盗賊
冒険者としての生活が始まって一週間。
僕とエレノア王女殿下は魔物を狩ってそれを売り払うと共に、ギルドで依頼を受けてはその代金を受け取る。それらのお金で生活していく実に冒険者らしい共同生活を送っていた。
「不味いわ!」
「……うん?」
そんな日常を送っていたとある日。
今日受けた依頼である狼の魔物五匹の討伐を終えたその直後、エレノア王女殿下が大声を上げる。
「何、私は普通の生活を送っているのかしら!?私はメイドの救出の為に奔走するはずだったのに……一週間普通の生活を送っているわ!?」
「僕は今の生活に割と満足しているけどね?」
ギルド内で僕は既に期待のルーキーとして見られている。
一か月後、相応なランク上昇を期待できる。
このままいけば、有名冒険者として成り上がって上の人間のコネを作るという当初の計画を完遂出来るだろう。
「いや、別に私も満足はしているの?王族として、考えられない刺激的な生活を送れているし……これはこれでいいんだけど、彼女を救わないと!」
「とはいっても、手がかりが何もないからなぁ」
王都付近で活躍する盗賊がそもそもいないのだ。
盗賊の目撃情報も、襲われたという情報も一切ない。ギルド等にも何の依頼も来ていない。そんな状態で、探せと言われても何も出来ないに等しかった。
「……それは、そうなんだけどぉ。こう、もっと何処か探しに行くとか!」
「うーん。結局やみくもに探すしかないんですかね?」
あまりに手がかりがない。
これも含め、色々と怪しい点が多、───。
「……ァ?」
手がかりがない。
そう言って嘆いていた僕たちに救いの手を差し伸べるかのような、肌を突き刺す敵意を感じ取る。
「エレノア王女殿下」
「きゃっ!?何!?」
僕は隣に立っていたエレノア王女殿下を抱き寄せ、そのまま結界を展開する。
「い、いきなり何……!?その、恥ずかしいんだけどぉ」
その次の瞬間、僕たちのいる森を焼き焦がすような炎が結界を包み込む。
「な、何!?」
「喜んでください、エレノア王女殿下……当たりです」
炎が晴れた後、すぐ目の前に仮面を被った男がこちらに向かって剣を振りかぶっていた。
「て、敵!?」
その剣が振るわれると共に甲高い音が鳴り響く。
「ひぃわぁ!?」
いつの間にか、僕たちは5人の仮面の男たちに囲まれていた。
剣を結界に叩きつけた男へと雷撃の魔法を当てて意識を昏倒させている間にも別の男が背後から僕の結界に手を触れる。
結界破りの魔法。
手で触れ、僅かな時間をかけることでようやく発動するその結界破りの魔法の効果は絶大。
僕の結界が音を立てて崩れていく。
「慌てないで!」
結界が破壊されて動転し、その場から咄嗟に逃げようとしたエレノア王女殿下の体を左手で掴みながら、もう片方の手で結界を破壊した男を掴む。
「ふんっ!」
それをこちらに強引に引き寄せると共にその腹に炎を纏わせた蹴りを叩き込んで吹き飛ばす。
「……手加減がな」
誰かもわかっていないのに殺す訳にはいかない。
魔法ってのは手加減が難しい。
かと言って、物理で勝てるほど今の僕は強くないしね。
「……だ、誰なの?この、人達は」
手早く二人処されたのを見て残りの3人が足を止める。
その時間がエレノア王女殿下の動揺を抑えてくれる。
「さぁね?ただ、状況的にもお目当ての人たちじゃない?」
「……お目当て。まさか?」
「そのまさかじゃない?」
「……ッ!そうか!貴方たちがリリーをっ!」
リリー。
メイドの名前だったか?エレノア王女殿下は名前を叫びながら激昂し、腰からぶら下げていた剣を構える。
「……ふぅ」
「ん?」
互いに戦闘態勢へと入った。
にもかかわらず、三人のうちの一人から敵意が薄れたのを前に僕は首をかしげる。
「仕方ない」
それに反応して僕が何かするよりも早くその彼が懐より水晶を取り出し、それを地面に向かって放り投げる。
水晶が割れ、この場に魔力が吹き荒れる。
その、魔力が一つの魔法を発動させる。
「……ッ!?」
この、魔法は───っ!?
抗うか、抗わないか。
「……なるほどね」
一瞬だけ悩んだ後、僕はちゃんとリーシアたちの元に残り二つの分身体が安全なことを確認してから、無抵抗に魔法を喰らったのだ。
ご覧いただきありがとうございました。
ここより少しスクロールして広告の下にある『☆☆☆☆☆』から評価することが可能です。
ブクマ登録、いいねも合わせて評価していただけると幸いです。
また、感想は作品を作る上での大きなモチベとなります。
感想の方もお待ちしておりますので、気軽にお願いします。




