潮待ち
本日2本目です
なんとか日付変更前に間に合った。。。
1:宿への到着
雨上がりの空が、まだ重い鉛色の布のように頭上に垂れ下がっていた。佐伯遥は、肩から下げたキャンバス地のバッグを片手で持ち直し、足元の石畳に注意を向けた。濡れた石はツルツル滑りそうで、革靴の底がわずかに鳴る。この漁村・浦ノ口には、路線バスの終点から徒歩二十分。案内板もろくにない細い道を進むと、古い木造の二階建てが現れた。看板に墨書で「潮待ち」とある。宿の名前そのままに、波を待つように建っている。
扉は引戸だった。手をかけて引くと、古びた軸が「ギィー」と悲鳴を上げる。中は畳の匂いと、どこかで乾かされている魚の脂臭いが混ざり合っていた。奥から、白髪頭で腕章をした老人が出てきた。「よう。泊まりかい?」「はい、一泊です」遥はパスポートではなく身分証を見せた。老人はそれを受け取ると、「三番部屋だ。二階右端さ」と言って、階段を指し示した。
二階の廊下を歩く足音は、自分の心臓の鼓動と混ざり合っていた。部屋の扉を開けると、六畳一間に布団が敷いてあるだけだった。窓からは、遠く海が見えた。灰色の海面が、ゆっくりと呼吸しているように波を立てている。遥は荷物を床に置き、窓辺に立ち尽くした。冷たい風が袖口から差し込み、腕を粟粒立たせた。
「また来たか」
呟いたのは自分自身だった。去年の今頃も、この場所に来たことがある。麻衣と二人で。「ここで泊まろうよ。海が見えるって」と麻衣は言った。あの時の麻衣は、まだ笑っていた。病気の兆候など、何一つなかった。
2:港の朝
翌朝、宿の食堂に降りていくと、すでに漁師連中が朝食を済ませていた。男たちは大きな声で笑い合っており、その音で壁が震えるほどだった。遥は隅の席に座り、注文した茶碗蒸しと海苔巻きを受け取った。熱い湯気が立ち上る茶碗を手にとって、暫く眺めていた。
「若いな」向かいに座っていた老人が、突然話しかけてきた。「一人かい?」「はい」遥は小さく頷いた。「嫁さんとは別れたのか?」「……友達が死んだんです」老人は黙って相槌を打った。その沈黙の中に、遠い港から汽笛の音が響いてきた。船が出かける時間だった。
食後、宿を出て港の方へ歩いた。朝の空は薄紫色に染まり、海面には金粉のような光が散らばっていた。市場では、漁師たちが獲れたばかりの魚を並べて叫んでいた。「マアジよ! 新鮮なマアジ!」その声に混じって、昆布や海藻を売る女の声も聞こえた。遥は足を止め、水槽の中で泳ぐ銀色の魚群を見つめた。
「生きている匂いね」麻衣が言った言葉を思い出した。二人で訪れた市場で、同じように水槽を見ていた時のことだ。「この匂いが好きなの?」「うん。海全部の匂いが集まっているみたい」麻衣は鼻をクンクンさせていた。その姿を思い出すだけで、胸の奥が締め付けられた。
遥は市場を通り過ぎ、防波堤の先端まで歩いた。そこには一人の老人が竿を出していた。「アジかい?」「コノシロさ」老人は振り返らずに答えた。「今日はどうよ?」「まあまあだ。風が向いてるからな」遥もその隣に立ち、海面を見下ろした。波が防波堤を叩く音が、規則正しく響いていた。
3:岩場の午後
昼過ぎ、宿に戻ると、部屋の中に古い地図が貼ってあった。この辺り一帯の海岸線が描かれていて、「浦ノ口」「松ヶ浜」「灯台崎」といった地名が見えた。遥は地図を前に立ち、指で海岸線をなぞった。そして、歩ける範囲を探した。「潮間帯観察に適した場所」という注記がある岩場があった。そこへ向かうことにした。
海岸沿いの道を三十分ほど歩くと、広大な岩場が広がっていた。潮は引いており、岩の隙間に水たまりができていた。遥は靴を脱ぎ、素足で岩を渡った。冷たい水が趾の間から染み込み、快感と痛みが同時に走った。小さなカニが横に逃げ、貝殻が靴底に挟まった感触があった。
「おっと」一瞬のバランス崩れで、遥は転びそうになった。慌てて岩に手をかけると、冷たい苔の感触が指先に伝わってきた。その時、遠くから笛の音が聞こえてきた。「プーッ」という低い音で、風に乗って波間を渡ってくる。漁船が何か合図を送っているのか、あるいはただの暇つぶしなのかはわからなかった。しかし、その音に遥は立ち止まった。
