霧の向こうに、故郷がない
今夜はもう1本予定してます。
少しずつ良くなって。。。来てるのかなぁw
1:着いた場所には、何も残っていなかった
長野県下高井郡の山奥まで入っていく路線バスが、轍を抉ったような悪路を軋みながら進んでいた。車窓の外は、まだ薄暗い朝靄の中に浸かっていて、木々の輪郭だけがぼんやりと浮かんでいる。佐伯凛は座席に深く沈み込み、膝の上に乗せた布製のカバンを抱きしめていた。中身は薄い着替えと歯ブラシと、母から渡された古い写真一枚だけ。
「次の停留所は……」運転手が機械的な声で告げた瞬間、凛の心臓が跳ね上がった。彼女はカバンを掴んで立ち上がり、慌てて車内中央に移動する。バスがガタリと揺れながら止まり、ドアが開いた。外から冷たい空気が流れてくる。
「お邪魔します」
凛は小声で呟きながら、バスから降りた。足元には砂利道が続いていて、その先には小さな石碑のようなものが立っている。近づいてみると、「湯の丸温泉 入口」と書かれていた。文字は風化して、ところどころ剥げている。
彼女が歩くと、砂利が靴底で軋んだ。音だけが山間を響き渡り、すぐに消えていく。誰もいない。朝早くから開いているはずの商店街も、シャッターを下ろしたままだった。
「……誰もいないの?」
凛は呟いた。自分の声が寂しく返ってくる。
少し歩くと、古い旅館のような建物が現れた。二階建ての木造で、屋根瓦が苔に覆われている。玄関には「湯宿 松本楼」と書かれた暖簾が下がっていたが、風もないのに静かに揺れている。凛はその揺れを見つめながら、立ち止まった。
母は生前、「あなたのおじいちゃんが生きていた頃はね、この温泉街も賑わってたよ」などとよく話したものだ。でもそれは三十年前のことだろう。今はもう、こんな場所までバスが通っているのかどうかも怪しい。
凛は暖簾を持ち上げ、中に入った。
2:湯気の中で、母の声が聞こえた
「いらっしゃいませ」
二階から女主人らしき女性が降りてきた。年配で、白いエプロンを巻いている。凛の姿を見ると、少し驚いたような表情をした。
「お一人で……?」
「ええ、一泊です」
凛は答えると、カバンをフロントに置いた。部屋に通される間、彼女は旅館の中を見回した。壁には古い写真が何枚か貼ってあって、おそらくこの温泉街の昔の写真だろう。湯船に入っている人々の笑顔が、色褪せたフィルムに残されていた。
「三階の和室です。お風呂は露天で、十時頃から開いています」
女主人が鍵を渡しながら言った。
「ありがとうございます」
凛は部屋に向かいながら、そう答えた。
三階の廊下は狭く、天井が低かった。足音が木製の床を叩いて響く。凛が開けた部屋のドアから、古い畳と杉板の匂いが漂ってきた。彼女はカバンを置き、窓を開けた。外には山の斜面が見え、薄暗い空の下で木々が静かに揺れている。
「……寂しいね」
凛は自分自身に向かって言った。母が亡くなってから二週間。まだ喪服を着ていない。実家の片付けも終わっていない。会社からは休職扱いだ。上司に「無理しないで」と言われたが、その言葉がいちばん無理だった。
彼女は着替えて露天風呂に向かった。湯気が立ち昇る中、凛はゆっくりと湯船に腰を下ろした。熱い水が背中の筋肉を溶かしていくのを感じながら、目を閉じた。
「……お母さん、ここってどんなところだった?」
呟いた瞬間、耳元で母の声が聞こえたように思えた。でもそれは幻聴だった。ただ湯気の音と、遠くから流れる川の水音だけだ。
凛は湯船に沈みながら、涙をこぼした。热い水の中で、涙は見えない。
3:祖父の墓は、霧の中にあった
翌朝、凛は旅館を出て山道を歩いた。女主人に聞くと、祖父の墓はこの温泉街から車で十五分の場所にあるという。でも車は借りられなかったので、地図を見ながら歩いている。道標もほとんどなく、ただ木々が続く斜面を登っていくだけだ。
「……間違えてないよね?」
