは私とノクスから離れて、院長室に向かって走っていった。
「行っちゃったな。本当に行動が早い。
ノクス、これで良かったのか?」
「いいと思う。
知っていれば冷静に考えることもできるはずだから」
「そうか。あとでセリアさんの所に行って確認しておくか。
これでノクスからの依頼は完了だな。
ノクスは大丈夫か?悩みとか無い?」
「あるよ。僕も祝福を与えられて、同じ魔術師でスキルは闇魔法だった」
「ノクスもか、誕生日おめでとう。
それで悩みは?」
「ヴェロニカが立ち直ったら2人でパーティーを組むんだと思う。
でも2人とも魔術師で後衛だから前衛が欲しいんだ。
いい人見つかるかなってのが悩み」
「スライムくらいなら2人で問題ないと思うよ。
しばらくは2人で頑張ってみて、きつくなったら探す形でいいんじゃないかな?」
「そうかな。まぁヴェロニカが元気になってから考えるよ」
ノクスはそう言ってから走るペースを落としていく。
そのまま歩いて院長室の方に向かっていった。
コンコン
「失礼します。セリアさん、ディックスです。
少しお時間いいでしょうか?」
「はい、どうぞ」
午前中の鍛錬を終えて昼食後。
ポーション作成に取り組む前に院長室にやってきた。
「何かあったかしら?」
「午前中にノクスにお願いされて、ヴェロニカに風魔法について調べるようにアドバイスをしたんですが、どうなったのか確認したくて」
「ヴェロニカから聞きましたよ。
彼女に風魔法について教えて欲しいと言われて色々と教えました。
自分でその判断ができていたらより良かったですが、周りからのアドバイスでその行動に移せたのなら及第点ですかね」
「やってはダメなことじゃなくて良かったです。
それでヴェロニカはどうなったんですか?」
「私から風魔法がどういうものかを教えましたよ。
資料も渡したので、それを見てどう考えるかですね」
「そうですか。また相談されたらアドバイスしようと思います。
あと、ノクスがパーティーについて悩んでいるみたいなので相談に来るかもしれません。
その際、2人にやる気があれば私を推薦してもらえますか?」
「それはヴェロニカとノクスとパーティーを組むということですか?」
「2人のやる気次第であって、しかもセリアさんが推薦してくれたらですけど。
2人は私に懐いてくれていますから、人柄は問題ないです。
ヴェロニカは速く走れるようになるためなら、強くなることに好意的だと思いますから大丈夫でしょうが、ノクスが強くなることに肯定的なのかどうかが分からないのでそこ次第だと思ってます」
「なるほど。
ディックスがソロじゃなくてパーティーを組んでくれるのはこちらの望んでいたことなので賛成したいですが、ヴェロニカとノクスとの強さに差がありすぎですね。
いきなり強いモンスターと戦わせないようにして下さいね」
「2人と一緒に討伐に行く時はちゃんと考慮します。
それにしばらくは毎日一緒に行くわけではなく、ソロと半々くらいになると思います」
「それくらいならいいでしょう。
ヴェロニカとノクスがどう考えるかを聞いてから色々と動きますね」
セリアさんからの賛同は得たので、2人がどう判断するかだな。
どうなるかは気になるけど、ひとまずポーションを作るとしよう。
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所持金:9,988,390G
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