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格上

「っぶないっ!」


「何をしている!?」


 振り下ろされる戟。

 それを回避する術を僕は持たず、ゆっくりと迫ってくるそれを僕はただ見つめるだけ───それを、防ぐようにリーシアとラルムが一瞬で前に出て、その戟を防ぐ。


「(前線は任せた!)」


 二人が前に出てくれたのを確認した僕は迷うことなく後ろへと下がり、魔法を発動させる。


「スライムが後衛か!」


「ぬぅんっ!」


 僕の雷撃の魔法を肌で弾いたオルスロイは猛然と前に出て戟をリーシアとラルムに向かって振るう。

 リーシアはオルスロイの戟をその手にある剣で受け止め、その隙をラルムが狙って剣を振るう。


「ヌルイッ!」


 完璧な連携。

 だが、オルスロイは六つの手を持っていた。戟を中央の二本の両手で持ち、上の二本の手で盾を一つずつ持っている。ラルムの剣は盾で完璧に防がれた。

 そして、残る素手の二本の手を握り固め、ラルムの腹に向かって突き出す。


「イムっ!」


 それは僕が魔法で防ぐ。


「(さて……と)」


 魔王軍四天王。

 それと戦ったことは一度だけ。僕が死ぬ半年前。フルメンバーで一度戦った。

 あの日は、負けたと言ってもいいだろう。相手を撤退に追い込むことには成功したが、それだけ。倒すことはできなかったし、逆に僕たちがボロボロだった。

 途中から撤退に追い込もうと、ただ自分たちが生き残る戦いに終始させられた。


「(普通に格上なんだよねっ!)」


 僕は圧倒的に弱体化した。

 リーシアとラルムに関しても……成長しているとは言い切れない。この状況は、まるで良いものじゃなかった。


「ラルム!?軽いわよ!?ずっと戦っていたんじゃないの!?」


「黙れっ!」


「はっはっはっ!仲間割れなどを起こしている場合か!」


 リーシアとラルムはオルスロイの振るう戟を捌き続ける。

 こまめに二人は立ち位置を変え、オルスロイの背後をどちらかがとりに行っているが、それらの連携攻撃もすべて六つの腕に阻まれていた。


「(……六つ腕のままじゃどうあっても無理だなっ)」


 僕の魔法もあまり効いている感じはない。


「(もう一つは動かせない)」


 僕は二人。

 もう一つの方は他の魔物と魔族の相手をするのに精いっぱい。レベルを上げる為にも役割は変えられない。


「(僕一人で何とかするしかない)」

  

 今、後衛として相手の圧を感じず動けているのは僕だけだ。

 なら、僕がどうにかするしかない。


「(察して!作戦Cっ!)」


 僕は魔法を発動させ、自分の体から霧を吹き出させる辺り一帯を包み込む。

 魔力の霧。五感を奪い去る魔法による特殊な霧だった。


「「……ッ!?」」


「む?目くらましいか……?」


 その霧を前にオルスロイとて足を止める。


「それもいいが、それでは他の二人も、ぬぅお!?」


 その、オルスロイの腹をリーシアの剣が貫く。

 魔力の霧は問答無用で五感を奪い去る。それは、リーシアとラルムも同じ。だけど、その五感を奪い去った二人に対して僕の五感を共有することで、疑似的に二人の五感を与える。

 魔力の霧の影響を術者本人は受けない。


「感覚共有かっ!凄まじい魔法の練度だ!双方の魔法を同時に可能とするとは!」


 腹より血を流すオルスロイは迷いなくその場から逃げ出す。

 魔力の霧の発動難易度は高く、そう広い範囲を覆えるわけじゃない。逃げるのが、最も簡単な対策だった。


「……ッ!?」


 だからこそ、その行動も読める。

 僕は魔力の霧を目印としてスキルによる転移を発動。


「(空間断絶)」


「おぉっ!?」


 六つ腕のうち、その上二つを魔法で切り裂く。


「なんっ!?」


 一瞬で二本もの腕を奪われたオルスロイは動揺の声を漏らし、明らかに動きも鈍る。


「(ふーっ)」


 その隙を狙ってすぐさま僕は戦線を離脱しようとする。


「スライムちゃん!?」


「イムっ!?」


 だが、あまりに僕の動きが遅かった。動揺を見せたオルスロイの振るう戟の方が早い。


「流石に逃がさんよ」


 一瞬。オルスロイの戟を前にしては僕の体は何も持たず、ただ潰された。


「(転移、次に発動できるまでにラグあるのがちょっとね)」


 とはいえ、僕はもう一人いる。

 魔物と戦っていた方の僕をもう一つに分け、転移を発動。魔力の霧を展開していた場の中心に立ち、その霧をすべて自分の体に吸収し直す。


「何と……」


 そして、浴びせるのは魔法の雨だ。

 連続した魔法が一気にオルスロイの体を打ち、その足を止めさせる。


「ひやひやさせないでよ!」

 

 腕を二本斬り落とした。これで、少しは楽になるはず……っ、リーシアが聖剣を手にオルスロイへと向かって行く。

 そして、それにラルムも続こうとする。


「いやはや、僕の存在を忘れられては困るよ」


「ごふっ……」


 ───だが、それよりも早くラルムの心臓が剣に貫かれる。

 響くのは、スロースの声だった。

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