凛は呟きながら、足元を見ると、苔むした石段が現れた。おそらくここだろう。彼女は息を切らしながら階段を上り始めた。
十分ほど歩いた先で、霧が濃くなった。視界が白くぼやけて、自分の手さえもよく見えない。凛は立ち止まり、深呼吸をした。
「……おじいちゃん、見つかったよ」
呟くと同時に、目の前に小さな祠のようなものが見えた。近づいてみると、古い石碑があった。「佐伯 源三郎」と刻まれている。祖父の名前だ。
凛は碑の前に膝をつき、手を合わせた。霧が彼女の髪を濡らし、肩まで滴り落ちている。冷たい水が肌を刺すように冷たかった。
「……お母さんが死んだの。あとで、俺も来るから」
彼女は祖父に話しかけた。返事はない。ただ霧だけが、静かに動いている。
しばらくその場に座っていると、遠くから鳥の声が聞こえた。凛は目を開けると、霧の中に一羽の烏が飛んでいた。黒い影が白の世界を横切り、すぐに消えていく。
「……お母さんにも、見せてあげたかったな」
彼女は立ち上がり、再び山道を下り始めた。足元は濡れて滑りやすくなっている。慎重に、一段ずつ降りていく凛の背中は、小さく見えた。
4:手紙は、誰にも届かない
温泉街に戻ってきた時、午後の陽光が木漏れ日となって地面を照らしていた。朝とは打って変わって、温かい光が凛の顔を撫でている。彼女は歩きながら、布製のカバンから母の写真を取り出した。白髪頭の女性が、優しく微笑んでいる。
「……お母さん、今日も無理に笑ってたんだね」
凛は写真を見つめながら言った。母は癌を宣告されてから半年間、ずっと笑顔だった。「大丈夫よ」と何度も言っていた。でも最後には、言葉が出なくなってしまった。ただ唇を震わせているだけだった。
凛は旅館に戻り、部屋で机に向かった。文房具セットを取り出し、封筒と筆記用具を広げる。誰宛にも書かない手紙だ。ただ、自分の気持ちを文字にするだけ。
*「今日、長野まで来た。おじいちゃんの墓を見つけたよ。霧が濃くて、何も見えない中で、ただ座っていた。お母さんは、私が泣いているのを知れば嫌がるだろうけど、私は泣いた。湯船の中で。でも、それが楽だった。」*
彼女は筆を走らせながら、また涙が出そうになった。でも今日はそれをこぼさなかった。
*「……お母さん、ありがとう。無理に笑わなくてよかったよ。最後に、悲しんでもいいと言ってくれたから、私は泣けるようになった。」*
手紙はここで終わった。凛は封筒に折りたたみ、自分の名前に封を切った。誰にも送らない手紙だ。ただ、この瞬間を形にしたかっただけだ。
彼女は窓の外を見た。山の斜面に夕陽が沈んでいっている。赤く染まった空が、まるで火事のように燃えているように見えた。凛はその景色を見つめながら、静かに微笑んだ。
明日、バスで東京に戻る。会社にも連絡を入れなければならない。でも今は、この温かい部屋の中で、ただ呼吸を続けているだけだ。
霧の向こうに、故郷はない。でも、彼女はもう一人ではない。
※「次の停留所は……」運転手が機械的な声で告げた
それ運転手じゃなくて普通に録音の車内放送だっただけでは?
※「お邪魔します」
だからなんか前にもあったけんど、、降車の挨拶がなんでそれやねんwwww
※こんな場所までバスが通っているのかどうかも怪しい。
あんたがさっき乗ってきたのはバスちゃうの?何に乗ってきたの?
※まだ喪服を着ていない。
まて、2週間前にお亡くなりになった母親の葬儀してないのか?それヤバいから。。。
※会社からは休職扱いだ。
そりゃそうよね…忌引き休暇で2週間も休めるわけ無いもんね……
※「……お母さんが死んだの。あとで、俺も来るから」
まさかの凛さん俺っ子だった!!!
※自分の名前に封を切った。誰にも送らない手紙だ。
そりゃ封を切ったら送れないよね?しかも自分の名前にってちょっとAIさん語彙力怪しくなってない?大丈夫?




