ぶつかり合い
僕とマリア。
どちらが強いかと聞かれたら、前世であれば僕だと胸を張って答えられる。
魔法力に関してはマリアに劣っていたが、総合力で見れば僕の方が上だ。実際に戦闘を始めて、勝つのは僕だったと思う。
だが、今はどうか?
転生して総合力を失った僕はマリアに遠く及ばなかった。
今、唯一誇れる魔法力も、魔女の名を冠するマリアに遠く及ばない。いくら僕の魔法力が伸びたとはいっても、マリアの魔法力は化け物のそれで、数値として1900を超えている。
「……もうちょっと戦えても良くない?」
その致命的なまでの実力差を埋める為に僕は舌戦を駆使した。
言葉でマリアに僕へと全力で攻撃出来ないよう枷をつけたつもりだった。
それは上手く行っていた。
だが、問題だったのはまた別。そんな言葉じゃ埋められないほどに絶対的な差が僕とマリアの間に横たわっていたことだった。
「むぅ」
火の魔法も、水の魔法も、雷の魔法も。
僕が放つそれらすべてと同じ魔法。同じ威力。魔法の魔法はそれらをぶつけられて相殺されていた。
「……諦めて」
僕の魔法をすべて相殺して近づいてくるマリアは真正面からゆっくりとこちらに近づいてくる。
マリアが拳の届く範囲に入った瞬間、僕は無言でまず蹴りを放つ。
「おわっ」
その蹴りはマリアが発動させた結界に弾かれるばかりか、僕の足が彼女の手に掴まれる。
「軽い」
「ちょっ!?」
マリアはその細腕で僕の体を軽く持ち上げ、そのまま地面にたたきつける。
「今のレイじゃ、私に勝てないよ」
地面に倒れ伏した僕の腹の上にマリアが乗っかり、馬乗りの態勢になる。
上から僕を見下ろすマリアは追撃を仕掛けてくることはせず、ただ格の違いを見せつけ、諦めるよう勧告し続ける。
「……うーん、参った」
とはいえ、素直にそれを受け取る訳にもいかない。
僕は転移で一旦、マリアから距離を取る。
「またそれ?」
距離を取った後、僕は再びマリアに魔法を放ち始める。
とはいえ、全て相殺されるわけだけど。
魔法戦では絶対に勝てない。基本的に僕の魔法のお師匠様はマリアなのだ。自分なりの魔法も幾つかあるけど、それらも全部マリアに喜々として話しちゃっているから、あまりアドバンテージにならない。
近距離戦でも当然無理だ。
僕のステータス値がちょっとお話にならないレベルで低すぎる。
勝ち筋があるとすれば、やっぱりスキルに類するもの。それも、何か不意を打っての勝利しか望めないかな。普通にスキルを使っていくだけで勝てる気はしない。
「まぁ……それが一番大変なんだけど」
一緒に勇者パーティーとして旅していたのだ。僕の手のうちのほとんどがマリアに知られている。その状態で不意を打つなんて至難の業だ。
何なら、不意を打てるのはマリアの方だ。この一年で僕の知らない新しい力を得ていても何もおかしくはない。
「いつまでやる?」
「一緒に遊ぶのも悪くないでしょ?」
「そうね……だから、私は何時までもつき合ってあげるわよ。貴方の魔力が無くなるまで」
「……アハハ、勘弁っ!」
僕はまた同じように近づいてきていたマリアから距離を取るように地面を蹴り、後ろへと下がっていく。
そして、ここまでつけていた眼帯を外す。
「魔眼解放」
僕の切り札たるそれの調子は戻った。
魔眼解放。固有スキルの活性化───その御業の最大の恩恵が己の世界の展開だ。マリアが展開した真っ白な結界内部をまた、別の景色が上塗りしていく。
僕の世界。
それが展開されていく。固有スキルの力に支配された世界がこの世界そのものを塗りつぶす。
「……そんなに、嫌?」
まだ僕とマリアの距離は遠く。
だが、空間切断がマリアの展開する結界を消す。この世界はスキルそのもの。すべての場所がスキルの効果範囲だった。
「普通は即死なんだけどっ」
幾度も発動し続ける空間切断に対し、マリアは常に己の身を守る結界を展開することで防ぎ続ける。
化け物。
こうもずっと防ぎ続けられたのは始めてだ。その上で、マリアは結界の再展開は続けたまま新しい結界魔法を唱え始める。
マリアは再び、同じ結界を展開することで僕の世界を上書きし返そうとしていた。
基本的には魔法よりもスキルの方が強い。スキルの効果を魔法で書き換えるなんて不可能───だが、マリアなら不可能じゃない。
「……んっ?」
押し合いは勘弁だ。
マリアが結界魔法で僕の世界と押し合いをしようとした瞬間に、世界を消す。
時は満ちていた。
景色が元いた部屋に戻る。
「……ッ!?」
マリアの背後。
そこにはもう一人の僕がいた。
ここまでの戦いはすべて時間稼ぎだった。
リーシアとラルムの元に居た僕の分身体のうち一つを潰し、この王都の近くに潜ませていた僕のスライム体の破片を分身体として再生。
その分身体でここに移動してくるまでの時間稼ぎの戦いだった。
「不意を打てたね」
「うにゃっ!?」
マリアが甲高い悲鳴をあげると共に、すっぽりと僕のスライム体がマリアのことを包み込む。
呼吸が出来るように顔だけは出させてあげると共に、再びマリアの結界が展開されて元の白い世界に戻ってくる。
「こ、……れはっ」
「マリアが僕の体を攻撃して拘束を壊そうとすれば、そのまま僕は死んじゃうね?」
大した拘束じゃない。
僕の体がマリアの体を包んでいるだけの弱い拘束。だけど、マリアにとっちゃ壊せない拘束だ。
「さっ、マリア。僕の勝ちだね」
スライムに包まれた状態で地面に倒れるマリアに対し、僕は勝利を宣言した。
ご覧いただきありがとうございました。
ここより少しスクロールして広告の下にある『☆☆☆☆☆』から評価することが可能です。
ブクマ登録、いいねも合わせて評価していただけると幸いです。
また、感想は作品を作る上での大きなモチベとなります。
感想の方もお待ちしておりますので、気軽にお願いします。




