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進化

 後ろからリーシアがぴったりついてくる中、僕は再び草むらの中を進みだしていた。


「(さて、何処まで手札を開示しようか)」


 自分の姿を見られている中で、まず考えるべきはそこだった。

 魔法を使うスライムなんて聞いたことがない。だけど、僕は前世の勇者パーティーの一員だった時とそん色のないレベルの魔法が使えてしまう……まぁ、手加減なんて考えなくていいか。

 不幸中の幸いではないが、異常を示すスライムが目の前に居ても今のリーシアなら危険だから駆除しよう、なんて考えないだろう。


「(……てなわけで)」


 手加減をしないことに決めた僕は早速魔法を発動し、自分の探知に引っ掛かった魔物を撃ち殺す。


「……炎弾?スライム、なのに魔法が使えるの」


 うーん、相変わらず上にいるリーシアが何を言っているのかは聞き取りにくい。

 まぁ、攻撃はしてこないし、このままでいいでしょう。


「これなら、……心配はいらないかな」


 僕は草むらの中を進み、一方的に魔法を撃ちこみ続ける。

 相手の顔も、姿も見ることない。探知で捉えた瞬間に魔法を発動し、一撃で殺す。ただそれだけの作業をひたすらに積み重ねていく。


 ───レベルアップを確認しました。

 

 一匹を殺しただけで最初はレベルが上がった。

 それと比べると、三回目の今は倒した魔物の数も多くなったが、それでもかなり少ない。サクサク倒していき、どんどんとレベルアップを重ねていく。

 魔王の勢力が強くなっている影響か、ただの草原だというのにずいぶんと魔物が多い。


 ───レベルアップを確認しました。レベルの最大値に達しました。進化が可能です。進化いたしますか?


 おっ!来た、進化が!

 レベル上限で進化出来る、という僕の憶測は間違っていなかった。

 魔物が進化する、ってのは珍しいけど別に見られる現象だからな。よし、進化する!


 ───進化先を表示します。


 進化先を表示?

 えっ、何、複数ある感じなの?


 ───パワースライム。

 ───マジックスライム。

 ───以上の二つより、進化が可能です。


 うわっ、本当に複数あるんだ。決まったものに進化するわけじゃなく、自分で進化先を選べるのか。

 ずいぶんと至れり尽くせりなことで。

 うーん。まぁ、名前を見れば両者、何となくどんな種族なのかはわかるけど……念のため、どっちがどんな種族なのかは知りたいな。

 進化先の魔物について知りたいんだけど。表示してくれないかな?



 ───パワースライム。

 ───魔力によって形成された粘液生命体。高い適応力と再生力を持つが、単体での戦闘能力は最弱クラス。多くの魔物の餌として扱われる。通常のスライムよりは攻撃力に優れる。


 ───マジックスライム。

 ───魔力によって形成された粘液生命体。高い適応力と再生力を持つが、単体での戦闘能力は最弱クラス。多くの魔物の餌として扱われる。通常のスライムよりは魔法力に優れる。


 

 うん。まったくもって想像通りの進化先だった。

 言葉通りだ。

 それにしても、さっきから聞こえてくるこの声は一体何なんだ?ちょっと怖いんだけど。なんか勝手に僕の心を読んで、答えてくるんだけど。


「(まぁ、良いか)」


 とりあえずは、どちらの進化先を選ぶか、だ。

 まぁ、差異はなさそうに見える。最初の進化だしな。いきなり人の言葉を喋れるようになれるとは思わない。

 とはいえ、パワーとマジックか。話せるのを最終目的地としているなら、マジックか?パワーだと脳筋よりに行きそう。マジックなら、ワンチャンテレパシーとかないだろうか?

 あるかもしれない……いや、ないとは思うけど、パワーよりは可能性がありそう。

 よし、進化するのはマジックスライムでっ。


「(……?何も、起きないが?)」


 心の中で進化を唱えた───のだが、何の変化も感じられなかった。進化に失敗した?


「(ステータスオープン)」

 

 確認の為、取り合えず僕はステータスを開く。



 ◆◆◆◆◆


 名前:レイ

 種族:マジックスライム

 レベル:1/10

 ランク:G

 称号:『勇者の寵愛』


 攻撃力:5

 防御力:7

 魔法力:1868

 俊敏性:6


 固有スキル:

 『空間操作』

 

 スキル:

 『分裂』『並列思考』『捕食』


 ◆◆◆◆◆



 あっ、進化していた。こんな何もなくぬるっと進化するのね?

 うーん、新しくスキルを覚えたりはないか。あっ、でも、これまでどれだけレベルがあがっても上昇していなかった魔法力の数値がひとつ上がっている。

 これはちょっと凄いかも。数値が高くなれば高くなるほど、それ以上に積み上げるのは難しい。魔法力に関しては前世でも一番高かった数値なこともあり、全然動いていなかった。

 一年かけて僕は数値をひとつ上げていた。それを考えると、進化で上がるのはあまりにもコスパ良いな。


「(よしっ、これでとりあえず進化は出来た。)」

 

 進むべき道は間違えていなかった。

 これを繰り返していけば、何時かは話せるようになる、はずだ。


「あっ、……スライムちゃんがまた動き出した。今度は何かな?」


 少しの希望を抱けた僕は再びこの草むらの中を歩きだした。

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