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裏切り者

 嘲るようなカールの言葉。


「……貴様ッ。今、自分が何を言っているのか理解しているのかっ!」


 それにラルムが激昂するのも当然だった。


「人類を裏切り、魔族の側につくなど……っ、騎士としての誇りは何処に行ったのだ!」


「ハッ。下らねぇ」


 それをカールは鼻で笑う。


「愚かな人類の味方をし続けなきゃいけないなんて俺は真っ平だぜ?あんたを嵌めるのは簡単だった。レイのことを仄めかしてやればいい。あの餓鬼がやっていたことであれば、向いてないことだってあんたはやる。敵地潜入の策を建てれば、あんたが拒絶しないことはわかっていた」


「……っ」


「俺だって最初から裏切ろうなんて思っていたわけじゃないさ。一年前、あれでわかっちまったのさ。人類が勝てやしないと。勇者も、魔女も、聖女もたった一人の餓鬼に現を抜かして、彼が死んだと同時に身を眩ませた。あんたとて、国に戻ってきたは良いが、随分と腑抜けた」


「……腑抜けて、など」


「腑抜けているさ。現にこの一年、成長したか?強くなったか?」


「……」


「(……言われてみれば)」


 カールの言葉にラルムは黙り込み、僕も少し納得させられる。

 ラルムは僕の記憶にある強い姿のまま……だが、記憶にあるままだった。

 

 後、御免。

 ちょっと聞き逃せなかったんだけど、リーシアとラルムだけじゃなくて、他の二人も僕のせいで駄目になっちゃっているの?

 あの二人に関しては僕が原因で何か病んだりとか想像できないんだけど!?人に興味なさそうな奴と、聖人君主で万人の為を願う優しい子なんだけど?


「人類の希望何て言われていた勇者パーティーで、芯があったのはあの餓鬼だけ。そして、その餓鬼を殺したのは同じ人類だ。これを見て、どう人類が勝つと信じられる?」


「それで?魔族側につくと?……ただ、騙されているだけだ。後に殺されるのがオチだ」


「かもしれねぇな。だが、それでも、俺はこちらの方が勝算高いと踏んだまで。魔族は長寿が多いからな。短い生を生きる人間一人、目こぼししてくれると信じているぜ……なぁ?スロースさん」


「そうだね」

 

 隣へと同意を求めたカールの言葉に対し、彼の隣に立っていた魔族であるスロースが頷く。


「僕たち魔族は余裕ないわけじゃない。適当に飼ってあげるよ。貢献には報いてあげる」


「ありがたき……」


「さて、じゃあ、そろそろ始めようか。あぁ、大人しく投降しててもいいぞ?そっちの方が楽……どうせ、お前は殺せないのだ。傷付いて牢に入れられるか、無傷で牢に入れられるかの違いだぞ?」


「……ッ」


 この、会話に意味はない。

 裏切り者が出てしまったのならしょうがない……スライムになったからなのか、敵意を嗅ぎつけるのがずいぶんと遅れてしまったのが僕の個人的な反省だけどね。

 大事なのは、どう乗り切るか。


「(……厳しいね)」


 会話の間、どうにか逃げ出せる隙が無いか色々と様子を窺っていたのだが、何とも絶望的。少し遠くから、戦闘音もしていた。

 恐らくは、護衛として来ていた五人も処理されている。

 その上で、見渡す限り何処までも魔物がいて、目の前には幹部のスロースまでいる。僕とラルムの二人だけで乗り切れるような状況じゃなかった。


「……レイは、絶望的な状況であっても、普段とそう態度を変えることはない。絶望に意味などないと知っているからだ。どんな状況でも、いつもの調子でヤバいと笑いながら、解決策を模索しているのだ」


 いや、別に笑ったリハしていないと思うけど。

 そこまで僕は楽観的じゃないよ?


「また、レイか?」


「あぁ、……何処までも、レイだ。私は彼の残したものを、継ぐと誓ったのだ。何と言われようとも、な」


 ラルムはゆっくりと、力強く剣を構える。


「レイに恥じぬ生き方を」

 

 ……。

 …………ずいぶんと、ラルムに関しても心配になることばかりだ。それでも、そこまでの信頼を寄せてくれるのは、嬉しいと感じちゃうね。


「(ここまで信頼してくれているんだ。このまま僕が手をこまねいているだけというわけにもいかないよね)」


 その信頼に報いてこその仲間。

 僕は現状を変えるための一手を探り───。




 ───そして、動かすのはもう一人の僕だった。


「(何か出来るとしたらこっちの僕だよな)」


「……スライムちゃん?」


 これから寝ようとしていたリーシアの腕の中に納まっていた僕はそこから脱出し、走り出す。


「何処行くの?」


「(何とも他人頼み……でも、これが一番なんだよね)」


 リーシアを戦場に召喚させる。

 これが一番手っ取り早かった。


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