100話:新たな投資先
エドワードさんに武器防具を依頼してから12日後の休日。
次の休日だと18日後になってしまうので、少し早いかもしれないが工房を訪れた。
「すみませーん。ディックスでーす」
「は、はーい! ちょっと待ってて下さーい!」
奥の工房からエドワードさんの声が聞こえてきた。
この時間だとまだ作業を始めてなくて、2階から降りてくることが多かったけど、今日は既に作業中だったみたいだ。
「作業中にすみません。休みなので、製作状況の確認に来ました」
「わざわざすみません。状況ですが、配合比率のテストで時間が掛かったので、まだ出来てません。
防具にも薄くして使おうと思っているので、もう1週間待ってもらえますか?」
「問題ないですよ。素材は足りてますか?」
「はい、いくつか使わずにお返しできるとは思います」
「そうですか。レベルを上げて、作業は楽になりましたか?」
「そうですね……扱っている素材が素材なので楽ではないですが、上がってなかったらもっとキツかっただろうとは思いますね」
「それなら良かったです。
あと、今後はお金を払ってくれたらレベル上げますから言って下さい。
公爵家と関係のある貴族相手に実施する予定なので、その後という形にはしたいですけど」
「えぇ……またそんな重いものを私に……」
「今後も私やヴェロニカ、ノクスの武器防具をお願いすると思うので、そのために便宜を図っていると思って下さい。
では、長居しても作業の邪魔だと思いますので、私は帰ります。
また6日後に来ますので、引き続きよろしくお願いします」
「分かりました。しっかり良いものに仕上げてみせます!」
そう言って、速やかに工房を後にする。
さて、孤児院に戻って鍛錬をしよう。
「帰ってきたわね、ディックス」
孤児院に帰るとスワンさんが声をかけてきた。
「スワンさん、何かありましたか?」
「セリアさんとの話を聞いてね。今さらだけど。
それで奴隷じゃないけど、孤児院にいる他の子も、ヴェロニカとノクスみたいに強くしてもらえないかなって思ったの。
どうかしら?」
孤児院の子との交流はあまりしていない。
そんな中で珍しく声をかけてきてくれたのがヴェロニカとノクスで、それもあって仲良くなり、一緒にパーティーを組むようになったんだよな。
「そうですね。そこまで仲良い子はいないですけど、冒険者として強くなりたいという気持ちが強ければいいですよ。
話してみて決める形になりますが、それでいいでしょうか?」
「それでいいわ、ありがとう。
多分庭で鍛錬中だと思うから呼んでくるわね」
「私も一緒に行きます」
スワンさんにはいつもポーションの売却でお世話になっているが、それ以外で長く話したり、一緒に何かをするのは久しぶりだ。
庭に向かうと10人ほどの子が鍛錬をしていた。その中にはヴェロニカとノクスの姿もあった。
「ディックスやっときた。一緒に走ろうよ」
「ちょっと用事があるから、それが終わったらな」
「用事?」
「ヴェロニカとノクス以外に見込みのある子がいたら強くして欲しいって、スワンさんからお願いされたんだ。
悪いことじゃないし、話して決めようかなって」
「じゃあ私とノクスと一緒にパーティーを組むってこと?」
「そいつら次第だな。それにレベル差もあるだろうから難しいとは思うぞ」
「分かったわ。じゃあまた後でね」
ヴェロニカとの会話を終えて、鍛錬している子たちを観察した。
鍛錬中によく見かける子も何人かいる。まだ祝福を与えられていない子もいるだろうな。
「アルフォンス、ロイ。ちょっと来てもらっていいかしら?」
スワンさんに声をかけられてやってきた2人は、鍛錬中によく見かける2人だった。
確か投擲器具を作った時に、すぐに遊びだした2人だな。
呼ばれた2人がこちらに来ると、スワンさんは建物の中に戻っていった。私と2人もスワンさんの後についていき、副院長室へと入っていく。
「2人とも冒険者活動を頑張っていますけど、もうすぐレベル12になって北の森に行くのよね?」
「はい、ゴブリンまで倒せるようになれば、経験値は南の草原より北の森の方が多くなると聞きますので」
「分かりました。ちょっとディックスと話してもらっていいかしら?
ディックス、聞きたいことがあれば質問してもらえる?」
もう少しスワンさんに教えてもらいたかったけど仕方ない。
「2人は今は冒険者として活動しているということで合ってるか?」
「はい、将来的には領軍に所属することを目標としていますが、それまでは冒険者として稼ぎながらレベル上げをしています」
「2人でパーティーを組んでいるのか?」
「はい、私の方が先に祝福を与えられましたが、ほぼ同時期だったのですぐに2人で活動するようになりました」
「祝福を与えられたのはいつ?」
「アルフォンスは2月末、俺は3月頭です」
「ちなみに2人のジョブ、レベル、スキルを教えてもらえるか?」
「レベルは2人とも11、ジョブは私が騎士、ロイは剣士です。
スキルは2人とも剣術と投擲です」
しっかりと取り組んでないと8か月でここまで上がらないな。
「投擲が取れたのか。私が作ってもらった投擲器具を使ってたのか?」
「器具が作られてからずっと遊んでました」
やっぱりそうか。
「2人はもっと強くなりたいか?」
「「はい!」」
スワンさんの推薦だし、2人とも強くなることに貪欲だな。
まだ北の森には行ってないみたいだけど、いいだろう。
「スワンさん、レベル12に上げるだけでいいですか?」
「急に上げすぎるのも良くないからね」
「もうすぐレベル12になるという事ですし、レベル12から13に上げる分を渡しますね」
Dividendの効果を発動してください。
『Dividendの効果を発動します。対象と金額を指定してください』
アルフォンスとロイを対象として、867,500Gずつ使ってください。
『Dividendの効果を発動しました。
合計1,735,000Gを投資しました。対象に経験値が与えられました』
「えっ?」「はっ?」
「2人とも、レベルが上がったか?」
「はい。えっと、どういうことですか?」
「私のスキルの効果だよ。2人が強くなることに貪欲で、ちゃんと取り組んでいるみたいだし、スワンさんからの推薦があったからね。
獲得できる経験値がわずかに減るけど、減る量は1か月で上限があるから気にせずに、これからもモンスター討伐をしっかり続けるように。
何かあれば私かセリアさんかスワンさんに聞くように。
ではスワンさん、私も鍛錬してきます」
「ありがとう。じゃあ2人には私からスキルの説明や注意事項を伝えておきますね」
「注意事項ですか?」
「言いふらさないことと、レベルを上げる条件ですよ」
「そういうことですか。よろしくお願いします」
後はスワンさんに任せて、鍛錬をしてこよう。
ヴェロニカたちを待たせてるからな。
xxxxxxxxxx
所持金:16,006,640G
xxxxxxxxxx




