105話:事前打ち合わせ
王都への往復で立ち寄った2度、グランドベア討伐の際に訪れた2度。
どちらもタークス公爵領都は途中地点でしか無かった。
それに対して、今回は初めてタークス公爵領都を目的地として訪れた。
西門を通り街の中へ入り、ひとまず領主館へと向かう。
「ヘンリー様にご招待いただいた、ディックスと申します」
領主館に入り受付で名乗ると、すぐに前に対応してくれた役人さんがやってきた。
「ようこそお越しくださいました。ヘンリー様がお待ちですので、こちらへどうぞ」
役人さんの後についていき、領主館の中を進んでいく。
前に来た時も思ったけど、やっぱり公爵領主館だからか、とてもキレイに管理されていて、豪華ではあるけど華美ではない。落ち着いた雰囲気のある建物だと感じる。
「ヘンリー様、ディックス様をお連れしました」
「入ってもらって」
「失礼します。どうぞ」
丁寧にヘンリー様の執務室へと案内された。
相変わらず図書室のような本棚と大きなテーブルが視界に入ってくる。
「こっちの近くの応接セットに座って待っててくれるかな。すぐに終わるから」
ヘンリー様のお言葉に甘えて、部屋の奥の応接セットへと足を進める。
ソファに座ると、すぐに紅茶とお菓子が出された。
仕事の邪魔をするのは良くないので、静かにそれをいただきながら、ヘンリー様を待つ。
んー、紅茶とお菓子が美味しいな。
「お待たせしました。そして、来てもらってありがとうございます」
「いいえ。私からお願いしていた奴隷の話もありますので。
それで、明日はヘンリー様から依頼された方々へDividendを使えばいいのでしょうか」
「そんな焦らないで大丈夫ですよ。
じゃあ簡単にスケジュールをお伝えしますね。
まず今日は領主館の客室に泊まっていただきます。料理もこちらで用意してあります。
そして、明日の午前中に公爵家と関係の深い貴族や商人との新年の挨拶がありますので、昼食会の後に1人ずつにDividendを使ってもらいます。
ちなみに、この部屋のすぐ近く、領主の執務室の隣りにある応接室で行ってもらいます。
明日はそれで終わりで、明後日に私と一緒に奴隷商の元へ行く形になります。
ここまでで何か質問はありますか?」
「いえ、大丈夫です」
「では明日の詳細ですが、新年の挨拶にはディックス君にも同席してもらいます。
我が家の特別協力者というのを周知するちょうどいい機会ですからね。
何か話してもらうことも無いので、呼ばれたらゴードンの所まで出てくるだけです」
「ゴードンさん、いえ、ゴードン様もいらっしゃるのですか?」
「今日到着予定ですよ。んー、それよりもゴードンは『さん』付けなんですね。
私も『様』じゃなくて『さん』でいいですよ。
特別協力者は公爵家と対等な関係ですからね」
「いや、さすがに公爵家の皆様を『さん』付けはよろしくないのではないでしょうか……」
「むしろ、『さん』付けで話してもらった方がいいです。
それだけディックス君を公爵家が重要な協力者として見ていると分かりますから」
……これは、どう言っても『さん』付けにするように説得されるだろうな。
「分かりました。『さん』付けで呼ぶようにします……すぅー、ヘンリーさん」
「はい、それで大丈夫です」
そう言いながら満面の笑みになるヘンリー様、いやヘンリーさん。
慣れなきゃな。
「さて、明日の詳細の続きを説明しますね。
新年の挨拶は先ほどの通りで、昼食会にも参加してもらいます。
立食形式なので、適当に食事をしながら、話しかけられたら受け答えをして下さい。
まぁゴードンが側に付く予定なので、失礼なことは無いと思います」
いや、ゴードンさんが付いているというのも恐れ多いのだが……
「その後、応接室に入ってもらい、連れてこられる人にDividendを使ってもらいます。
対象者といくらもらって、いくら経験値を与えるかは、こちらでまとめた紙を用意してあります。
その通りに連れてこられた人からお金を受け取って、Dividendを使ってもらう。
ちなみに、ディックス君のマイカードを都度確認して、お金がちゃんと動いているのを確認するよ。
トラブルになったら面倒だからね」
「はい、分かりました」
「明日はそれで終わり。
そしてディックス君にとっての本題である、明後日の奴隷商については私が案内するから。
それで、手紙では書かなかった長い話は聞くかい?」
「……本人から聞く形でもいいでしょうか」
「構わないよ。じゃあ明後日の朝に迎えに行くね」
「お手数をおかけしてすみません」
「いいのいいの。私も気になるしね。それに奴隷商の視察も兼ねるし」
本当にヘンリーさんには良くしてもらってるな。
ゴードンさんもそうだけど、タークス公爵家の方々には感謝しかない。
ドンッ!
「ヘンリー兄さん! ディックス君来てるんだって!?」
「ゴードン、せめてノックくらいしなさい」
突然部屋の扉が開いたかと思ったら、ゴードンさんが飛び込んできた。
「おお! ディックス君! 久しぶりだね、元気にしてた?」
「はい、変わらずにやってます」
月1くらいで手紙のやり取りしてるから分かってますよね……
「ヘンリー兄さんから聞いたけど、色々と面白いことに巻き込まれてるというか、首を突っ込んでるというか。
特別協力者にしたのはやっぱり間違ってなかったよ」
「ディックス君、明日、明後日の事は話し終わったから、ゴードンと話してくるといいよ。
ゴードン、場所を変えて話してこい」
「分かった。じゃあ行こうか」
「はい。ヘンリーさん、明日と明後日はよろしくお願いします」
「あぁ、また明日」
ヘンリーさんの執務室を出て、ゴードンさんに連れられて客室へと案内された。
そこでゴードンさんと話していると夕飯が運ばれてきて、もうこんな時間か、という事でゴードンさんは帰っていった。
明日に備えて早く寝るか。
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