襲来
リーシアが作ったという片田舎の別荘。
それはもうひとつの村とでも言えるような規模の広さだった。
畑に牧場。生活に必要なものは全て揃えられていた。
「この魔法、別の使った方がいいな」
それら畑や牧場を管理するのは魔法で動くゴーレムたちだった。
せっせとこの別荘の管理のために働いているゴーレムたちを操作する魔法陣を改良していく。
リーシアの魔法はどれも大雑把なのだ。
「レイは魔法が得意よね……よく、そんな美しい魔法陣が描けるわね」
「マリア程じゃないよ」
その僕を膝に抱き、頭を撫でるリーシアに事実で返す。
多分、マリアなら最初から完璧なものを作り直すだろう。
「レイの方がすごいわ」
「リーシアならそう言うだろうね」
僕とリーシアは互いにソファの上でダラダラしながらまったりとした時間を過ごす。
「レイ!もっとだ!もっと剣を早く!強く!」
「うん」
そんな僕とリーシアから少し離れたところでは、もう一人の僕がラルムと一心不乱に剣を降っていた。
二人の僕がそれぞれ魔法と体を鍛えている。
成長速度2倍。冷静に考えて、この分身体って今まで聞いた事ないくらいのチートスキルだ。
「(……暇やな)」
のんびりとした生活の中で己の腕を磨く僕はつい、そんなことを内心で思う。
魔法の腕を高めていくなら、隣にマリアが欲しい。
体を鍛える、にしてもなぁ……ちょっとステータスが下がりすぎている。レベル上げに行きたい。そっちの方が早いから。
「もう夕食の時間ね。何を作ろうかしら?」
「剣の素振りはこの辺でいいだろう。このまま別の武器も触れるか?それとも模擬戦をするか?」
ちょうどタイミング良く、僕にリーシアとラルムが疑問の声を投げかけてくる。
「「うーん」」
僕はそのリーシアとラルムの言葉に対し、ほぼ同時に生返事を返す。ちょっとマリアとの戦いが起きてしまった。
全然勝てない感じ……これは、僕の分身体をひとつ使って勝ちに行くのがいいかな?
「……えっ?」
ラルムの呟き声が響く。
「これで良し……負けるわけには、いかないからね」
僕はひとつの分身体を消し、マリアとの戦いに向かわせる。上手く作戦がハマれば、勝てるはずだ。
「「……レイ?」」
さぁ、後は異常を感じ取って残るひとりの僕へと同時に視線を送ってきた二人の対象だね。
簡単な言い訳ひとつ。
それだけで収まってくれるほど二人は軽くなかった。
「どういうこと!?何で……どうして、分死体を一つ消したの!その理由は?分身体が一つ消えた、ってことはまた、何か別のことをしようとしているのでしょう?私たちに内緒で何をしようとしているの」
「い、いきなり……いきなり私の隣からレイを消す必要ないじゃないか!何をしているんだ?!ここでの生活は、生活は不満だったのか!?」
「分身体は元々二つじゃないよ」
「「は?」」
「実はもうひとつ作れたんだよね」
「……聞いてないわよ?」
「言ってないもの。それでだけどさ、もうひとつの分身体でマリアを見つけたんだよ」
「は?あの魔女を?」
「な、何をしているんだ?」
「マリアと僕はルックス王国の王都にいる。二人にも分かりやすいように魔力は垂れ流しにしとくね」
話し合いで収まる気もしない。
ここは逃げの一手だ。向こうも上手くいったようだし。
「……ッ!?まちなさい!」
「レイ!」
「それじゃあ!」
僕はここに残していた分身体も消し、二人の前から姿を消した。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
もう一方の僕の事情。
「……馬鹿なの?」
それを聞いたマリアは素直にポツリと言葉を漏らす。
「あの二人に自由を与えるなんて、それこそ自殺行為じゃな……ッ!?」
「……あっ、早い」
事情を説明したすぐ後。より細かく言うと、僕が二人の前から姿を消してからたった十分。
「「レイっ!!!」」
リーシアとマリアの二人が僕の元に襲来してきた。
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