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四天王

 戦況はひっ迫していた。

 ラルムがいない状況を狙っての夜襲。

 これまで、魔族側が夜襲という手段をとってこなかったこともこの状況に繋がった。敵を見つけてからの初動に遅れ、兵が揃わない間に魔物と衝突した。

 初撃でかろうじて形を保たせていた防壁が壊され、魔物が野営地の中に入り込んでの混戦となる。


「何でスライムちゃんはそんな一生懸命戦おうとするの?」


 その中で、未だ戦いを継続させれているのはひとえに、僕のことを見ながら気ままに力を振るっているリーシアの影響だった。


「クソっ!?何で今更になって勇者が出張ってきやがる」


「……ふぅん。戦いを求めるのが魔物の本能、なのかな?」


 リーシアは自分の前に立つ魔族の魔法を指一つでかき消し、手元で剣を回す。

 それだけで剣より迸る剣閃が魔族の首を斬り落とす。

 まさしく、踊っているかのようだった。リーシアは軽い動きだけで次々に魔物も、魔族も斬り捨てて一人、死体の山を積み上げていた。


「何だ、このスライムッ!?」


 いや、別に一人ではないか。

 僕も僕でひたすらに魔法の一辺倒で魔物と魔族を蹴散らしていた。

 隣のリーシアが僕に近づいてくる存在はすべて斬り捨ててくれるので、非常にやりやすかった。

 そろそろ僕のレベルも上がる頃だと思う。ビックスライムになってからレベルの上がりが非常に遅かったが、もう49。あとひとつならいずれ上がってくれるでしょう。

 次の進化で人の言葉を話せるようになると良いんだけど……。


「(……来たっ)」


 目の前の魔物を叩き潰した次の瞬間、森林の方からもう一人の僕とラルムが姿を見せる。


「(何とか間に合った。間に合わせた!)」


 途中、現在地を知る為の地図を探すのに彷徨ったり、ラルムが転んじゃってしばらく立ってくれなかったり、苦難は多かったが、何とか間に合った。


「……あら?ラルム?」


 リーシアがいることにまずは驚いていたラルムだったが、すぐに彼女は立ち直ってその膨大な魔力を解放し、一気に前線まで突撃してきた。


「ハァァァァアアアアアアアアアアアアッ!」


 ラルムの剣が魔物の群れを切り裂き、戦場に大きな穴をあける。


「ふぅんっ!」


 魔物が、魔族が宙を舞う。

 そして、ラルムはリーシアの前に立った。


「珍しいな。リーシアが、表舞台に立つなど」


「別に、立ちたくて立ってないわ。私は元々……」


 久しぶり、なのだろうか?

 僕の感覚としては、つい昨日見たかのように、リーシアとラルムが言葉を交わす。ただ、その二人の表情は硬かったが。


「「……ん?」」


 その話の途中で二人の視線が互いの足元にいる僕───つまりは、まったく同じスライムに向く。


「えっ?……なんでスライムちゃんが?」


「イムが二人?」


「(別に、スライムなんて全員見た目同じようなものなんだから、二人にはならないでしょ……まぁ、僕が二人なんだけど)」


「どういうこと?貴方に、スライムを飼うような趣味はなかった、思っているのだけど」


「それはこちらのセリフでもあるのだが」


 リーシアとラルムの会話。


「ぬぅんっ!」


 それを邪魔するかのように一つの人影が、静かに灯り始めていた朝日を遮る。


「まさか、姫騎士だけではなく勇者もいるとは。ここで、……二つの屍を晒せば、真に人類は終わりというもの」


 僕たちの元へと飛んで現れたのは一人の魔族。

 六つの腕に三つの瞳。魔王軍四天王として名をはせる魔族、オルスロイがそこにいた。


「ここで人類と魔王軍の戦いを終わらせようではないか」


 四天王が一人、オルスロイ。

 突然現れたその魔族は殺意を剥き出しにし、リーシアとラルムを睨みつける。


「私はパス」


「(あっ、ちょっと!)」


 それをリーシアはサラッと受け流し、地面にいた僕を二人まとめて持ち上げて、さっさとオルスロイの前から逃げて行ってしまう。


「おい!何がパスか!目の前にあの、四天王がいるのだぞ!」


 それをラルムが追いかける。


「それでも勇者なのか!?」


「私は、レイの為に戦っていたのよ?別に、人類なんて滅びればいいわ」


「……ッ」


「(……リーシア)」


 ラルムに返答する彼女の言葉は何処までも冷たく、辛辣だった。


「レイが死んだ今、何で剣を持たなきゃいけないのよ」


「……ッ、そんなの、私だってっ!?」


 四天王を前にリーシアとラルムが口喧嘩を始める。

 あまりに悠長な光景だった。


「興が覚めるな」


 その光景を前にオルスロイさえ、不満そうにしていた。

 こうしてみれば、勇者パーティーが完全に崩壊してしまったのだと感じさせられる。


「あっ!ちょっとっ!」


「(なら、僕がまた引っ張るだけだよねっ!)」


 リーシアの手元から抜け出し、僕はオルスロイに向かって突進していく。


「おぉ!スライムが来るか!良いだろう!その矛!蛮勇!我に存分とぶつけて見るといい!」


 目の前のオルスロイは戦闘狂なのだろうか?

 向かって行った僕に対し、彼は笑みを浮かべてその手にある戟を振り上げるのだった。


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