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悶絶

 それからしばらくの間、リーシアとラルムは泣きながら僕に抱き着いていた。


「……いい加減離して?」


 いや、しばらくの間というのはだいぶ優しい良い方だった。

 一時間くらいずっと抱き着かれたままの僕は流石に声をあげる。


「泣きすぎじゃない?そんなに泣かれると困るんだけどぉ?」


「それはレイがっ!」


「……ッ!一年、待っていたんだぞ!?」


 泣きすぎだと言う僕にリーシアとラルムの二人は食ってかかってくる。

 気持ちはわかるし……申し訳ないという気持ちもあるのだが、とはいえ一時間は長すぎるんじゃない?よくもまぁ、涙も枯れることなく一時間泣き続けられるよね。


「でも、ほらぁ、聞きたいこととか色々あるんじゃない?」


「……それも、そうだけど」


「……現実感ないことを聞いてしまいそうで、……そうなったら、この夢が覚めそうだ」


 僕の言葉にそっと二人は離れながら、少し沈んだ表情を見せる。


「夢じゃないって何度も言っているじゃん!ほら、何で僕が生きているのか、とか聞きたいでしょ?」


「……そうね」


 僕の言葉にリーシアが嫌そうに表情を歪ませながら、頷く。


「……レイ、の遺体は私たちが間違いなく埋葬したわ。なのに、何でまたこうして……」


「辛いことをやらせちゃってごめんね?それでその後、だよね?まぁ、自分から話を振っておいてなんだけど、僕も何が起きているのかわからないんだけど、あの死んだと思って意識を手放したすぐ後、僕はスライムとして目覚めたんだよね」


「スライム、として……」


 僕から出来る説明はそう多くない。

 スライムに転生した。

 起きたことはそれだけだし、それ以外の説明方法は正直ない。何か話せることも正直ないのだ。


「そう。ほんと、死んだすぐ後に。僕の感覚としては一晩寝た感覚もなく、目を閉じていた時間は短かったんだよね。だから、僕としては二人と感動の再会!って感じ……では正直ないんだよね?スライムとして第二の生を得たその日にリーシアとまた会えたし」


「……あれ?」


 その説明にリーシアが首をかしげる。


「あっ、もうちょっと丁寧に説明した方が良かった?でも、これ以上の説明も生憎と出来ないんだけど」


「いや……その、ふとした疑問と言うか、今更なんだけど……す、スライムちゃんってレイだった。ってことなのよね?」


「そうだよ?」


「……」


「……あっ」


 僕の言葉にリーシアが頷き、その隣でラルムまでが硬直する。


「あっ!でも、幾らスライムとはいえ、二人のプライベートは出来るだけ守ろうとしていたよ?着替えとかの際には見ないようにしていたし」


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ!?」


 慌てて言い訳を口にしようとした僕の肩をラルムが掴む。


「わ、私の……その、あれをっ」


 そのラルムの視線が僕からベッドの下へと移る。

 それで彼女が何を気にしていたか気づく。


「あぁ、……あの人形」


「あぁぁぁぁああああああああああ!?」


 思わず隠すこともなく呟いてしまった僕の言葉に、ラルムは発狂しながらその場に蹲る。耳は真っ赤に染まっていた。


「い……いや、大丈夫だよ?ラルムが可愛いもの好きなのは前から知っていたし。僕はそんなラルムも可愛いと思って」


「のぁぁぁああああああああああああ!?」


 フォローの言葉をかけたつもりだったのだが、ラルムは発狂するだけでおさまらず、そのまま地面に頭を打ち付けだす。


「……わ、私、今思えばあまりに大胆過ぎることを本人に言っていた、ってこと?あ、あぁぁぁぁ……わ、私は何を言っていたかしら?だ、駄目……駄目よ。ぜ、全部言っているじゃない。私との時間を邪魔されるのが嫌でスライムを飼うのが嫌だったとか、貴方の居ない世界でどう笑えばいい、とか……あぁ、あまりにも恥ずかしいことを。こ、これじゃあ、私が束縛激しい愛の想い子だと思われちゃう。そ、そ、そ、……それに、私がレイのことを好きだってことがぁぁ……あわわ」


 その横ではリーシアがずっと何かをぶつぶつ呟き続けていた。


「……というか、私全然湯あみしていない状態でレイに抱き着いていたわっ!?」


 そんなリーシアが急に立ち上がって、ラルムの代わりに今度は彼女が僕の肩を掴む。


「レイ!?」


「ん?」


「スライムの体に五感は?!」


「あぁ、人間の頃とそう変わらないよ?何なら強いかも」


 スライムボディの何処に鼻があるのかわからないけど、普通に嗅覚はある。


「ぁぁぁぁぁあああああああああああ!?」


「……っ。ご、五感もそのまま、だと?……そんな話もあるのか。わ、私、……普通に汗だくのままイムを抱いていたから……そ、それはつまり……っ!」


「えぇ……、どうしたの?」


 五感がそのままだと聞いた瞬間に叫び出したリーシアと、くねくねしだしたラルムに僕は首をかしげる。


「ところでさ」


「……な、何かしらぁ?」


「な、なんだ!?」


「二人のステータス値は今、どうなっているの?」


「「んぐっ」」


 ふとした僕の疑問。

 それに、リーシアとラルムは二人そろって言葉を詰まらせた。


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