ステータス
「(……本当にどうなっているの?)」
何がどうしたら、スライムに転生するというのだろうか。
割と、僕は自分の生に満足していたし、別に転生なんて望んでいなかったんだけど……というか、転生するとして何で魔物なんだが。
僕はこれでも魔物と戦う勇者パーティーの一人なんだが。
「(ふぅー)」
なんて、現実逃避をしていてもしょうがない。
この世界が僕の元居た世界と同じなのか、同じとして自分が死んでからどれくらいの時が経ったのか。それすらもわからないけど、まだリーシアが生きている可能性もある。
彼女の旅の果てを見られるかもしれない。腐らずやっていくべきだろう。
まずは現状把握。全然知らない世界だ、とかだとどう生きて行けばいいかわからないけど……まぁ、魔法は普通に使えたからな。
多分、一緒の世界なんじゃないか?となれば、これも行けるだろう。
「(ステータスオープン)」
魔力を活性化させ、それを特殊な形で放出する。
すると、何時のように一つの半透明のディスプレイが出現する。
◆◆◆◆◆
名前:レイ
種族:スライム
レベル:1/5
ランク:G
称号:『勇者の寵愛』
攻撃力:2
防御力:3
魔法力:1867
俊敏性:4
固有スキル:
『空間操作』
スキル:
『分裂』『並列思考』『捕食』
◆◆◆◆◆
この半透明なディスプレイに表示されているのが僕の能力値となる。
人間だけではなく、生命の情報はすべて魔力に記録されていると言われている。その魔力を数値で見えるようにしたのがステータスオープンと言われる魔法の一種だった。
「(……なるほど)」
前世、……と評することになるのか。人間だった頃に見慣れたステータスと同じなのは名前に魔法力、固有スキルくらいだった。
レベルとランク。
これは僕が人間だった時代にはなかった項目だ。魔物のステータスってこういう風になっていたのね。
結構違いは大きいのか?地味に驚きなのはスキルがもう既に二つもあることだ。スキルはそう簡単に生えてくるものじゃないというか、ほとんどの場合生まれ持っていることがほとんどで、新しく覚えることはない。
僕も前世ではスキルを持っていなかったし、勇者パーティーの中でスキルを持っていたのはリーシアと、後もう一人くらいだった。
これは魔物特有のものなのだろうか?
「(まぁ、今の僕にとってはプラスか。もう魔物なのだし)」
スキルが手に入ることは良いことだ。あって困るものじゃないしな。
ともかくとして、僕がやるべきはまず強くなることかな。リーシアを探しに行くとしても、この弱っちいままじゃ何処かで野垂れ死ぬ。
前世で鍛え上げた末に積み重ねたステータスを失ってしまったのは残念だけど、幸いにも魔力と魔法に関しては前世と同様に使えるみたいだ。
スライムが自生するような場所であれば、今の僕でも問題ない、はずだ。問題あったら諦めて元の死へと帰ろう。
「(ということで出発~)」
僕はひとまず、何の目的地も定めずゆっくりと進み始める。
ズルズルと、スライムらしく体を引きずって前へ前へと進んでいく。
「(案外、動きやすいもんだな)」
人間的な感覚で言えば、匍匐前進しているようなものなのだが、そんな僕の感想とは違って自分の体は何の抵抗もなく進み、疲労も特に覚えない。
快適に僕は進んでいく。
ぽよよ~んと跳ねて前に進むこの体は存外すばしっこかった。
「(……そこ)」
その途中。
常に発動させている気配探知の魔法に何かがひっかかかった僕は迷いなく攻撃魔法を発動させ、それを撃ち殺す。
多分、殺せたはずだ。確認しようと僕が前に出ようとした瞬間。
───レベルの上昇を確認しました。
「(……っ!?)」
いきなり頭の中に声が響いてきて動揺を露わにする。
な、なに……?レベルの上昇、上がったってことだよね?
◆◆◆◆◆
名前:レイ
種族:スライム
レベル:2/5
ランク:G
称号:『勇者の寵愛』
攻撃力:3
防御力:5
魔法力:1867
俊敏性:4
固有スキル:
『空間操作』
スキル:
『分裂』『並列思考』『捕食』
◆◆◆◆◆
僕がステータスを確認すると、確かに変化があった。
レベルが上がり、それに伴ってステータスも上昇していた。なるほど。これが魔物のレベルアップ……何と言うか、ズルい制度だな。
他の生物を殺してレベルを上げて、ステータスが上がるのか。
何とコスパの良い。人間だった頃は必死に訓練して、少しずつ上げていくという感じだったのに。魔物、優遇され過ぎじゃないか?
「(今はもう僕も魔物だからいいけどさぁ)」
魔物と戦わされていた僕たち人類、大変だったんだなぁ。
でもまぁ、僕たち人類には勇者たるリーシアがいるからね。彼女なら、どんなズルい奴が相手でも問題なく勝利し、世界を救えるだろう。
「(また、会えると良いな)」
少しだけ強くなった僕は再び歩み出す。
僕が進んでいた場所はただの平野だった。草が生い茂り、石が転がるただの平野。そこを時折現れる魔物と戦闘しながら進んでいく。
「(……人の、道か)」
すると、僕は明らかに人の手で開拓された道を見つける。
未だ石が残り、綺麗とは言えない道だが、最低限草が刈られ、道としての体を為しているこれは間違いなく人工物だろう。
とりあえず、この道を進んでいこうか。
僕は人の作った道をズルズルと進んでいく。すると、1つの村が見えてきた。
「(……廃墟、か)」
だが、近づいてみればもうそこは廃墟だった。何処かの、魔物の襲撃を受けたのだろう。
村の家々は崩れ、人の気配もなかった。
「(んっ?)」
少し、人に会えることを期待していた僕は少々落ち込んだのだが、一人。
廃墟の一角。
崩れ去った建物の屋根に腰掛けている少女がいることに気づいた。
「……リーシア?」
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