第56話「堅牢の殲滅士に背中をトントンしてもらった話」 1/2
私とシェリーさんは仕事が終わってから駅で待ち合わせをして、自宅にむかうことになった。
シェリーさんは19時まで打ち合わせがあるということだった。私は定時で逃げるようにエクリプスを出て、駅ビルに隣接するデパートに向かった。
デパートの地下食品売り場に向かう。チョコレート、ケーキ、クッキー、和菓子。何でもござれだ。
「あー、久しぶりに来たなぁ……シェリーさんに何食べさせようかなぁ」
私はキョロキョロしながら、ショーケースの中を見つめる。
——クッキーであの反応だから、甘いのがいいよな……子どもだからアルコールはないほうがいいか……
ケーキコーナーを物色しながら足を止める。おいしそうなケーキばかりだ。
——エスルス達も食べるよな? 甘い物あんまり買わないけどフリードは……?
「すみません、ショートケーキ。チーズスフレ、ガトーショコラと、シュークリームください。保冷剤は3時間分で」
私は店員さんに注文を告げる。店員さんはテキパキと梱包してくれた。
会計を終えて、もう少しブラブラとする。
私は立ち止まった。あるプリンの店が目に入った。一つ1,500円の高級プリン。エスルスが食べてしまったあのプリンの店だ。
「え!? まだやってるの?」
私はつい声を上げてしまった。あのプリン、有名すぎて平日は午前中に売り切れるものだ。
私は早足で人混みの隙間を抜ける。足からはうっすらと紫色の闘気を放ちながら、白い線を追った。
——今ならまだ間に合う! あと何個だ?
店の前まで来た。ショーケースが見える、あと二つ。店の前には一人しかいない!
「あらあら、最後の二つなのね……よかったわ。一ついただけますか?」
列に並んでいる女性は白色の長い髪を揺らす。私は小さくガッツポーズをした。
——よし! あと一つ!
「あらあら? 宮國さんじゃない?」
女性は赤いルージュで濡れた唇を震わせた。ヨウシャールだった。
「よ、ヨウシャールさん、こんばんは」
私は顔を引きつらせた。
——コイツと最近ロクなことないんだよな……
「あらあら、すみません、この子は知り合いなのでもう一ついただけますか?」
ヨウシャールはショーケースのプリンを指さした。
「え? 買ってくれるんですか?」
私は喉を震わせた。体も少し震えていた。
ヨウシャールはその様子を見ながら、唇を指でなぞり、小さく微笑んだ。
会計を終え、最後のプリンを受け取ったヨウシャールは無言で歩き出した。
「ヨウシャールさん? どこに行くんですか?」
私はヨウシャールの後を追いかけた。
「あらあら、わからないの? 家に帰るのよ?」
ヨウシャールは歩きながら振り向くこともしなかった。人気のない路地裏に入った。
「あのー……私のプリンは?」
私は早足でヨウシャールの横に並んだ。
「あらあら、おかしなことをいうのね。怖いわ……これは二つとも私のプリンだけど?」
ヨウシャールはプリンの入った袋を軽く持ち上げた。
「えー、さっき私の分って言ってましたよね……」
私は眉間にしわを寄せ、頬をかいた。
「あらあら、知り合いだから嫌がらせをしたくて買ったのよ? あなたの分とは一言も言ってないわ。勘違いも甚だしくて怖いわ……」
ヨウシャールは振り返ると目を細め、桃色の瞳で私を見つめた。




