再結成
勇者パーティー最強は誰か?
ラルムは最も硬く、ありとあらゆる攻撃をはじき返す。
リーシアには速度があり、攻撃力がある。
マリアの魔法は世界一。範囲も、威力も、精密さも、そのどれもが彼女に構わない。
聖女と呼ばれた彼女の治癒能力はまさしく神の御業だった。
だけど、それでも、何か誇れるものがなかった僕こそが最強であったという自負があった。
全てに上位互換がいようとも、戦えば僕が勝つ。
「くっ……!」
「その二人が手を組むのはズルいだろう!」
尤も、今の僕が最強などとは口が裂けても言えないが。
「ふふっ」
それでも、今の僕の前にリーシアとラルムの二人が膝をついて負け犬の遠吠えをあげていた。散々と魔法を浴びた二人の体はボロボロの状態で、幾重もの封印魔法を撃ち込まれ、体をほとんど動かせない状態で地面を転がっていた。
「マリアを味方につけて僕は正解だった」
落ちぶれたとはいえ、僕の分身体二体を壁にしておけば、彼女たち二人が僕に攻撃出来ないせいで最強の壁になる。その壁の後ろから僕とマリアの二人で遠距離から一方的に攻撃を浴びせ続けた。マリアと魔法で張り合えるのは世界広しと言えども、僕くらい。世界のトップ二人が魔法で攻め立てて来ているのだ。リーシアたちに勝利の目はなかった。
「ふふふ……私に内緒でレイを二人占めしようとしていた二人を見下ろすのは気分がいいわぁ」
「……」
マリアが一番えぐい囲い込みをしようとしていた気がするけど。
「まっ、落ち着いたでしょ。前みたいに仲良くやろうよ……僕が、死ぬ前みたいに、っていうのは無茶ぶりかもしれないけどさ」
マリアが展開してくれていた結界に干渉し、それを横から崩し、元の部屋へと戻ってくる。
「……ちょっと」
「ふう、これからの話をしようよ」
リーシアとラルムが封印魔法を喰らって動けずにいる中、僕は語り始める。
「僕がスライムに転生してからまだ半年も経っていないけど……もう、みんなとまた出会えた。五人の勇者パーティーのうち、もう四人が揃った」
「……別に、私はもう魔王を倒すつもりはないわよ?」
「先に宣言しておくね!僕は魔王を倒すよ!理由はシンプル!それを僕がしたいから!」
リーシアの言葉を無視し、僕は一方的に宣言を声高さにあげる。
「リーシアたちとのスローライフは嫌!純粋に僕にスローライフが合わない。同じ場所にいるの、牢屋の中で過ごしていた時を思い出すんだよね」
「「……ッ」」
その僕の宣言にリーシアたちが反対してくるのは想像できるが、こう言っておけば、リーシアたちも深くは聞いてこないでしょう。僕の出自はみんなからすると、同情に値するものらしいからね。
ちゃんと一度はスローライフを送っていた今だからこそ、使える言い訳だ。
「……私は」
「ん?」
「私は、人間が嫌い。人類の為に、……でも、それをレイが望んでいるなら、私は何処までも戦うわ」
「ふふっ、リーシアならそう言ってくれると思っていたよ」
「わ、私も!私もレイの為なら何でもすると誓おう!」
「私も魔王を倒すんでいいわよ~。貴方の、望むことをしながら、レイに愛を教えてあげるわよ……愛を教えて欲しい。そう、レイが言ったものねぇ?」
「あっ、ちょっと」
「「はぁーっ!?」」
「ちょっと、火花を散らせないでよっ!」
「……その言葉、さ。私の恋心だけじゃなく、リーシアたちから好意を向けられていることを自覚していなきゃ出てこない言葉じゃないか?自分の言葉が、火種になるという自覚はあるのだな」
「うぐっ」
「「……」
個人的な理解は出来ないけど、そういうものがあるというのは知識と知っている。知識としてあれば、それの利用方法も自ずと知れる。
「てへっ」
僕は軽く舌を出す。
「……一番悪いのはレイよねぇ?」
「……そうね」
「……それは間違いないな」
おかしいな?一気に僕が悪者になってしまった。
「まぁ、良いじゃないか!さぁ!祝杯を挙げよう!」
何時の間にか僕のアウェイになった雰囲気を破るように僕はみんなの手に魔法で盃を出現させる。
「それよりも、いつのまにか分死体がいなくなっているようだけど……何処に行かせたの?」
「あぁ、一人はレベル上げ。もう一人には聖女のあの子を探しに行かせたよ」
「ちょっと。私はすべてのレイと一緒に居たいのだけど?」
「僕にも自由を頂戴よ。みんなで行動するより、僕の分死体を動かした方が早いでしょ」
リーシアの言葉をさらりと流し、僕はもう一度、盃を掲げる。
「僕たちの再会に乾杯し、勇者パーティー」
「もう!勝手に流さないでよ!」
「リーシア……もう何言っても無駄だと思うぞ。思ったよりも、レイが魔王討伐にかけていた思いは硬いようだ。こうなった彼はどうすることもできない」
「……わかっているわよ。一番、私がレイといるんだもの」
「ありがとっ!」
「……これが悪女か」
「僕は女じゃないよ。さっ」
僕は盃を傾ける。
「はぁー」
「こういうのもいいな」
「確かに……一体感はあるわね」
それに合わせてみんなも自身の盃を掲げる。
「祝おうか!」
僕の言葉に合わせ、みんなで盃の酒を呷り、祝杯とする。
未だ僕の力は全盛期から遠く、頼りになった聖女も未だに居ない。
だけど、再びここに勇者パーティーはなった。
これから、また僕たちの戦いが始まるのだ。
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