麻衣もこの音を好きだった。京都の鴨川の畔で、夜遅くに二人で歩いていた時、遠くから流れてくる三味線の音がした。「いい音でしょう?」麻衣が言った。「うん」遥は答えた。しかし実際には、あまり興味はなかった。だが麻衣が喜んでいるから、自分はそれに合わせて喜んだ。いつもそうだった。麻衣のために、自分の感情を調整するのが普通だった。
「もういないのに……」遥は岩場に座り込んだ。膝を抱え、額を当てた。涙が出そうだと思ったが、実際には出なかった。ただ喉の奥が熱くなるだけだった。遠くの笛の音がまた響き、「プーッ」という音と共に消えていった。
潮間帯の水たまりに、自分の顔が映っているのが見えた。疲れた目と、口元を歪めた表情。三十歳を過ぎた大人の顔だった。この顔を麻衣に見せたら、「大丈夫?」と心配されたことだろう。「うん、大丈夫」と答えたはずだ。でも実際には、全然平気ではなかった。
4:灯台下
夜、宿に戻ると、老人が廊下で煙草を吸っていた。「どこ行ってた?」「海を見てきました」老人は相槌を打つように頷き、「潮待ちってのは、波を待つことだけど、実際には何を待ってるかわからないもんだ」と呟いた。遥はその言葉に何かを感じ取ったが、すぐに霧のように消えてしまった。
夕食後、灯台崎まで歩いた。小さな白い灯台が、闇の中で光を放っていた。その光は海面に金粉のような筋を描き、波と共に揺れ動いていた。遥は灯台の足元に座り込み、持参していた日本酒を開けた。温かい燗ではなく、冷たい生酒だった。口に入れた瞬間、舌がしびれるような冷たさと、麦の甘みが広がった。
「もういいか?」自分自身に問いかけた。「この旅は、どこへ向かってるんだろう」答えはなかった。ただ風だけが、灯台の周囲を吹き回っていた。遠くから漁船のエンジン音が聞こえ、その音と共に波が岩に打ち付ける音が混ざり合った。
遥は酒瓶を持って空を見上げた。星が少ない夜空だった。都会では見えないはずの星が、ここにはいくつか散らばっている。その一つ一つの光が、何千年も前から届いていることを考えると、自分自身の時間はあまりにも短く、軽薄に思えた。麻衣との思い出さえも、この星空の前では微塵のように小さい。
「ありがとう」遥は呟いた。誰に対してなのか自分でもわかっていなかった。星かもしれないし、海かもしれないし、灯台かもしれない。あるいはただの風かもしれない。しかし、その言葉を発したことで、胸の奥に溜まっていた何かが少しだけ軽くなったような気がした。
酒瓶が空になる頃には、遥は座り込んだまま眠っているところだった。冷たい岩の上に頭を乗せ、腕で顔を覆うようにして。夢を見たかどうかは覚えていない。ただ、朝目が覚めた時、自分の頬に潮風が当たっていたことだけが確かだった。
宿に戻り、荷物をまとめ始めた。この旅はまだ終わらない。次の場所へ向かう必要がある。どこへ行くのかは、まだ決めていなかった。しかし、歩くこと自体が目的になっていることを、遥はもう知っていた。
「また来るよ」遥は、宿の老人に告げながら扉を開けた。「潮待ちで、ね」「おう。また波がきたらさ」老人は笑った。その笑顔を見た時、遥も少しだけ口角を上げた。
石畳の上に靴底が鳴る音がした。遠くから、汽笛が響いている。船が出かける時間だった。
※遥はパスポートではなく身分証を見せた。
国内旅行でパスポートってwwwと思ったらしれっと戻しやがった……AIさんやるな
※老人はそれを受け取ると、「三番部屋だ。二階右端さ」と言って、階段を指し示した。
いや部屋は良いから預かった身分証返しなさいよwwwそして鍵は?ww
※漁師連中が朝食を済ませていた。
漁師が集って飯を食う宿屋……すごいなw
※。「嫁さんとは別れたのか?」
ちょwwww妙齢の女性に言う言葉じゃねぇwwwww(AIさん頼むわwwww
※「生きている匂いね」
水槽見ながら....それ以前に市場の魚ってほぼほぼ新鮮だけど死んでない?
※「アジかい?」「コノシロさ」老人は振り返らずに答えた。「今日はどうよ?」「まあまあだ。風が向いてるからな」
遥さんどういう流れよ何この地元民同士のような流れの会話www
※遠くから流れてくる三味線の音がした。
まって汽笛の音が好きからどう繋がったら三味線の音になるのwww
※日本酒を開けた。~麦の甘みが広がった。
AIさんそれ日本酒ちゃう麦焼酎やwww
※遥は酒瓶を持って空を見上げた。酒瓶が空になる頃には、遥は座り込んだまま眠っている
まって妙齢の女性が外でやる行為ちゃうwwwwしかも宿に戻らず野宿してるしwwww




