教えて
「……そんなに嫌だった?」
僕の手で拘束されたマリアが倒れたまま、ぼそりと言葉を漏らす。
「私なりに、……レイの為を考えたのよ。このままで、良いはずがないわ」
「まぁ、そうかもねぇ?」
自分でも僕が歪だと自覚している。
「このまま魔王を倒す為に人生を使うの?……何もわからないまま、がむしゃらにただひたすら走り続けるの?」
「その生き方しか知らない……いや」
これは、正しい言い方じゃないかな。
「僕は生き方を知らない。生きる為じゃなく、目的の為に動く。それなら論理的な思考力だけで行動できるでしょう?」
「……人は、生きているのよ」
「忌み子の僕は生まれながらに死を望まれていたよ」
「……」
「でもまぁ、生き方なんて人それぞれでしょう?大抵の日とは何か目的があって、それを達成するために生きている。みんな、同じじゃない?というか、目的もなく惰性で生きている方こそ、何で生きているの?って感じしない?僕はちょっと人より育ちのせいでわからないことが多いだけさ」
なんかこう、僕の感覚的なものを訳もわからないまま話していたけど、改めて考えると、別に僕の生き方ってばそんなに間違っていないよね?一度は生き方を知らないとか言ったけど、別に知っている気がする。
「わからない、ところはなくしておくべきよ」
「別にさ。作ってくれたところ悪いけど、学校なんていらないよ」
マリアが僕の為にしてくれたのはわかるけど、正直それの必要性はあまり感じなかった。
「マリアが僕に教えてよ、愛ってやつを」
「……ッ」
「それでいいじゃん」
学校とか行くよりも、素直にマリアが教えてくれる方が早い。
絶対にこっちの方がいい。
「……そう」
マリアは僕の言葉に頷き、そっぽを向く。
「(……ズルいじゃない、それは)」
そのマリアの頬は、真っ赤に染まっていた。
好きな人であるレイから『愛を教えて』なんて言われて、誰が断れるだろうか?
マリアはその一言で認めさせられた。
「……私の負けよ」
「おっ」
マリアが再び展開させていた結界の魔法を消し、再び僕の目の前がまたあの部屋へと戻ってくる。
「ふふんっ!いやぁ、僕が勝ててよかった」
それを確認した僕はマリアの拘束を解く。
「じゃあさ、マリア。これから一つ。大変なことがあるんだよね」
「ん?」
「一緒に迎撃態勢を取ってほしいんだ」
「迎撃態勢?」
「そっ、迎撃態勢さ。これから……ちょっとしたイベントが起こるからさ」
こちらは平和に終わった。
だけど、世界の片隅にもう一つ、新しい戦場が生まれていた。




